ジロ・デ・イタリア第16ステージ:トラトニックが逃げ二人での駆け引きを制し勝利!勝因は彼女!オコナ―はハンドルを叩いて悔しがるも激坂で突き放され2位、総合勢は動き無し

総合優勝と総合表彰台争いが白熱するが、必ずしも連日バトルをするわけではない。時にはバトルをし、時には休むステージもある。そんなステージはステージ優勝を狙う選手たちにとっては格好の活躍の場、来シーズンの契約へ向け、また来シーズンのチームのメインスポンサー獲得へ向け、貴重な攻撃の時間となる。

©Giro d’Italia
休息日明けのそんなステージを制したのはヤン・トラトニック(バーレーン・マクラーレン)、ゴール前最後の激坂で同じく結果が欲しいベン・オコナ―(NTTプロサイクリング)を振り切り単独でガッツポーズを決めた。
ついに迎えた最終第3週目、総合リーダーが、「こんなに長いレースは走った経験がない」と口にする中、大会前は優勝候補にすら名前が上がらなかった選手たちによる総合バトルは新鮮味で溢れている。しかしそれでもこの日は逃げのための一日、総合勢は大きな仕掛けをすることはなかった。229㎞という長丁場の第16ステージは6つの山岳を超えていくハードなステージ、最初の山岳前に28名の大所帯が飛び出していく。山岳賞ジャージも視野に入れているルーベン・ゲレイロ(EFプロサイクリング)、そして山岳賞ジャージを着用するジョバンニ・ヴィスコンティ(ヴィーニザブ・KTM)もそれに加わり、タイトル争いは白熱する。

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最初の山岳ではゲレーロが先着するも、次の二つの山岳ではヴィスコンティが取り返すが、4つ目の山岳ではまたもゲレーロがポイントを奪う。一時はそのまま独走態勢へと持ち込んだゲレーロだったが、逃げ集団はそれを許さず吸収する。そしてそれにカウンターアタックがかかり、トラトニックとマニュエレ・ボアロ(アスタナ)が飛び出していき、5つ目の山岳を迎える。追走ではオコナ―をはじめとする7名の追走が逃げ集団の中から形成される。

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トラトニックはボアロを引き離し独走態勢へと持ち込んでいくが、それと同時にその後方でもオコナ―が飛び出し、単独でトラトニックに迫る。そのはるか後方、15分差以上遅れ、ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)ら総合系は警戒を怠らないでクルージングしていく。

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トラトニックと合流したオコナ―、二人は揃ってゴールを目指していく。山岳ではトラトニックのきつそうな雰囲気が漂っていたが、ゴールまでの下り、そしてそこからの折り返しの上りで脚を貯めていたトラトニックは、残り1㎞を切ってオコナ―がアタックをすると、それにすぐさま反応、残していた脚を爆発させ急加速、勝負を決めた。

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「大会後半のステージはスロベニアに近いから特別なんだよ。今日は彼女と兄も来てくれていたし、本当にいい一日になったよ。個人的には勝負できるのはこのステージまでだったからね。(残りのステージが自分向きではないので)今日はボアロと逃げた時点で、最後まで一気に行くことをイメージしていたんだ。でもオコナ―が追いついてきてきつかったんだよ。正直限界だったんだよね。でも残り500mで彼女を見つけて、それで一気にテンションが上がって限界を超えもう一段ギアが上げられたんだよ。」トラトニックは彼女が起爆剤となって勝利をつかんだ。

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総合争いでは大きな動きはなかったものの、最後の最後、ゴール前の激坂でアルメイダが加速、わずか2秒ではあるがライバルたちにタイム差をつけてゴールした。「今日は気分がよかったね。攻撃は最大の防御って言うでしょ。だから最後だけでも仕掛けようと思ったんだ。激坂だし皆疲れているだろうから、少しタイムを稼げるかと思ってね。ここからはもう心理戦だし脚がなければ話にならないからね。正直こんな状況になっているとは大会前は思ってもいなかったし、すべてがクレイジーで夢の中のようだよ。あとはどこまで自分を追い込んでいけるかだね。もちろん夢も見るけど、最悪も想定しているよ。レースは甘くないことは知っているからね。でも今はこの状況を経験できることに感謝と、チームのサポートに感謝だよ。」アルメイダはどこまでも謙虚だった。
ジロ・デ・イタリア第16ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第16ステージ順位
1位 ヤン・トラトニック(バーレーン・マクラーレン) 6h04”36”
2位 ベン・オコナ―(NTTプロサイクリング) +07”
3位 エンリコ・バッタリン(バーレーン・マクラーレン) +1’14”
4位 カミル・マレッキ(CCCチーム)
5位 ベン・スイフト(イネオス・グレナディアス)
6位 アンドレア・ヴェンダラメ(AG2Rモンディアル) +1’21”
7位 ジョフリー・ブシャード(AG2Rモンディアル)
8位 マッテオ・ファブロ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’25”
9位 マニュエレ・ボアロ(アスタナ) +1’33”
10位 アレッサンドロ・トネリ(バルディア―二CSFファイザネ) +1’37”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 65h45’08”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +17”
3位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +2’58”
4位 タオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス) +2’59”
5位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +3’12”
6位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’20”
7位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +3’31”
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング) +3’52”
9位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +4’11”
10位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +4’24”
H.Moulinette