ジロ・デ・イタリア第13ステージ:スプリンター勢脱落で総合勢中心のスプリントバトルに!ウリッシが今大会2勝目、マリア・ローザのアルメイダがステージ2位でボーナスタイム獲得
時にレースは予想外の展開を生み出すことがある。それがレースが生き物であるといわれる所以でもあり、そして面白さでもある。スプリンターたちの競演になるかと思われたステージは、ゴール間近のアップダウンでまさかのスプリント勢ほぼ分断壊滅状態、その結果、総合勢を中心としたメンバーでのスプリントが最後に待っているという予想外の展開となった。その分断を巻き起こした張本人は、ゴールラインでもきっちり勝利を決めて見せた。
これでディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ)は積極的な動きで今大会2勝目のステージ勝利、これでジロ・デ・イタリア通算8勝目を挙げた。
192㎞の長丁場のレースは後半に二つの4級山岳がある。最大勾配20%の区間もあるが、スプリンターチームにとってはこなせないものではなく、パンチャーやアタッカーのようなクラシック系ライダーたちに注意をしていればいいはずのステージだった。。
この日の逃げが決まるには約30㎞を要した。先日まで総合トップ10に名を連ねていたハーム・ファンホッケ(ロット・ソウダル)ら7名が逃げたが、その差は大きくは広がらない。最大でも3分弱と容認されたというよりは、先頭で泳がされている状態が続く。
先頭グループはその多くはないアドバンテージのままレース後半へと突入、その背後では残り33.5㎞の山岳でピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)がライバルたちに揺さぶりをかける。それにより先頭手段との差は一気に45秒にまで縮まる。このアタックでボーラ・ハンスグロエはグルーパマFDJのエーススプリンターでもありポイント賞ジャージを着用する最大ライバルのアルノー・デマール(グルーパマFDJ)を脱落させることに成功する。
さらに頂上からのくだりでボーラ・ハンスグロエはさらなる攻めの姿勢を見せ、集団は一気に30人ほどまで減ってしまう。しかしここには総合系の選手たちはきっちりと残っている。デマールを懸命にメイン集団復帰させようとグルーパマFDJは懸命の追走で、二つ目の山岳手前で何とか合流に成功する。しかし勾配10%が2㎞続く上りは、最初の山岳に比べては容易だったはずだが、スプリンターたちにとっては致命傷となってしまう。
先頭では逃げが2人まで減っていたが、その背後でウリッシがペースアップし先頭集団を飲み込んでいくと、さらにタオ・ゲオゲヘーガン(イネオス・グレナディアス)、ルーベン・ゲレイロ(EFプロサイクリング)、そしてジェームス・ノックス(ドゥクーニンク・クイックステップ)が積極的にペースを上げる。そしてそのままドゥクーニンク・クイックステップがが主導権を握り、一気に加速、それによりサガンとデマールらがまとめて置き去りとなる。さらにそこからのテクニカルな下りで今最も脂の乗り切ったスプリンターたちはなすすべがない。
先頭は総合トップ10を含む20名ほどに絞られる。エリア・ヴィヴィアーニ(コフィディス)やベン・スイフト(イネオス・グレナディアスといったスプリンターたちは残ったものの、今シーズン結果が出ておらず勢いはない。そうなればなんとしてでも先着してボーナスタイムを稼ぎた総合系が激しくぶつかあう。アシストの人数を残していたドゥクーニンク・クイックステップが優位に立つ。
その背後では追走のサガングループに対してデマールはさらに遅れを取ってしまう。これでこの両者のポイント賞狙いのこの日のバトルは終わってしまう。
ゴールスプリントに向け総合リーダーのマリア・ローザを着用するジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が勝負を狙いチームメイトのミケル・ホノレ(ドゥクーニンク・クイックステップ)の背後に陣取る。そして残り400m左コーナーを抜けると一気にスプリントが始まる。最後は僅差となったがウリッシが勝利、アルメイダは2位に入りライバルたちとの差を広げることに成功した。またステージ3位のパトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ)はあと一歩まで迫った勝利を逃したことに悔しさをにじませ、ハンドルを叩いた。
「うまく上りで仕掛けられたね。あれでスプリンターを削れたのが大きかったよ。正直上りでのあのペースはかなりきつかったんだ。でもマクナルティーがうまくその後をフォローしてくれたんで助かったよ。正直このジロで2勝目を挙げられるとは思っていなかったよ。」ウリッシは勝負をそう振り返った。
ステージ2位に入り、ライバルたちとのタイム差を広げたものの、アルメイダは不満そうだった。「正直がっかりだよ。今日はチームメイトたちがしっかりと仕事をしてくれたから、勝たなければいけなかったんだよ。勝ちは逃したけど、総合という意味ではこのボーナスタイムは大きいね。」まだ22歳のネオプロだが、アルメイダの言葉には貫禄が出始めている。
ジロ・デ・イタリア第13ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第13ステージ順位
1位 ディエゴ・ウリッシ(UAEチームエミレーツ) 4h22’18”
2位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ)
4位 タオ・ゲオグヘーガン(イネオス・グレナディアス)
5位 ミケル・フロリッヒ・ホノレ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位 セルジオ・セミティア(モビスター)
7位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ)
8位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン)
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)
10位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 49h21’46”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +40”
3位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +49”
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング) +1’03”
5位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +1’07”
6位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +1’17”
7位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +1’25”
8位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’27”
9位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’42”
10位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +2’26”
H.Moulinette