ツール・ド・フランス2021第1ステージ:落車満載のオープニングステージを制したのは世界チャンピオンの新米パパ、アラフィリップ!急勾配で飛び出し独走勝利!(ダイジェスト動画あり)
世界チャンピオンジャージは選手に勇気を与えてくれる、そしてさらに第一子が誕生しパパになったばかりのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)にとっては、背負っている覚悟の大きさが違った。世界チャンピオンの証、虹色のアルカンシエルに身を包んだ男はゴールで息子に捧げる赤ちゃんポーズを披露、世界チャンピオンが総合リーダーの証マイヨ・ジョーヌを獲得するのはツール・ド・フランス史上3度目の快挙となった。
この日のコースはまるでクラシックのようなコース、そうなればそれを得意とするアラフィリップにとっては千載一遇のチャンスだった。チームにはスプリンターのマーク・カベンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がいるが、この日はスプリント向けではないと判断していたチームは、あらフィリップの勝利の為だけに組織力を見せつけた。
開幕ステージは198㎞の長丁場、この日はスタート直後に5名が飛び出し、2021年度ツール最初の逃げを敢行した。さらにそこへもう一人が合流、最終的には6人の逃げとなった。しかしこの日の集団は初日のマイヨ・ジョーヌ獲得に燃えており、そう簡単に逃げ切りを許すまいとペースをコントロールし、メイン集団は常に2分ほどのタイム差で追走を続ける。
先頭では逃げ集団からのアタックを決めたイデ・シェリング(ボーラ・ハンスグロエ)が第4山岳ポイントをトップ通過、これにより逃げ集団は共闘態勢が崩壊、残り66㎞でシェリング以外が吸収される。
そして残り45㎞で最初の大きな落車が発生する。道路脇の観衆の一人が掲げていたボードにトニー・マルティン(ユンボ・ヴィズマ)が激しく接触、それによりコントロールを失い落車すると、そこに多くの選手たちが避けられずに次々と乗り上げ、メイン集団の大半が落車・接触する事態となった。アラフィリップもここで落車したが、ドゥクーニンク・クイックステップのほとんどのメンバーは先頭で牽引をしていたため難を逃れたチームメイトたちがレースをニュートラライズ、ペースを落とし落車した選手たちを待つ形で進んでいった。きっかけとなった観衆は明らかにモトカメラを見ており、選手たちの接近を見ておらず、大会主催者のASOはこの観客に対し裁判を起こすことを示唆している。
残り30㎞になりようやく選手たちの多くが再び合流したことでレースが動き始める。先頭のシュリングもそのまま吸収され、レースは再びゴール勝負を目指す駆け引きとなる。しかし残り6㎞でまたも悪夢が訪れる。コース中央で落車した一人がきっかけとなりまたしても大人数が巻き込まれる大落車へと発展する。今度は沿道の観衆が落車した選手たちの巻き添えとなるなど、またしても大惨事となった。この落車でクリス・フルーム(イスラエル・スタートアップネーション)も巻き込まれ、痛みからレース復帰に大きな時間を要することとなった。
またしても難を逃れたのは少数の選手たち、落車が救済措置のエリア(ゴール手前3㎞)で発生したことから、数多くの総合系選手たちがいきなりハンデを背負う形となった。しかしステージ優勝と今大会最初のマイヨ・ジョーヌを目指すバトルはそんなこととは関係なく進んでいく。残り3㎞を切り勾配が一気にきつくなると、当然のようにドゥクーニンク・クイックステップトレインがペースを上げ、そして残り2.3㎞でアラフィリップが一気にアタックを決める。ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマはこれを目の前で見ながらも反応することができないこれを単独優勝候補ツートップのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)とプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)も追走をするが、アラフィリップの馬力は衰えることなかった。独走で勝利、ガッツポーズで締めくくった。マイケル・マシューズ(チームバイクエクスチェンジ)がその背後でスプリントをしステージ2位、ログリッチが3位に入った。
「最高だよ!用意していたシナリオ通りにすべてが運んだよ。チームには本当に感謝しかないよ。レース中も、そして最後も主導権を握り続けてくれたからね。一度は落車に巻き込まれたけど、冷静でいられたよ。あとは予定通りスプリンターたちを激坂でのペースアップで振り切り、自分の間合いでアタックを決め、独走へと持ち込むだけだったよ。正直あの場所で仕掛けたのは予定より早かったんだよ。でもペースを上げて後ろを振り返ったら少し”間”があったのでそのまま仕掛けたんだ。一度開いたその差が縮まることがなかったから、これでいけると感じたね。何度勝利しても、ゴールの瞬間は格別だね。たとえようにない感情がこみあげてくるんだよ。この勝利は僕にとっても、息子にとっても、家族にとっても特別なものとなったよ。」アラフィリップはしゃべり続けた。
総合勢では、マイケル・ウッズ(イスラエル・スタートアップネーション)、リッチー・ポート(イネオス・グレナディアス)、スティーブン・クライズワイク(ユンボ・ヴィズマ)ギヨーム・マルティン(コフィディス)らがタイムを失った。特にモビスターはダメージが大きく、マルク・ソレル、アレハンドロ・バルベルデとミゲル・アンヘル・ロペス(モビスター)のエース格全員がタイムを失った。またエース格でなくとも、貴重なアシスト勢も多く怪我をしており、今大会に大きく影響を与えそうだ。大会本部に報告された負傷は21名(骨折、脳震盪、脱臼など)、擦り傷などを含めると、100名以上の選手が体に傷を負う波乱の幕開けとなった。
ツール・ド・フランス第1ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第1ステージ
1位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 4h39’05”
2位 マイケル・マシューズ(チームバイクエクスチェンジ) +08”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)
4位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)
5位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
7位 ダヴィ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
8位 セルジオ・ガルシア(EFエデュケーションNIPPO)
9位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)
10位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 4h38’55”
2位 マイケル・マシューズ(チームバイクエクスチェンジ) +12”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +14”
4位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス) +18”
5位 ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
7位 ダヴィ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
8位 セルジオ・ガルシア(EFエデュケーションNIPPO)
9位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド)
10位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)
H.Moulinette