ジロ・デ・イタリア2021第21ステージ:最終個人TTを制したのはパンクした現世界個人TT王者のガンナ!2位は落車のカバーニャ!総合優勝はベルナル!ツールに続きジロも制覇!(ダイジェスト動画あり)
最終日の個人TTはスペシャリストにとって最後の勝利を競う場でもあり、さらには総合争いが決着する場、そんな第21ステージを制したのは現TT世界王者のフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)だった。一度はパンクを喫し、首を振りながらゴールしたが、それでも計測したタイムはトップタイム、終わり良ければ総て良し、イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)が総合優勝を決めるとともに、チーム総合、そして最終ステージ勝利とイネオス・グレナディアスにとっては最高の一日となった。
そんなガンナに唯一迫ったのがレミ・カバーニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。しかし何と残り1㎞を切ったコーナーをなぜか直進、気づいてフルブレーキングするも間に合わずコースバリアに突っ込んでしまった。慌ててバイク交換をしてゴールしたが、ガンナに12秒届かなかった。この落車がなければ間違いなくステージ勝利はカバーニャのものだっただろう。本人はレース後のコメントで「集中しすぎてコースを忘れていた。」と話しており、快調すぎるが故にコーナーの存在を失念していたことを明かした。曲者集団であり、勝利を毎大会量産するドゥクーニンク・クイックステップにとっては、勝利なしに終わる屈辱の大会となった。
最終日総合勢でも動きがあった。ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)は得意の個人TTで好タイムでステージ5位、これで総合でも6位まで順位を上げて見せた。またベルナルの最強アシストだったダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)もこの最終ステージで総合順位を上げ5位、アシストをしながらこの順位は驚異的だ。
そのマルチネスに守られ総合優勝を決めたベルナルは、第2の故郷ともいえるイタリアで念願のジロ・デ・イタリア初制覇を初出場でやってのけた。これで新人賞も獲得するとともに25歳以下でツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアの二つのグランツールを制覇したことになり、これはフェリス・ジモンディ、ジーノ・バルタリ、エディ・メルクスに次ぐ史上4人目の快挙となった。
「この勝利で浮かれたりはしないよ。地に足はついているよ。他にもグランツールを狙える選手たちは多くいるし(プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)とタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)を指し)、彼らがいる事こそが僕がさらにステップアップしていくためのモチベーションなんだよ。一番欲しかった勝利でもあり、ツール以降苦しんできたモチベーション低下や集中力の低下ともこれでおさらばできた。完全復活だよ。」ベルナルは苦悩した先で、光を掴んだ。
総合2位には「勝利の味を忘れていた」と先日吐露したダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス)が入った。最終日ベルナルとのタイム差を30秒ほど詰め、最終的に僅か1分29秒差での2位となった。それでも昨日千載一遇の大チャンスをものにして結果を残したカルーソは、総合2位以上に昨日のステージ勝利の余韻の中にいた。「僕はもう33歳、ここから先に何が待っているのかわからないけど、でも自分に自信が持てたし、まだこれから成し遂げることができると思う。」と力強く今後の抱負を口にした。
総合3位はサイモン・イェーツ(チームバイクエクスチェンジ)、最終日は苦手な個人TTでタイムを失ったが、2018年のブエルタ・ア・エスパーニャを制して以来のグランツール表彰台となった。
今大会のポイント賞はピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)、ツール・ド・フランスでは史上最多7度のポイント賞ジャージを獲得してきた男も、ジロ・デ・イタリアのポイント賞は初の獲得となった。一時期の圧倒的な強さは無くなったものの、地道にポイントを稼ぎ出す安定感はさすがと言えるだろう。
山岳賞はジオフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン)が獲得、2019年のブエルタ・ア・エスパーニャでの山岳賞に続き、二つ目のグランツールでの山岳賞獲得となった。
これで2021年度のジロ・デ・イタリアは閉幕、結果的にイネオス・グレナディアスは本来エースだったパヴェル・シヴァコフが落車リタイアとなったが、サブエースだったベルナルが完全復活、さらにはマルチネスをはじめとするチーム力を遺憾なく発揮、ロードレースがチームスポーツであることを改めて実感させられる大会となった。大本命がいなかったからこそ、想像以上に面白く、そして見ごたえのある大会となったと言えるだろう。
また新城幸也(バーレーン・ビクトリアス)は総合2位となったカルーソのチームメイトとして今大会を完走、これがグランツール14度目の完走となった。
ジロ・デ・イタリア第21ステージ
1位 フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス) 33’48”
2位 レミ・カバーニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +12”
3位 エドアルド・アフィニ(ユンボ・ヴィズマ) +13”
4位 マッテオ・ソブレロ(モビスター) +14”
5位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +27”
6位 マックス・ワルシェイド(チームキュベカ・アソス) +33”
7位 アルベルト・ベッティオール(EFエデュケーションNIPPO) +34”
8位 ヤン・トラトニック(バーレーン・ビクトリアス) +42”
9位 ジャンニ・モスコン(イネオス・グレナディアス) +44”
10位 イルヨ・カイセ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +47”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) 86h17’28”
2位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス) +1’29”
3位 サイモン・イェーツ(チームバイク・エクスチェンジ) +4’15”
4位 アレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック) +6’40”
5位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +7’24”
6位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
7位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +8’05”
8位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーションNIPPO) +8’56”
9位 トビアス・フォス(ユンボ・ヴィズマ) +11’44”
10位 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション) +18’35”
ポイント賞
ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ) 136ポイント
山岳賞
ジオフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン) 184ポイント
新人賞
イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
敢闘賞
ドリエス・デ・ボンド(アルペシン・フェニックス) 53ポイント
逃げ賞
サイモン・ペロー(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック) 783ポイント
チーム総合
イネオス・グレナディアス
ジロ・デ・イタリア第21ステージダイジェスト
H.Moulinette