ジロ・デ・イタリア2021第20ステージ:最後の山岳バトルを制したのはカルーソ!早めの仕掛けからの逃げ切り勝利!ベルナルは冷静に一人一人ライバルたちを蹴落とし総合首位死守(ダイジェスト動画あり)


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最後の山岳バトル、これにより大枠での総合順位が決まるステージは最後の大逆転ドラマのチャンスだった。そんなチャンスに可能性をかけたのは総合2位のダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス)、総合6位のロメイン・バルデ(チームDSM)と共に2つ目の山岳の下りで飛び出していくと、そのまま最後まで逃げ切る走りでステージ優勝を挙げた。総合での大逆転とまでは行かなかったが、総合2位をしっかりとキープ、エースのミゲル・ランダ(バーレーン・ビクトリアス)の離脱で急造エースとなったカルーソ、アシストを長年続けてきたベテランが、グランツールで初めて単独勝利を挙げた(チームTTでの勝利経験あり)。そして総合リーダーのイーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)は、この日も最強アシストのダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)に守られ焦ることなく走行、最終的にライバルをすべて脱落させ単独2位でゴール、これで総合優勝にまた一歩近づいた。

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総合争いが激しくなることが予想されたこのステージ、スタートから40㎞以上を超えようやく6人の逃げが発生した。しかしメイン集団はこの日のバトルに合わせて、逃げを大きく容認しない。代わりにハイペースアシストでライバルチームをけん制する動きをドゥクーニンク・クイックステップ、チームバイクエクスチェンジ、トレック・セガフレドらが行う。

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そしてこの日の2つ目の山岳で動きはさらに加速する。先頭の6名が引き続き逃げ続ける中で、メイン集団は一旦はペースを緩めたが、そこから今度はチームDSMがペースアップをしながら上っていく。そうでなくても急勾配で選手たちが脱落していく上に、さらにペースが速いこともあり総合系チームのアシストたちも容赦なく削られていく。チームDSMはここから早めの仕掛けを見せる。バルデとそのアシストのミカエル・ストーラー(チームDSM)が飛び出すと、カルーソとそのアシストのペッロ・ビルバオ(バーレーン・ビクトリアス)が飛び出していく。そして下りで逃げていた面々を捉えると、その一人フェリックス・グロスシャルトナー(ボーラ・ハンスグロエ)を加えた5人となり、さらにペースを上げていく。

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メイン集団も総合4位のアレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック)ジョナタン・カストロビエホ(イネオス・グレナディアス)らが追走のペースを上げるが、カルーソらとのタイム差は40秒ほどにまで広がっていく。カストロビエホはベルナルを率いて下りでかなりの速度で攻めるが、肝心かなめのもう一人のアシストマルチネスがこれについていくのに苦戦する。たびたびカストロビエホはペースを緩めながらの走りとなり、結果的にこれがカルーソとバルデにとっては味方した形となる。

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そして迎えた最後の頂上ゴール勝負、先行するカルーソとバルデをけん引し続けたストーラーとビルバオが役目を終えると、そこからはカルーソが一人でペースを作っていく。バルデは苦しそうな表情を見せてそれに付いていくのがやっとの状況が続く。そしてカルーソは残り2㎞でバルデを置き去りにすると、そのまま独走でステージ勝利を飾った。

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「ゴールまでは走馬灯のように今までの選手人生が思い起こされたよ。トレーニングやアシスト、自己犠牲をしてでもエースにつくして来たこと、そして今大会チームメイトたちが僕のために犠牲を払ってきてくれたことなんかをね。今日はチームはお手本のようなアシストをしてくれたよ。特にビルバオのアシストは素晴らしかった!あれが勝利につながったからね。本当に自分がステージ勝利を挙げられたことは夢みたいだよ。いま世界で僕が一番ハッピーな男だと思うよ。」カルーソは自らの今までの姿をチームメイトにオーバーラップさせながら、自身の勝利を喜んだ。
メイン集団はどんどんとその数を減らしていくが、この日もマルチネスが鬼引きを見せる。総合系ライバルたちは、ベルナルに対して攻撃を仕掛ける余裕すらない状態が続き、一人、また一人と脱落していく。総合3位のサイモン・イェーツ(チームバイクエクスチェンジ)と総合8位のジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップの二人は最後まで粘ったが、結局引きちぎられてしまった。ベルナルはそのまま単独でカルーソを追走、バルデをかわしステージ2位でゴールし、総合リーダーの座を守り抜いた。マルチネスは自らの総合7位でもあり、一つでも上の順位を狙うべくアシストを終えても踏み続けステージ3位でゴール、総合順位を一つ上げ6位とした。バルデはステージ4位に終わったが、こちらも総合では順位を上げ5位とした。

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これで残すは最終日の個人TTのみとなった。ベルナルとカルーソとのタイム差は2分弱だが、コース距離を考えれば総合優勝はベルナルが堅いだろう。しかし総合4位から8位までが僅差で推移しているため、ここでの順位変動は可能性がありそうだ。
ジロ・デ・イタリア第20ステージ
1位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス) 4h27’53”
2位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +24”
3位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +35”
4位 ロメイン・バルデ(チームDSM)
5位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +41”
6位 サイモン・イェーツ(チームバイク・エクスチェンジ) +51”
7位 アレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック) +1’13”
8位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーションNIPPO) +1’29”
9位 ロレンツォ・フォーチュナト(エオロ・コメタサイクリング) +2’07”
10位 アントニオ・ペデレロ(モビスター) +2’23”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) 85h41’47”
2位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス) +1’59”
3位 サイモン・イェーツ(チームバイク・エクスチェンジ) +3’23”
4位 アレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック) +7’07”
5位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +7’48”
6位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +7’56”
7位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーションNIPPO) +8’22”
8位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +8’50”
9位 トビアス・フォス(ユンボ・ヴィズマ) +12’39”
10位 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション) +16’48”
ジロ・デ・イタリア第20ステージダイジェスト
H.Moulinette