リエージュ・バストーニュ・リエージュ2020:TDF総合1位&2位、世界選手権1位&3位によるスプリントバトルは、ガッツポーズ決めたアラフィリップが降格処分!ログリッチが勝利!
勝負というのは最後の最後の瞬間まであきらめてはならないし、油断してはならない。勝敗は一瞬、そして結果が全てのレースで、世界チャンピオンに生じた油断と驕りが勝敗を大きく分けることとなった。
最後に笑ったのはツール・ド・フランスで大逆転で総合優勝を逃したプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、グランツールライダー、そしてステージレーサーのみならず、クラシックでも勝利できる究極のオールラウンダーであることを証明して見せた。
例年であれば残り17㎞、最後の丘で早めに仕掛けが始まるのだが、この日先頭集団に残っていたのは強者ぞろい、それが仕掛けを大きく遅らせることとなる。トム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ)が強烈な引きでペースを上げ、アタックを許さない。それにより一気に集団はふるいにかけられ、クラシック勝利経験者やグランツール上位経験者が先頭付近でずらりと顔を並べる。
デュムランが外れると、仕掛けたのは予想通り世界チャンピオンの証アルカンシエルを着用したジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。しかしそれにすぐに反応したのはツールでステージ勝利と総合敢闘賞を獲得し、世界選手権で3位表彰台、先日のフレッシュ・ワロンヌでクラシック初勝利を挙げたマルク・ヒルシ(チームサンウェブ)だった。
そしてそれに一テンポ遅れる形でログリッチ、そしてツール・ド・フランスで総合優勝を飾ったタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、さらには遅れて元世界チャンピオンで今年の世界選手権でも4位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)が続く。
追走との差は大きく広がらないが、駆け引きをしながらでも後続を抑えられてしまうこのメンバーは、そのまま丘を抜け下りに入り、さらに緩斜面の上りへと突入していく。まずはここでクウィアトコウスキーが脱落、しかし残りの4人のペースは一向に衰えない。
後続の集団では、昨日のブリンク・バンクツアー最終ステージで75㎞近くを逃げ続けて大逆転勝利を飾ったマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス)が先頭で追う。しかしその差が縮まり切らないと見るや、マテイ・モホリッチ(バーレーン・マクラーレン)が単独で飛び出していく。
4人は残り1kmを切り完全に県政状態となる。するとぐんぐんと追いついてきたモホリッチが、残り450mで追いつきざまにアタックを仕掛ける。これに反応したのはアラフィリップ、そしてすぐに残りの3人が続く。そして残り200mで一気にスプリントが始まると、アラフィリップはコース左端をかけかがるが、ここで左へと斜行する。これによりヒルシと接触し、ヒルシはバランスを崩しペダルが外れてしまう。そのあおりを食らったのがポガチャル、ヒルシと接触し、二人はともに抗議して手を挙げる。
アラフィリップはそのまま加速、勝利を確信して残り5mでガッツポーズを決めた。しかしがらりと開いたコース右側を猛加速してきたログリッチが最後にバイクを投げ出し先着、自身初のモニュメント制覇を達成した。その後斜行と判断されたアラフィリップは降格処分となり、ヒルシが2位、ポガチャルが3位となった。またそれにより4位にはモホリッチとなり、上位4人中3人をスロベニア選手で占める形となった。
「本当にがっかりしているよ。ようやく興奮が収まってきて、リプレイを見たけど、自分の斜行で起きたことにはまったく気づいていなかったよ。本当にヒルシには申し訳ないことをしてしまった。勝負の機会を奪ってしまったからね。そしてもう一つ、ゴールラインを超える手前でのガッツポーズ、あれで敗北していたらそれこそいい笑いものだったよ。もう二度と同じミスはしないよ。あれで2位になるよりは、降格処分でまだよかったと思えたよ。とにかくチームとヒルシには申し訳ないことをしてしまった。結果が全てだよ。」世界チャンピオンジャージのアラフィリップは冷静に頭を切り替えてそう語った。
「信じられないよ。僅差だったね。今日は勝つことだけを信じていたよ。最後の最後まであきらめない、1㎝でも前に、って思っていたんだよ。モニュメント制覇は僕の人生の目標の一つでもあったんだよ。それが今日達成できて感無量だよ。」ログリッチは笑顔で語った。
リエージュ・バストーニュ・リエージュ2020ダイジェスト
リエージュ・バストーニュ・リエージュ順位
優勝 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 6h32’02”
2位 マルク・ヒルシ(チームサンウェブ)
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
4位 マテイ・モホリッチ(バーレーン・マクラーレン)
5位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・フェニックス) +14”
7位 マイケル・ウッズ(EFプロサイクリング)
8位 ティス・ベノート(チームサンウェブ)
9位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)
10位 ミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)
H.Moulinette