スリリングな石畳のパリ~ルーベはフランスでの新型コロナの感染再拡大で中止に、ジロ・デ・イタリアでは選手の感染拡大で2チーム撤退、警察モトバイクでもクラスター、デ・ヘント「安心感が全くない」
新型コロナの影響がまたヨーロッパで拡大をしている。一時は閉鎖された多くの都市や国で、徐々に感染は収まりつつあったが、ここへきてまた感染が急速に拡大し、その影響がジロ・デ・イタリアやサイクルロードレース全体に及んでいる。特にフランスでは感染者が爆発的に伸びており、日程変更がされたパリ~ルーベなどいくつかのレースの開催地域での感染拡大が再び広がり、それにより中止が決定された。そしてジロ・デイタリアでも感染者が発覚し、選手のみならずチームの撤退にまで発展している。
開催後は選手たちと沿道の観衆を遠ざける措置などが施されてきたが、実際には拘束力のないお願いに過ぎず、どうしても選手と観衆の距離は近づき、マスクなどの予防策を取らない観衆も多く見受けられた。
そういったことから懸念はされていたが、休息日を前にミッチェルトン・スコットのエース、サイモン・イェーツが陽性でリタイアとなったことを皮切りに、休息日の検査で選手とチーム関係者に続々と感染者が発覚、結果として5チームで感染が確認され、ジャンボ・ヴィズマとミッチェルトン・スコットの2チームが大会からの撤退を表明し、さらに複数の選手たちがリタイアとなった。またスタッフに感染者が出たチームも警戒感を強めている。
そして今日になり、同時開催されていたジロ・デ・イタリアのE-バイクイベントの警察のモトバイク隊でも17人が感染していたことが判明、その公表が遅かったことに対して選手たちから大会主催団体のRCSに対しての不満が噴出している。
今大会でも活躍しているトーマス・デ・ヘントは「正直このニュースを聞いた時点で、レースには専念できていないよ。安心感が全くないんだよ。チーム内でもこのままレースの出続けるべきかどうかでみんなで話し合いをしたぐらいだ。別イベントの警察官だったから安全というわけじゃない。同じ主催者、同じコースで行われたイベントで感染者がいるんだよ。」とし、「レースは安全な場所ではなく、集中できない。」と漏らした。
感染者を出した2チームが撤退を決めた半面、残り3チームはそのまま継続して出場をしていることに対しても、選手たちから不満の声が出ている。「濃厚接触者がいるはずなのに、なぜそんなチームの選手たちがまだ走っているのか。」との声が複数聞かれた。
選手たちにとってはアピールの場ではあるが、それと同時に自らが感染すれば、家族にも感染させる可能性がある、という懸念がぬぐえないでいる。実際今現在開催期間短縮で行われているアメリカのメジャーリーグ(野球)でも、MLBを代表するトップクラスの選手たちが、家族へのリスクを理由に今シーズンの出場を辞退している。
実はジロ・デ・イタリアではすでに出場中のEFプロサイクリングから、レースの現段階を持っての早期終了の要望また他チームからも検査の拡充を求める意見書が提出されており、UCIとRCSはそれにこたえる形でPCR検査前に追加で抗体検査の追加を決定した。
様々な対策は取られてはいるが、予想がつかない感染状況の影響はこれからも間違いなくある。果たして今シーズンの残りのレースは予定通り新たなスケジュールで行われるのか、それともキャンセルとなるのか、ブエルタ・ア・エスパーニャを前にヨーロッパに不穏な空気が漂っている。
H.Moulinette