ジロ・デ・イタリア2021第17ステージ:ライバルたちの逆襲!ベルナルが初めて見せた苦悶の表情!D.マーティンが逃げ切り独走で全グランツールステージ優勝制覇!(ダイジェスト動画あり)


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第17ステージ、ジロ・デ・イタリアに易しいステージはない。このステージも難関ステージであり、総合優勝をめぐる戦いは激しくなると思われた。総合リーダーの座は守ったものの、イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)が今大会初めて苦悶の表情を浮かべ直接ライバルに置き去りにされるシーンを目の当たりにすることとなった。しかし総合8位のダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス)が鼓舞し、それに応えるようにエースは最後の最後まで踏ん張り続けた。そんなステージを制したのはスタートから逃げ続けていたうちの一人でもあり、今大会の総合上位争いから脱落していたダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション)、粘りの走りで独走逃げ切りを果たし、これですべてのグランツールでステージ優勝を達成して見せた。
連日総合勢は激しく動く今年のジロの山岳ステージだが、その中でタイムを失い一度は脱落した男が、今度は別の目的をもって逃げに乗った。総合上位争いから脱落していたことで、このステージでの逃げに乗ることを容認されたD.マーティンは、ステージ優勝へとその目的を切り替え、モチベーション高くこのステージに挑んでいた。スタートから下りが続き平均時速が55㎞を記録していたステージは、50㎞を超えようやく19名の逃げが抜け出していく。
メイン集団はチームバイクエクスチェンジが牽引、この日エースのサイモン・イェーツ(チームバイクエクスチェンジ)が何らかの動きをすることを予感させた。先頭の逃げとのタイム差は最大でも5分程度までしか広がることはなかった。

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D.マーティンはゴール前最後の山岳で仕掛けると、逃げは完全に崩壊、ジオフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン)が意地で山岳ポイントは獲得するが、そこから下り切り、ゴールまでの上りに差し掛かると、D.マーティンが再びその格の違いを見せつけた。その頃後続のメイン集団は、山岳の下りで落車が発生、総合6位のギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)、さらには昨日総合から脱落したレムコ・エヴァネポエル(ドゥクーニンク・クイックステップ)らが巻き込まれてしまう。チッコーネは怪我はなかったがバイクが破損、さらにこの落車でチームカーがスペアバイクを届けられず、ここからかなりの労力を要して追走を強いられる羽目となった。
D.マーティンが独走態勢となる中、追走のメイン集団のジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)は逃げに乗っていたジェームス・ノックスとピーター・セリー(共にドゥクーニンク・クイックステップ)が最後の力を振り絞りアシストにでる。ベルナルもチームメイトがアシストし、盤石な体制で走る中、気が付けばアレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック)らが脱落し、総合勢は一気に絞られていく。

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残り3㎞、今大会一度も弱さを見せてこなかったベルナルがついに苦悶の表情を浮かべる。S.イェーツとアルメイダが仕掛けるとそれについていくことができない。それを見て一度はこの二人についていくそぶりを見せたD.マルチネスがサポートに戻り、そして声を上げジェスチャーでベルナルを鼓舞する。そこに追走してきたダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス)が追い付き、さらにディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ)も合流を果たす。
逃げ続けたD.マーティンは一度はペースが落ちたがそこから粘りの走りを見せ、最後は追走してきたアルメイダにその背中を捉えられながらもガッツポーズをゴールで決めた。アルメイダは最後にS.イェーツを突き放しステージ2位、総合でも8位まで浮上してきた。ステージ3位のS.イェーツは総合でも表彰台県内の3位へと舞い戻ることに成功した。その後塵を拝したベルナルだったが、なんとかステージ7位でゴール、ブラソフ、ヒュー・カーシー(EFエデュケーションNIPPO)らが遅れたこともあり総合では安泰となった。

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「S.イェーツが調子よさそうだったから、付いていこうとしたんだけどそれが失敗だったよ。でも幸いなことに最悪の日だったにもかかわらず、タイムロスはほとんどなかったからね。特にTTでタイムを失うことが見えているカルーソに対してほんの数秒しか失わなかったのは大きいよ。でもミラノまでレースはわからないよ。たった一日の不調ですべてがひっくり返るのがレースだからね。」ベルナルに気の緩みは一切ない。

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「今日はこの勝利のために来たんだよ。今日が最大のチャンスだろうと思っていたし、休息日明けで逃げには集団は寛容だと思っていたからね。でも本当に勝利できるとは思っていなかったよ。いまだに信じられないよ。チームメイトの多くを失って苦しい状況だったけど、雰囲気は悪くなかったんだ。チームとしては結果が欲しかったところだったから、本当によかったよ。」3つのグランツールでの勝利はスプリンター以外の選手にとってはかなり厳しいゴールだが、D.マーティンはそれを成し遂げた。
ジロ・デ・イタリア第17ステージ
1位 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション) 4h54’38”
2位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +13”
3位 サイモン・イェーツ(チームバイク・エクスチェンジ) +30”
4位 ディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ) +1’20”
5位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス)
6位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +1’23”
7位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
8位 アントニオ・ペデレロ(モビスター) +1’38”
9位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ビクトリアス) +1’43”
10位 ジョージ・ベネット(ユンボ・ヴィズマ) +2’21”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) 71h32’05”
2位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ビクトリアス) +2’21”
3位 サイモン・イェーツ(チームバイク・エクスチェンジ) +3’23”
4位 アレクサンダー・ヴラソフ(アスタナ・プレミアテック) +6’03”
5位 ヒュー・カーシー(EFエデュケーションNIPPO) +6’09”
6位 ロメイン・バルデ(チームDSM) +6’31”
7位 ダニエル・マルチネス(イネオス・グレナディアス) +7’17”
8位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +8’45”
9位 トビアス・フォス(ユンボ・ヴィズマ) +9’18”
10位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド) +11’26”
ジロ・デ・イタリア第17ステージダイジェスト
H.Moulinette