ジロ・デ・イタリア第12ステージ:逃げの二人の明暗くっきり!ナルバエスは勝利、パデュンはメカトラのタイムロス挽回できず2位に終わる、アルメイダは悪天候でもしっかりとマリア・ローザを死守
コロナのパンデミックの影響が選手たちにも波及し始めている中、悪天候の中で行われたレースでは一つのメカトラが勝敗を分けた。もとよりメカトラは勝敗を分けやすいものだが、二人の逃げで、片方にメカトラがあったとき、場合によってはその相手を待つケースもある。しかしこの日のように待てば後続に追いつかれる可能性があれば、選択肢はただ一つ、ゴールまで突き進むことだ。
そんなステージを制したのはレース序盤から逃げつづけたヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス)、最後は独走でチームにフィリッポ・ガンナの2勝に続く今大会3勝目をもたらした。対して一緒に逃げ続けていたマーク・パデュン(バーレーン・マクラーレン)は、残り24㎞でのメカトラで大金星のチャンスを失ってしまった。
204㎞の長丁場は序盤から激しい応酬となった。14人の逃げが決まると、後続のメイン集団とのタイム差は最大で12分以上にまで広がっていく。しかしこの日主導権を握り続けたNTTプロサイクリングがペースを上げると、レース中盤ではそのアドバンテージは約半分にまで減っていく。
先頭ではここからサバイバルが始まり、次々と選手たちが脱落していく。そしてこの日最大の山岳で先頭がナルバエスとパデュンの二人のみとなり、それをサイモン・クラーク(EFプロサイクリング)が追う展開となる。クラークは二人を30秒差で追い続けるがメカトラに見舞われ、一気に差が広がってしまう。
後続の大集団もどんどんと数を減らし、総合勢中心の小集団になるが、それでもNTTプロサイクリングがペースを維持し続ける。しかし雨でぬれた体は体温を奪い、選手たちの体からエネルギーを奪っていく。レインジャケットを着用したり、手足を揺さぶったりして懸命に体温を維持しようとするが、体力の消耗派は激しい。
残り35㎞、先頭の二人は追走に二分半、メイン集団に6分半の差で逃げ続ける。NTTプロサイクリングは、アシストが離脱し、エースで総合4位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング)が揺さぶりをかけるが、疲れた体にはライバルたちを引き離すだけの力はなかった。それでもチームは今大会で一番のアピールをすることに成功した。
そして残り24キロ、先頭の二人の明暗が分かれた。パデュンがメカトラに見舞われ、ナルバエスが単独となる。素早くバイク交換をして走り出したパデュンだが、先行したこのステージの戦友の背中は遠かった。ナルバエスはそのままステージ優勝を飾り、パデュンは沿道のファンに手を振りながらステージ2位となった。クラークはそのまま踏ん張り切り3位でゴールを果たした。
「雨で本当にきつかったステージだったから、その分勝利の味は格別だね。プロ選手にとってはグランツールでの一生は天と地ほどの差があるんだよ。この勝利は亡くなったニコ・ポータル監督に捧げたい。彼が僕がこのチームに加入してからレースのイロハを教えてくれたんだ。」監督への思いがナルバエスを後押しした。
総合争いはジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が素晴らしい集中力を見せる。NTTプロサイクリングのペースアップなどにも屈せず、風格漂う走りでマリア・ローザをキープ、大方の予想に反して、いまだに総合首位をキープしているだけでなく、プレッシャーをはねのけさらなる進化を感じさせている。
「きつかったよ。でもまだ総合リーダージャージを切れていることに感謝だよ。6時間の長丁場に雨と山岳だったからね。とにかくチームには感謝しかないよ。まだこれから数日はさらにきついサバイバルになりそうだけど、僕の脚は好調だよ。」アルメイダは笑顔で語った。また大会短縮が囁かれていることに関しては、「それは僕が決めることではないし、僕はただ一日でも長くこのジャージを着ていたいだけだよ。」と若人らしい言葉で返した。
ジロ・デイタリア第12ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第12ステージ順位
1位 ヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス) 5h31’24”
2位 マーク・パデュン(バーレーン・マクラーレン) +1’08”
3位 サイモン・クラーク(EFプロサイクリング) +6’50”
4位 ジョセフ・ロスコフ(CCCチーム) +7’30”
5位 サイモン・ペラード(アンドロ―二ジョカットリ・シデルメック) +7’43”
6位 ブランドン・マクナルティー(UAEチームエミレーツ) +8’25”
7位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ))
8位 ルーベン・ゲレイロ(EFプロサイクリング)
9位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
10位 タオ・ゲオグヘーガン(イネオス・グレナディアス)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 49h21’46”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +34”
3位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +43”
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング) +57”
5位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +1’01”
6位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +1’15”
7位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +1’19”
8位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’21”
9位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’36”
10位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +2’20”
H.Moulinette