シクロクロス世界選手権2021:コロナでU-23とエリート限定となった大会は、男女4種目でオランダが制覇!エリート男子はファン・デル・ポエルが貫録の4度目の王者!
紆余曲折ありながらも開催へとこぎつけた今年のシクロクロス世界選手権、シクロクロスが国技ともいえるベルギーを抑えて、U-23男女、エリート男女と開催されたすべてのレースで頂点をつかんだのはオランダだった。特に男子エリートでは、今やロードでも素晴らしい才能を発揮し勝利を量産するワウト・ファン・アールト(ベルギー)とマシュー・ファン・デル・ポエル(オランダ)の一騎打ちとなったが、勝利の女神はファン・デル・ポエルにほほ笑んだ。これで3年連続4度目の栄冠となった。
スタートから2周回目でファン・デル・ポエルをハプニングが襲う。砂地獄のコースにハンドルをとられ一回転して転倒してしまう。しかし最強ライバルで、世界王者の座を3度ずつ分け合ってきたファン・アールトにも不運は訪れる。3周回目にパンクを喫すると、ファン・デル・ポエルと10秒ほどの差がついてしまう。
僅か10秒、しかしコースの得意不得意が顕著に差となるシクロクロスでは、ファン・デル・ポエルにとってはこのタイム差は十分だった。砂地でもバイクにまたがったままクリアしていくファン・デル・ポエルに対し、追う立場となったファン・アールトは必死に追いすがるが、砂地での勢いの差は明白だった。最初はタイム差を何とかキープしていたが、周回を重ねるごとにその差はじわじわと開いていく。視界には捉えているその背中は、限りなく遠かった。
そのままファン・デル・ポエルは最終ラップでも勢いが衰えずに37秒差で4度目の世界チャンピオンを獲得した。ファン・アールトはずるずると後退しながらも、後続の追走は振り切り2位を確保した。
激しいバトルとなった3位争いはトゥーン・アールツ(ベルギー)がトム・ピッドコック(イギリス)とのバトルを制した。4位に終わったピッドコックは、このレースでもスタートで出遅れながら驚異の挽回を見せるなどシクロクロスでも結果を残しているが、今シーズンはファン・アールトとファン・デル・ポエルを追う形でロードでも戦うこととなる。イネオス・グレナディアスという最強チームで、今シーズンどこまで結果を残せるかが非常に楽しみだ。
「ファン・アールトのパンクは僕にとって運がよかったね。あれで振出しに戻っていけると確信が持てたね。あとは周回ごとに脚がよく回るようになったんだよ。」ファン・デル・ポエルは勝因がレース中の調子が後半に行くにつれ語った。「でも観客がいないと世界選手権ぽくないし、勝った実感もわかないね。表彰台でアルカンシエルを身に着けたらちょっとは違うかな?」
2021シクロクロス世界選手権エリート男子
金メダル マシュー・ファン・デル・ポエル(オランダ) 58’57”
銀メダル ワウト・ファン・アールト(ベルギー) +37”
銅メダル トゥ・アールツ(ベルギー) +1’24”
4位 トム・ピッドコック(イギリス) +1’37”
5位 ローレンス・スウィーク(ベルギー) +2’05”
6位 マイケル・ファントゥーレンハウト(ベルギー) +2’14”
7位 イーライ・イザービット(ベルギー) +2’18”
8位 クインテン・ヘルマンス(ベルギー) +2’23”
9位 ラース・ファン・デル・ハール(オランダ) +2’41”
10位 ジョリス・ニューエンハウス(オランダ) +3’15”
エリート女子では、31歳のベテラン、ルシンダ・ブランド(オランダ)がドラマチックな勝利を飾った。昨年度の世界チャンピオン、シリン・デルカルメン・アルヴァラド(オランダ)がオープニングラップで落車する波乱の幕開けとなった。そして最終ラップまでもつれた展開は、鋭角なコーナーで思い切りインサイドをついたブランドに対し、アンマリー・ワルスト(オランダ)は外からかぶせようとしたがぶつかりはじき出される形で転倒してしまった。これで勝負あり、今シーズン圧倒的な強さを見せてきたブランドが念願の世界チャンピオンを獲得した。
「何年もあと少しというところだったの。今シーズンは最高のシーズンが送れた上に、最後は世界チャンピオンジャージまで獲得できたなんて最高だわ!」ブランドは勝利を喜んだ。「もちろん接触は良くないわ。でもあのタイミングでは逃げ場もないし、お互い勝利への執念で譲れなかったのよ。」強き女子は勝ち運をも手繰り寄せた。
2021シクロクロス世界選手権エリート女子
金メダル ルシンダ・ブランド(オランダ) 46’53”
銀メダル アンマリー・ワルスト(オランダ) +08”
銅メダル デニース・ベツマ(オランダ) +19”
U-23カテゴリーでは男子はピム・ロナール(オランダ)が制し、女子はフェム・ファン・エムペル(オランダ)が制し、全てのカテゴリーをオランダ勢が独占、一気に4枚の世界チャンピオンジャージを母国にもたらした。
今シーズンもファン・デル・ポエル、ファン・アールトはそのままロードシーズンへと突入、ピッドコックに加え、複数の選手たちがトップカテゴリーでロードを走ることとなる。昨今シクロ出身者の活躍は著しく、今シーズンもその流れは続きそうだ。
H.Moulinette]