ジロ・デ・イタリア第8ステージ:ダウセットがイスラエル・スタートアップネーションにグランツール初勝利をもたらす!逃げ集団から飛び出し個人TTモードで独走!S.イェーツが新型コロナ感染でリタイア
選手たちにとって活躍はそれすなわち契約への可能性を広げるものだ。今シーズンの新型コロナの影響もあり、各チームスポンサーの撤退や、チーム縮小を余儀なくされている中で、来シーズンの契約がいまだに決まらない選手も多い。例年であればこの時期にはどのチームも来年度の選手構成はもう決まっている時期であるにもかかわらず、不透明な部分が多いのが今シーズンが異例なのだ。
そんな来シーズンの契約がない一人がアレックス・ダウセット(イスラエル・スタートアップネーション)が、今シーズンからワールドツアーに昇格した新参チームに、その初年度グランツールのステージ優勝という快挙をもたらした。ダウセット自身はこれが通算2ステージ目の勝利、来シーズンの契約に向け最高のアピールとなった。
第8ステージは序盤から6名の逃げが決まる。大きな勝利がない新興ワールドツアーチームにとっては、積極的に攻めに出たこのステージ、この逃げにダウセットとマテアス・ブランドル(イスラエル・スタートアップネーション)というベテラン二人を送り込むことに成功する。
実力あるメンバーがそろったこの逃げだが、総合に影響がないこともあり、この日はあっさりと容認される。スプリンターチームも昨日の疲れもあり積極的な追走の主導権は握らない。タイム差はぐんぐんと開いていき、最大で10分以上にまで広がる。
メイン集団では残り77㎞で総合上位候補のヤコブ・フグルサング(アスタナ)がメカトラにより遅れを取るが、10㎞を費やしなんとかメイン集団復帰を果たす。残り50㎞を切りまだ先頭集団とのタイムは大きく開いている状態、そうなれば逃げ集団でも動きが活性化する。ダウセットは何度となく揺さぶりをかけ、ライバルたちの脚を削っていく。周回コースに突入すると、その中で唯一の上りでサルバトーレ・プッチオ(イネオス・グレナディアス)とマシュー・ホームズ(ロット・ソウダル)が仕掛ける。この時点では上りが得意ではないブランドルとダウセットは厳しい状況に追い込まれていた。
しかし平坦区間になると地力と独走力のある二人はあっという間に先頭に追い付く。そして残り18.6㎞でまずブランドルが仕掛けると、ライバルたちがこれを潰す。しかしそのカウンターで今度はダウセットが飛び出していく。すると今度は追走が躊躇、ダウセットはそのまま独走態勢へと突入する。TTスペシャリストでもあるダウセットにとっては独走はお手の物、再び上りではタイムを詰められたものの、アドバンテージを活かしきって先頭で頂上を通過すると、また後続を一気に突き放していった。
32歳のベテランは、ここ一番で大きな仕事をやってのけた。「正直言って喜びよりもほっとしたというのが正直なところだよ。これで契約の可能性がようやく見えたからね。現状来シーズンの契約がないから、それがずっと心の中で引っかかっていたんだよ。いつか振り返ったときに、改めてその勝利の価値を感じるんだと思う。チームにとっては歴史的、貴重な勝利になったしね。ブランドルがずっと”諦めるな、まだレースは終わっていない”と励ましてくれたから、追いついて仕掛けることができたんだよ。勝利できたのは僕じゃなくて彼だったかもしれないと思っているよ。父親になるんだけど、自信をもって”自転車選手”であると言いたいからね。だから来シーズンの契約がなくて、不安で押しつぶされそうだったんだよ。これでようやくアピールできたと思うと心底ほっとしたよ。」ダウセットは苦しい心の内、選手という過酷な仕事への思いを切々と語った。
総合勢は大きな動き無くこの日もジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がマリア・ローザを死守、個性派集団でありステージ勝利を狙うのが定石のチームにとって、非常に価値のあるステージが続いている。
また、サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)は新型コロナ感染によりリタイアとなった。
ジロ・デ・イタリア第8ステージダイジェスト
ジロ・デ・イタリア第8ステージ順位
1位 アレックス・ダウセット(イスラエル・スタートアップネーション) 4h50’09”
2位 サルバトーレ・プッチオ(イネオス・グレナディアス) +1’15”
3位 マシュー・ホームズ(ロット・ソウダル)
4位 ジョセフ・ロスコフ(CCCチーム)
5位 マテアス・ブランドル(イスラエル・スタートアップネーション) +2’10”
6位 シモーネ・ラヴァネッリ(アンソロ―二・ジョカットリ・シデルメック) +2’13”
7位 マイケル・マシューズ(チームサンウェブ) +13’56”
8位 フェルナンド・ガヴィリア(UAEチームエミレーツ)
9位 ミケル・ビョルグ(UAEチームエミレーツ)
10位 アンドレア・ヴェンドラメ(AG2Rモンディアル)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 ジョアオ・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 29h52’34”
2位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・マクラーレン) +43”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +48”
4位 ハーム・ファンホッケ(ロット・ソウダル) +59”
5位 ヴィンチェンツオ・ニーバリ(トレック・セガフレド) +1’01”
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(NTTプロサイクリング) +1’05”
7位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +1’19”
8位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ) +1’21”
9位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +1’26”
10位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’32”
H.Moulinette