ジロ・デ・イタリア第18ステージ:ステルビオ峠越えで総合大シャッフル!アシストに遅れるもケルデルマンがマリア・ローザ獲得!総合1~3位は15秒差の大混戦へ!アルメイダの夢潰える
圧倒的優勝候補がいない、そんな今大会はまさに大乱戦、第18ステージの最難関のクイーンステージを終了しての総合1位と3位との差はわずか15秒となっている。そしてエースよりも強いアシスト、これはグランツールではよくある現象だが、この大混戦の中で、誰も総合争いにここまで食い込むとはを予想すらしなかったチームの中で、そのエースとアシストが互いに大奮闘、総合で1位と2位を占めた。
そんなステージを制したのはジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ)、本来はアシストである男が、タオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス)の攻撃に対応して追走、エースのウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)を置き去りにし、さらにはそのエースを上回る走りで山岳を駆け回りステージ制覇、そして総合でも僅差の2位につけた。大きくタイムを失ったケルデルマンだが、何とか踏ん張り切り総合リーダーの証、マリア・ローザを獲得した。
最難関ステージ、クイーンステージと言われる第18ステージは、大会最高標高地点を意味するチマ・コッピ、名物のステルビオ峠を通過するハードなステージだ。間違いなく総合性はばらける、シャッフルされることが予想された。レースは25名の逃げから始まる。最初の山岳で山岳賞ジャージを着用するルーベン・ゲレーロ(EFプロサイクリング)を筆頭に動くが下りでばらばらとなる。そして二つ目の山岳では、昨ステージの覇者ベン・オコナ―(NTTプロサイクリング)を筆頭に新たな逃げが形成される。
総合争いを演じるドゥクーニンク・クイックステップ、サンウェブ、イネオス・グレナディアスは集団のペースをコントロール、逃げを完全に容認することなく、4分ほどのタイム差で推移させる。また連日逃げに乗っている逃げ職人のトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)はこの日も山岳ポイントを稼ぎ、気が付けばゲレーロに肉薄するところまで来ている。
そして迎えた24.8㎞、平均勾配7.4%のステルビオ峠の上りが全てを一変させる。上り始めてしばらくし、逃げは散り散りになリオコナーが連夜の単独走へと持ち込む。残り55㎞、その背後のメイン集団では、この日もサンウェブ山岳トレインが炸裂し、あっという間に集団は20名にまで絞られてしまう。このペースについていけなかったのが総合リーダーのジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、残り50㎞、この日まで驚きの粘りで総合首位を守り抜いてきたが、ついにここで後れを取る。
ヒンドリーともう一人のアシストクリス・ハミルトン(チームサンウェブ)はさらにペースを上げると、ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン)、パトリック・コンラッドとラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)らが次々と遅れていく。そして残り48㎞で今度はイネオス・グレナディアスのローハン・デニスが先頭に立ちさらにペースを上げていく。すると今度はヤコブ・フグルサング(アスタナ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)が遅れを取る。
これで残されたのはヒンドリーとケルデルマン、そしてデニスとタオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス)となり、サンウェブVSイネオス・グレナディアスの構図となる。しかしここで総合最上位のケルデルマンが脱落、ただヒンドリーはゲイガン・ハートとわずか1秒差のため、エースを置き去りにしてもチームとしての総合を明け渡すまいとイネオスコンビについていく。
その背後ではビルバオとフグルサングがケルデルマンに追いつき追い越し、さらに追走の手を強める。苦しいケルデルマンだが、マイペース走法で大きく崩れることはない。タイム差は最初は広がらなかったが徐々に開き始め、1分半ほどを推移する。その後方ではビルバオが追い上げを見せ始める。
こうなれば後はゲイガン・ハートが総合4位からどこまでジャンプアップするか、ケルデルマンをどこまで突き放すのかとなる。ステルビオを3人で通過すると、ここでもデニスが見事な牽引を見せる。デニスが外れるとあとはゲイガン・ハートが先頭で引き続ける。ヒンドリーは後方にエースがいるため、無理をすることなくただひたすらゲイガン・ハートの背後に控え続ける。
ケルデルマンとのタイム差は2分近くまで広がり、バーチャルでの総合が極めて接近していくが、ゴール前200m、ついにヒンドリーが動く。最後は脚を貯めていたヒンドリーがステージ勝利、ゲイガン・ハートは第15ステージに続くステージ優勝はならなかったものの、これで一気に総合優勝争いに名乗りを上げた。ケルデルマンは何とか踏ん張り切りゴール、しかしこれで総合1位から3位が15秒差にひしめき合う大混戦となっている。
「チャンスがあったんで勝利を狙ったんだよ。タオは強かったよ。正直脱帽だよ。あくまでもエースのアシストという役割もあったので、僕はソロで仕掛けるつもりはなかったんだ。タオをタダ追走することだけが僕の使命だったんだよ。それでステージ勝利が得られたんだから万々歳だよ。うちのチームのエースはあくまでもケルデルマンだからね。」ヒンドリーはレース後に戦略を問われそう語った。
「きつかったよ、クレイジーな一日だったよ。人生で最も苦しかった一日だよ。でも結果としてヒンドリーがステージ優勝で僕がマリア・ローザ、最高の一日になったよ。早い段階でアルメイダを脱落させられたんだけど、イネオスが思ったよりも強かったね。後は残りのステージで結果がどうなるか、ベストを尽くすよ。」これでケルデルマンに総合優勝という千載一遇の大チャンスが舞い込んできた。
昨日までの総合首位ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)は、ジロ名物ステルビオ峠で後れを取りマリア・ローザを失うも、歯を食いしばりながら最後まで走り切り総合5位に踏みとどまった。これで総合は大シャッフルとなり、フグルサングが再びトップ10に顔を出した。
ジロ・デ・イタリア第18ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第18ステージ順位
1位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) 6h03’03”
2位 タオ・ゲオグヘーガン(イネオス・グレナディアス)
3位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +46”
4位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +1’25”
5位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +2’18”
6位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +4’04”
7位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +4’51”
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)
9位 ヘルマン・ペルシュタイナー(バーレーン・マクラーレン)
10位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +4’55”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) 77 h46 ’56”
2位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +12”
3位 タオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス) +15”
4位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +1’19”
5位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +2’16”
6位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +3’59”
7位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +5’40”
8位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +5’47”
9位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +6’46”
10位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +7’28”
H.Moulinette