ジロ・デ・イタリア2021第19ステージ:激しい総合バトル勃発、S.イェーツが攻撃仕掛け独走でステージ勝利!ベルナルはそれに対抗して踏ん張り切りマリア・ローザ死守(ダイジェスト動画あり)
総合優勝を目指す戦いはトップ3に絞られた感があるが、それでも一発逆転もありうるのが山岳の怖さ、攻撃は最大の防御ともなりえるが諸刃の剣、かと言えば防御一辺倒で守れるほど総合リーダーの証マリア・ローザは生易しいものではない。ただ挑戦者にとっては逆転には攻撃あるのみ、それを実行したサイモン・イェーツ(チームバイクエクスチェンジ)が頂上目指しアタックを仕掛けると、そのまま独走し続けステージ勝利を挙げた。総合リーダーのイーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)は何とかそれを追走、タイムロスを最低限に抑えマリア・ローザを死守した。
先日の痛ましいロープウェイ落下事故により、このステージもコース変更を余儀なくされた。しかしそれでもハードなコースには変わりなく総合勢にとってはのるかそるかの大博打を打つか、地道に攻め続けるかの選択を問われるステージとなる。ただロードレースはチームスポーツ、以下にライバルチームのアシストを削るかというところから戦いは始まる。
この日もステージ序盤からアタックが繰り返されるが、なかなか逃げが容認されない。スタートから46㎞、ようやく6名の逃げが容認されるが、S.イェーツ擁するチームバイクエクスチェンジがこの日も主導権を握りメイン集団をけん引、逃げとのタイム差が大きく広がっていかない。すると今大会をレムコ・エヴァネポエル(ドゥクーニンク・クイックステップ)をエースとして挑んだことで、例年総合系エース抜きでステージ勝利を量産していたが、ここまで結果を何も得られていないドゥクーニンク・クイックステップが動き出す。一時はエヴァネポエルのアシストもこなしていながら順位を上げてきたジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)での勝利を狙うべく集団の主導権を奪う。
ちょうどこのタイミングでベルナルの右腕でもあり、ここまで総合7位と結果を残しているダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)が分断された集団の後方グループに取り残されてしまう。これを攻めのタイミングととらえたドゥクーニンク・クイックステップは加速、イネオス・グレナディアスはベルナルを前方集団に残したまま、アシストのフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)を後方集団にまで下がらせ、何とか分裂したメイン集団を一つに再形成させる。
ハイペースのまま進むメイン集団は、ゴール手前の山岳、パッソ・デラ・コルマを前に逃げをほぼ吸収、展開は一気に総合バトルの様相を呈していく。ここでもバイクエクスチェンジとドゥクーニンク・クイックステップが攻めの走りを見せるが、イネオス・グレナディアスはそれに対応する。この山岳のアップダウンでの走りのあおりを食らったのはそれ以外のチームのエースとアシストたちだった。この走りで一気に集団は40名ほどまでに絞られ、多くのエース格が僅かなアシストを残すのみとなってしまう。
そして山頂ゴールへの上りに差し掛かり、最初に動いたのはアルメイダだった。残り7㎞弱でアタックを決めると、その400mほど後にS.イェーツもアタックを仕掛ける。さらには総合2位のダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス)、総合4位のアレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック)、そしてジョージ・ベネット(ユンボ・ヴィズマ)も攻撃態勢に入る。
しかしここでベルナルはついていかない。ベルナルが選択したのはマイペースで上ること、あえて周囲の陽動ともいえる攻撃を無視し、自分のペースを守ることを再優先したのだ。これはリスキーではあるが、昨日S.イェーツを追走して自分の走りにブレーキがかかったベルナルは冷静だった。同じ轍は踏まぬと無理な走りはしない。
先行するアルメイダ、S.イェーツ、カルーソ、ヴラソフは一旦は集団を形成するが、すぐさまS.イェーツがまたしてもアタック、独走態勢を築く。
それ以外の総合上位勢、のヒュー・カーシー(EFエデュケーションNIPPO)らも追撃を仕掛け一度は追いつくが、結局は脱落、最終的にはマルチネスという最強アシストを従えたベルナルがS.イェーツを追う展開となる。
残り2.5㎞を切り、先頭のS.イェーツを追うのはベルナルとアルメイダのみという展開、ただタイム差はわずかに30秒ほどという僅差の勝負となる。最後まで攻め続けたS.イェーツはペースを落とすことなくそのまま先頭でゴール、ステージ優勝と共にボーナスタイムも手にした。チームにとってはステージ優勝が欲しかったドゥクーニンク・クイックステップだが、最後はアルメイダがベルナルを引き離し単独で2位フィニッシュ、勝利こそならなかったが、総合8位は変わらずも、総合4位までが射程圏内に入ってきた。ベルナルはその後塵を拝しステージ3位、しかししっかりと総合リーダージャージをキープして見せた。タイム変動はあったものの、総合トップ10はそれぞれ自分の順位を守り切る形となった。
「嬉しいね。チームは集団をコントロールし続けたし、主導権は常に我々にあったからね。今日は何となくイネオスの動きを見ていて、アタックを仕掛けても容認される気配がしたんだ。だからそこは躊躇なくその本能に従ったよ。実はベルナルのツイッターを見ていて、無理に攻撃に対応するよりも自分たちのペースで行こう、みたいなことが書いてあったんだよね。明日はさらにハードだから、覚悟しておくよ。何が起きるかわからないからね。」S.イェーツはライバルのツイッターを見てコンディションなどを確認していたようだ。
「今日はいい走りができたと思うよ。イェーツは今日最強だったね。あとは明日のステージをどう乗り切るかだね。今日のような走りができれば、このジャージは守り切れるはずだからね。最終日の個人TTにも足を残しておかねばならないからね。」ベルナルは冷静に残りのステージでの組み立てを考えていた。
ジロ・デ・イタリア第19ステージ
1位 サイモン・イェーツ(チームバイク・エクスチェンジ) 4h02’55”
2位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +11”
3位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +28”
4位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス) +32”
5位 アレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック)
6位 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション) +42”
7位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +49”
8位 コーエン・ボウマン(ユンボ・ヴィズマ) +1’25”
9位 トビアス・フォス(ユンボ・ヴィズマ)
10位 ロメイン・バルデ(チームDSM)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) 81h13’37”
2位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス) +2’29”
3位 サイモン・イェーツ(チームバイク・エクスチェンジ) +2’49”
4位 アレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック) +6’11”
5位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーションNIPPO) +7’10”
6位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +7’32”
7位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +7’42”
8位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +8’26”
9位 トビアス・フォス(ユンボ・ヴィズマ) +10’19”
10位 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション) +13’55”
ジロ・デ・イタリア第19ステージダイジェスト
先日のイタリアケーブルカー事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたします。
H.Moulinette