ジロ・デ・イタリア第17ステージ:昨日勝利を逃し悔しがったオコナ―がわずか一日で勝利を奪取!アルメイダは総合がっちり堅守、山岳賞はゲレーロが奪取!
勝利の女神は気まぐれだ。昨日勝利の女神の祝福をのがした男が、翌日はその祝福を受けることとなった。あと一歩届かなかった勝利を翌日奪い返すというのは容易なことではない。しかしそれを成し遂げることができれば、その印象度はグンと上がることとなる。ましてやそれがグランツールとなればなおのことだ。
ヤン・トラトニック(バーレーン・マクラーレン)に最後の最後で屈したベン・オコナ―(NTTプロサイクリング)だったが、この日は盤石の体制、逃げ集団から飛び出し独走態勢を築いた。そのままガッツポーズで勝利を決め、自身初のグランツール勝利を決めた。来年度のスポンサー探しをしているチームにとっても貴重は勝利をもたらした。
この日のステージは、山岳ではあるが穏やかな走行日和、1級山岳を3つ超えていくハードなステージだ。そうなればまず動くのは山岳賞ジャージ争いにかかわる二人となる。ジョバンニ・ヴィスコンティ(ヴィーニザブ・KTM)、そしてルーベン・ゲレーロ(EFプロサイクリング)だった。しかしなかなか逃げが決まらず、結果的にヴィスコンティはこの日の逃げに乗ることに失敗してしまう。
逃げ職人のトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)に加え、ゲレーロ、オコナ―、ローハン・デニス(イネオス・グレナディアス)、ディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ)と言ったところがこの日の逃げを確定させた。中でもNTTプロサイクリングはエースのドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング)のためを見越して、3人を逃げに送り込んだ。また総合上位を狙うチームも積極的にアシストを送り込んだが、マリア・ローザ擁するドゥクーニンク・クイックステップと、総合優勝争いを演じるチームサンウェブはこれには加わらないことを選択する。しかしその代わりにドゥクーニンク・クイックステップはこの日のメイン集団をコントロールすることに専念する。
逃げに乗ったゲレーロは、ライバルヴィスコンティが居ぬ間に山岳ポイントを荒稼ぎ、この日の山岳賞ジャージ奪取を確定させる。しかし3つ目の山岳に入るころには逃げ集団は分裂、ゲレーロはここで遅れてしまう。
ここから目立った動きをしたのがデ・ヘント、逃げの常連でもあり、逃げ切りの達人は積極的に集団を牽引、さらにはアタックを繰り返しレースを盛り上げていく。そしてバーチャルではハーマン・ペルスタイナー(バーレーン・マクラーレン)が表彰台のポジションまで上げる。
しかし残り24㎞、ここまで総合勢のアタックを許さなかったドゥクーニンク・クイックステップがペースを上げていく。最大で8分差以上まで広がったタイム差もどんどんと縮まっていく。先頭ではばらけた逃げ集団がまた一つとなるが、誰がけん引するかでまとまらない。ステージ優勝が欲しい面々と、アシストのために前に出たメンバーでの心理的駆け引きが続く。
最後の上りへの麓、ゴールまで12㎞を切ると、タイム差は5分台となる。この最後の上りが勾配がきつく、ステージ愁傷を狙う逃げのメンバーにとっては勝負所となる。デ・ヘント、デニスらが次々と仕掛けるが、どれも成功には至らない。昨日トラトニックを猛追し、追いつきながらも最後に突き放された苦い経験を元に、オコナ―がこの日は残り8㎞の急勾配セクションで一気に仕掛け、ライバルたちを置き去りにする。そのままトップで頂上を超えると、あとは単独での個人TT状態、下りセクションでも守りに入らず攻め続け、独走で嬉しい勝利を挙げた。
後続のメイン集団では、オコナ―が勝負を決めたセクションで、総合3位のジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ)が仕掛ける。しかしここでなぜか総合2位のチームメイト、ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)がこれを追走、ケルデルマンをマークしていたアルメイダを引き連れヒンドリーに追いついてしまう。こうなればもう他の動きは起きず、そのまま集団でのゴールとなった。
「昨日は惜しかったからね。だから今日は狙っていたんだよ。夢にまで見たグランツールの勝利だよ!ゴールではもう感極まってしまったよ!仕掛けたときは、皆がきつそうなのが見えていたんだよ。その上でお互いを気にしすぎていたので、これは絶好のタイミングだと思ったんだ。もし誰かに追いつかれても、今日は僕が先行して仕掛け続けるつもりだったんだよ。」オコナ―は昨日の教訓を今日活かした。
明日以降の山岳ステージが、雪や新型コロナの影響で急遽変更になる可能性もあり、そうなれば局面はジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)に有利に働くだろう。そういう意味では今日のステージらライバルたちにとっては攻めどころではあったのだが、攻めの一手を欠いたまますべては進んでしまった。「明日はステルビオ峠だけど、上ることになっても僕は全力を尽くすだけだよ。ここまで来たらそりゃジロを勝ちたい思いが強いからね!」アルメイダは未知の体験を楽しみつつも、勝利を意識し始めた。
ジロ・デ・イタリア第17ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第17ステージ順位
1位 ベン・オコナ―(NTTプロサイクリング) 5h50’59”
2位 ヘルマン・ペルシュタイナー(バーレーン・マクラーレン) +31”
3位 トーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル) +1’10”
4位 イルヌール・ザッカリン(CCCチーム) +1’13”
5位 キリアン・フランキニー(グルーパマFDJ) +1’55”
6位 ハーム・ファンホッケ(ロット・ソウダル) +2’49”
7位 ダビデ・ビレイラ(モビスター) +3’29”
8位 オスカル・ロドリゲス(アスタナ)
9位 アマニュエル・ゲブレザビエ(NTTプロサイクリング) +3’30”
10位 ジェスパー・ハンセン(コフィディス) +4’32”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 71h41’18”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +17”
3位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +2’58”
4位 タオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス) +2’59”
5位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +3’12”
6位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’20”
7位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +3’31”
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング) +3’52”
9位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +4’11”
10位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +4’26”
H.Moulinette