ジロ・デ・イタリア第10ステージ:お待たせしました!サガンがようやく今シーズン初勝利!フグルサングはパンクで痛いタイムロス、クライズワイクは新型コロナ感染でリタイア
グランツールには様々な魔物が待っている。特に今シーズンは今までいなかった新型コロナという魔物が、選手たちとチームを苦しめている。エースのサイモン・イェーツの感染が確認されたミッチェルトン・スコットに続き、休息日の検査でエースのスティーブン・クライズワイクの感染が発覚したユンボ・ヴィズマもチームとしてジロ・デ・イタリアからの撤退を選択する形となった。そしてこの日は、メカトラという魔物が総合優勝候補の一人、ヤコブ・フグルサング(アスタナ)を襲った。ゴールに近かったこともあり、ペースを上げていた総合上位勢の集団から遅れを取り、手痛いタイムロスとなった。
そんな荒れたステージを制したのは、今年も2位コレクターとなっていたピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)、スプリントで勝てないのであれば独走で勝利!とばかりにタイミングを見て逃げ集団から飛び出すと、そのままゴールまで逃げきって見せた。実はサガンにとってジロ初勝利のみならず、この勝利が今シーズン初勝利、新世代の台頭もあり勝利から遠ざかっていた男が、これで一気にポイント賞でもアルノー・デマール(グルーパマFDJ)にも肉薄してきた。
177㎞のこの日のステージを前に、休息日の検査結果を受けて2チームが撤退、さらにマイケル・マシューズ(チームサンウェブ)も撤退、また複数チーム関係者の感染もあり、緊張感が漂う中でのスタートとなった。そしてレースもそれ同様に混沌とした空気の中で始まり、まずはスタートから25㎞で最初の逃げが発生する。
しかしその逃げは吸収され、47㎞で新たな逃げが動き出す。サガンと今大会2勝を挙げている個人TT世界チャンピオンのフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)が上りで抜け出し、そのまま逃げ続ける。これにブリッジすべく多くの選手が追走を開始、55㎞地点で、逃げ職人のトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)など14人が合流する。
しかしサガンが逃げたことで、ポイント賞ジャージを着用するデマール擁するグルーパマFDJが隊列を組んでの猛追を始める。万が一サガンと逃げのメンバーに逃げ切られれば、ポイント賞争いが一気に混沌とするだけに、それを阻止すべく30㎞にわたり追走を続けた。しかし残り88㎞、グルーパマFDJはついに追走を断念し、この日の逃げがようやく容認される形となる。この時点で先頭集団も半数までに減っていた。
ここからステージ後半では山岳ポイントが連続し、それが選手たちをさらにふるいにかける。先頭の逃げ集団では、サガンが中間スプリントポイントを取ると、山岳ポイントをほかの選手たちが奪い合うとともに、逃げ切りを目指した駆け引きが勃発する。その影響もあり残り25㎞では、後続とのタイム差は最大5分以上あったものが一気に45秒にまで縮まっていた。
その背後では総合バトルも勃発し始める。逃げへの追いつくべく総合3位のペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン)が飛び出していく。そのタイミングで総合4位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング)はメカトラで遅れてしまう。
先頭ではサガンとベン・スイフト(イネオス・グレナディアス)が飛び出し、一気にレースはステージ優勝をめぐる争いとなっていく。ビルバオはその差を縮め、先頭から僅か9秒差にまで迫る。ポッツォヴィーヴォはなんと集団復帰を果たすが、代わりに総合7位のハーム・ファンホッケ(ロット・ソウダル)が脱落していく。
そしてこの日最後の上り、サガンが頂上まで1㎞のところで一気に仕掛け単独走行を開始する。スプリンターとはいえ中級山岳程度であれば軽く登れる馬力を持つサガンは、スプリンターのスイフトとの協調と勝負を捨て、一気に自分一人で勝負を決めに行く。サガンは単独で頂上を超えると、それに続いて12秒差でビルバオ、さらに総合リーダーのジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)ら総合系がサガンに25秒遅れで通過する。
しかしこのくだりでフグルサングに不運が訪れる。残り9㎞でまさかのパンク、チームメイトからホイールを受け取り走り出すが、貴重なタイムと共に、アシストを一人失ってしまう。サガンが先頭を逃げる中、わずか13目にまで絞られた総合系の集団は平坦に入っても速度を落とすどころか、さらに上げていく。これにより残り4.5㎞でビルバオは吸収されるが、今度は残り3.5㎞でブランドン・マクナルティー(UAEチームエミレーツ)が飛び出していく。
残り1㎞で後続との差は20秒、サガンは最後まで逃げ続け、独走でガッツポーズを決めた。ようやくの勝利、サガンは安堵の表情を見せた。「ようやく勝てたよ。今シーズンずっと勝利を狙ってきたけど、ことごとく逃してきたからね。表彰台には何度も上るのに、もどかしかったよ。最後の勝利は去年のツール・ド・フランスだったから、1年以上勝てていなかったからね。今日は独走にするつもりはなかったんだけど、あそこで仕掛けなかったら2位や3位を受け入れてしまったことになると思ったんだよ。だから自分のスタイルで行こうと思い仕掛けて、それで勝つことができたんだ。僕が勝てばみんな喜ぶだろ、それもレースであり、僕のスタイルだからね。」サガンは生粋のエンターテイナーだった。
そしてその背後ではマクナルティーが2位に入ると、3位のボーナスタイムをめぐる争いはアルメイダが制し、僅かながらタイム差を広げることに成功した。フグルサングはこの日だけで1分以上のタイムロスで総合11位まで順位を下げ、ファンホッケも2分半のタイムロス、大きく順位を下げることとなった。有力選手たちの大会離脱もあり、総合争いはさらなる混沌を極めそうだ。
ジロ・デ・イタリア第10ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第10ステージ順位
1位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ) 4h01’56”
2位 ブランドン・マクナルティー(UAEチームエミレーツ) +19”
3位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +23”
4位 ベン・スイフト(イネオス・グレナディアス)
5位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ)
6位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)
7位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ)
8位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング)
10位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 39h38’05”
2位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +34”
3位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +43”
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング) +57”
5位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +1’01”
6位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +1’15”
7位 ジェイ・ヒンドリー(チームサンウェブ) +1’19”
8位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’21”
9位 ファウスト・マスナダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’36”
10位 ヘルマン・ペルシュタイナー(バーレーン・マクラーレン) +1’52”
H.Moulinette