ジロ・デ・イタリア第15ステージ:頂上ゴールバトルでゲイガン・ハートがイネオスに5勝目をもたらす!総合勢大シャッフルも、アルメイダは昨日の貯金が生きマリア・ローザ死守!ケルデルマン肉薄!

個人TTで疲れた体に鞭を打つかのように用意された難関の山岳ステージ頂上ゴールは、予想以上に多くの総合上位の選手たちを苦しめた。しかしそんな中でチーム戦略が見事に機能したチームサンウェブが、ステージ優勝こそ逃したがこれで総合で2位と3位を占め、ライバルたちに大きなアドバンテージを手にした。

©Giro d’Italia
ステージ優勝を果たしたのは、そんなチームサンウェブのウィルコ・ケルデルマンとジェイ・ヒンドリーに便乗したタオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス)、ステージ優勝とチームに大会5勝目をもたらすとともに自らも一気に総合4位まで順位を上げた。
誰もがきついステージになることはわかっていた。しかしそれもまたコース設定の妙であり、昨日の個人TTを踏まえて各チームがどのような戦略で攻めるのか、又は守るのかが注目された。昨日の個人TTで総合2位のケルデルマンとのタイム差をおよそ1分に前広げた総合首位のジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がどこまで本格的な山岳で走れるのか、それも一つの見どころだった。
4つの山岳、そしてゴールは1級山岳への14㎞の上りというハードなステージではまず12名の逃げが決まった。最大で7分差までその差は広がるが二つの山岳を超えた時点で先頭はローハン・デニス(イネオス・グレナディアス)とトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)の二人に絞られる。しかし3つ目の山岳への上りでジョバンニ・ヴィスコンティ(ヴィーニザブ・KTM)が加わる。だがデニスが再びアタックを決め単独で最後の頂上ゴールへと向かう下りへ突入していく。
そのままデニスは単独で頂上ゴールへの上りへと突入するが、後方から追い上げてきたメイン集団は、逃げの残党をすべて吸収し、そしてデニスも飲み込んでいく。しかしデニスはここでゲオグヘーガンのアシストとして最後の仕事をする。

©Giro d’Italia
しかし最も象徴的な動きをしたのは勝利したイネオス・グレナディアスではなくチームサンウェブだった。残り9.5㎞でサム・オーメンとクリス・ハミルトン(ともにチームサンウェブ)がペースを上げると、ヤコブ・フグルサング(アスタナ)、パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング)、昨日の個人TTで一気に総合4位までジャンプアップしたブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツ)が脱落していく。
そしてさらには残り9㎞を切るとヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)も脱落してしまう。そしてハミルトンはさらにペースを上げ、総合リーダーのアルメイダの最後のアシスト、ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、さらにはラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)が残り7.2㎞で脱落する。

©Giro d’Italia
そしてついに先頭集団はヒンドリーとケルデルマン、さらにゲイガン・ハートとアルメイダとなるが、アルメイダは歯を食いしばり、首は起き上がったままでの苦しい走りとなる。徐々に遅れは取るものの、アルメイダは根性の走りでタイム差の広がりを最小限にとどめ続ける。徐々に広がりはするものの長丁場のレース経験の全くない新人のアルメイダと先頭との差は残り2㎞で32秒、まだケルデルマンがマリア・ローザを逆転するには至らない。そしてそのままゴーまでアルメイダは歯をくいしばって耐えしのぎ、ケルデルマンから35秒差で何とかゴールし、ケルデルマンが獲得したステージ2位のボーナスタイムを合わせても、まだ15秒差を保って総合リーダーの座を守り切った。

©Giro d’Italia
ステージ優勝はゴール前で余裕の加速を決めたゲイガン・ハート、そしてケルデルマンがその2秒後、ヒンドリーがさらにその2秒後に入った。ステージトップ3に入った選手がそれぞれ総合でもゲイガン・ハートが4位、ケルデルマンがそのままの2位、ヒンドリーが3位となった。
「この勝利は亡くなった元監督に捧げるよ。いろいろあった今シーズン、うちのチームはツールでは全くダメだったし、その後もジロではいきなりエースを失ったしね。でもこうして今大会15ステージで5勝、グレナディアス魂を見せているだろ。」ゲイガン・ハートはチームスピリットを示した。

©Giro d’Italia
またなんとか総合リーダージャージを守り抜いたアルメイダは、「そりゃ嬉しいよ。チームメイトたちのサポートもあって何とかマリア・ローザを守り抜けたよ。僕らより強い選手たちがいたし、彼らにはかなわなかったよ。遅れた最初の1~2㎞は何とか追いつけるかなと思っていたけど、そこから先は現実はただ耐えしのぐだけになったよ。もうあとは意地と根性で何とかジャージを守りたい一心で走り続けたよ。」と語った。このステージではアルメイダは誰もの予想をはるかに上回る走りを見せたと言えるだろう。
ジロ・デ・イタリア第15ステージダイジェスト

©Giro d’Italia
ジロ・デ・イタリア第15ステージ順位
1位 タオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス) 4h58’52”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +02”
3位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +04”
4位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +37”
5位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’22”
6位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +1’29”
7位 ジェームス・ノックス(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’36”
8位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン)
9位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ)
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 59h27’38”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +15”
3位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +2’56”
4位 タオ・ゲイガン・ハート(イネオス・グレナディアス) +2’57”
5位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +3’10”
6位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +3’18”
7位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +3’29”
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング) +3’50”
9位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +4’09”
10位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +4’12”
H.Moulinette