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最難関ステージ、勝負どころのクイーンステージとなるはずだったチマコッピ（大会の最高標高到達地点）擁する第16ステージは、雨と雪の予報という悪天候により、ステージ開始前に短縮されることとなった。山岳ポイント2か所を回避、コースも短くなり、展開は少なくなるかと思われたが、実際にはその逆となった。総合リーダーの証、マリア・ローザを着用するイーガン・ベルナル（イネオス・グレナディアス）にとっては後半一発の巨大な山岳だけになったコースは、攻めやすい最高のコースとなっていた。見事にステージ2勝目を圧勝で挙げるとともに、総合でもライバルたちを大きく突き放すことに成功、一気に総合優勝に近づく結果となった。

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212㎞が153㎞に、そして4つ用意されていた山岳ポイントは2つに減らされ、総獲得標高が6000mから4000mへと減ったことで、ステージ終盤は標高2236mのパッソジアウ（チマコッピ）を通過し、そこからの17㎞のダウンヒルでゴールを迎えるコースとなった。雨と雪による気温低下は選手たちを大きく苦しめるステージとなる。

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レースは序盤から当然のように逃げが発生するが、その数は徐々に減っていく。メイン集団は総合5位のヒュー・カーシー擁するEFエデュケーションNIPPOが攻めの走りを見せる。これによりライバルチームのアシストととエースの多くが脱落していってしまう。レムコ・エヴァネポエル（ドゥクーニンク・クイックステップはこのステージでも大苦戦、大きく後れを取りステージだけで20分以上のタイムを失い、総合上位争いから姿を消した。

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そしてジアウへの上りに入ると逃げは吸収され、さらにサバイバルは厳しくなり総合上位勢はベルナル、ロメイン・バルデ（チームDSM）、ギウリオ・チッコーネ（トレック・セガフレド）、ダミアーノ・カルーソ（バーレーン・ビクトリアス）らに絞られていく。そしてパッソジアウの頂上までの中間点、チマコッピ最初の通過者の称号まで5㎞を残しベルナルがなんと単独で仕掛ける。ゴールまでの距離を考えればエースが単独で仕掛けるにはかなり遠い距離ではあるが、ベルナルに迷いはなかった。そのままぐんぐんと加速しあっという間に独走態勢を築くと、そのまま頂上をトップ通過し下りへと突入していく。悪路での走りはお手の物とばかりに元MTBクロスカントリーの選手だったベルナルは躊躇なくペダルを踏み、さらには濡れたダウンヒルでも攻め続ける。ハイリスクではありながら確信を持ったその走りに、ライバルたちは為す術なかった。

最後は余裕をもって身だしなみを整えてガッツポーズ、圧倒的な強さを見せたベルナルが今大会2勝目、総合優勝へさらに一歩近づく快勝でステージを締めくくった。

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追うライバルは、バルデとカルーソが二人合流して追いすがりそれぞれステージ2位と3位、総合でも2位と7位と順位を上げた。カーシーは5位でゴールし、こちらも総合3位へとジャンプアップを果たした。今大会前優勝候補にも名前が挙がっていたアレクサンダー・ヴラソフ（アスタナプレミアテック）は何とか踏んばりステージ7位で総合4位を死守、それでも2分差以上のタイムを失ってしまった。

総合2位でスタートしたサイモン・イェーツ（チームバイクエクスチェンジ）だったが、このステージでは苦しみ我慢の時間が続いた。大きくタイムを失った結果総合5位まで順位を下げる形となった。

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「この勝利は大きいよ。マリア・ローザを着用してのステージ勝利は特別なんだよ。だから最後はちゃんとレインジャージを脱いでマリア・ローザへの敬意を示したんだよ。今日はチームが全面的に僕のやろうとしていることを信じてくれたんだよ。きつかったけどそんな皆の想いが背中を押してくれたんだよ。きついコースと悪天候という悪条件が重なるときは、もう精神力の勝負になるんだよ。ただ自分と向き合い耐えしのぐ、これをゴールまで続けたんだ。そして成し遂げたんだ。」ベルナルのメンタルにはすでに王者の風格が漂っていた。

このステージでの驚きはEFエデュケーションNIPPOの攻めだろう。スタート前より、攻めるという声は聞こえてきていたものの、想像以上の走りでライバルたちを粉砕、イネオス・グレナディアスがよく取る戦略を代わりにやってのけた。しかしその攻めもこのようなペースアップに慣れているベルナルにとっては”最大のアシスト”になったようだ。逆にイネオス・グレナディアスはこの日アシストを疲弊させきることなく終えたことで、今後の山岳でまたその攻撃的走りがさく裂しそうな予感を感じさせる。

ジロ・デ・イタリア第16ステージ
1位　イーガン・ベルナル（イネオス・グレナディアス）　　　4h22’41”
2位　ロメイン・バルデ（チームDSM）　　　＋27”
3位　ダミアーノ・カルーソ（バーレーン・ビクトリアス）
4位　ギウリオ・チッコーネ（トレック・セガフレド）　　　＋1’18”
5位　ヒュー・カーシー（EFエデュケーションNIPPO）　　　　＋1’19”
6位　ジョアン・アルメイダ（ドゥクーニンク・クイックステップ）　　　　＋1’21”
7位　アレクサンダー・ヴラソフ（アスタナ・プレミアテック）　　　＋2’11”
8位　ゴルカ・イザギーレ（アスタナ・プレミアテック）　　　　＋2’31”
9位　ダビデ・フォルモロ（UAEチームエミレーツ）　　　＋2’33”
10位　トビアス・フォス（ユンボ・ヴィズマ）

ジロ・デ・イタリア総合順位
1位　イーガン・ベルナル（イネオス・グレナディアス）　　　66h36’04”
2位　ダミアーノ・カルーソ（バーレーン・ビクトリアス）　　　＋2’24”
3位　ヒュー・カーシー（EFエデュケーションNIPPO）　　　＋3’40”
4位　アレクサンダー・ヴラソフ（アスタナ・プレミアテック）　　　＋4’18”
5位　サイモン・イェーツ（チームバイク・エクスチェンジ）　　　＋4’20”
6位　ギウリオ・チッコーネ（トレック・セガフレド）　　　＋4’31”
7位　ロメイン・バルデ（チームDSM）　　　＋5’02”
8位　ダニエル・マルチネス（イネオス・グレナディアス）　　　＋7’17”
9位　トビアス・フォス（ユンボ・ヴィズマ）　　　＋8’20”
10位　ジョアン・アルメイダ（ドゥクーニンク・クイックステップ）　　　＋10’01”

ジロ・デ・イタリア第16ステージダイジェスト

H.Moulinette