フレッシュ・ワロンヌ2020:ツールで躍進を遂げたヒルシが劇坂ユイの壁を制して勝利!こちらもツールで目立ったコスネフロイが2位、単独逃げのファンセヴェナントは落車で大金星逃す!
開催時期が新型コロナウイルスの影響で大きくずれ込み、秋開催となった今年の「ユイの壁」激坂決戦、大本命と思われた世界チャンピオンになったばかりのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が出場を辞退したことで、その行方は混沌、ドラマチックになるだろうと予測された。そんなしその距離が長かろうとも、勝負は勝ったものが栄冠を手にするもの、その瞬間は残りわずか50mでのドラマとなった。
その予想通り若手が世代交代を予感させる走りで主役を演じ続け、最後はツール・ド・フランスでもステージ優勝を挙げ、総合敢闘賞まで獲得したマルク・ヒルシ(チームサンウェブ)が激坂を制しクラシックまでも制覇した。
レースは序盤から動く。マウリ・ファンセヴェナント(ドゥクーニンク・クイックステップ)、アーロン・ファン・ポーク(スポルトフランデーレン・バロワーズ)、マティス・パーシェンス(ビンゴールWB)、マーロン・ゲイラード(トータル・ダイレクト・エナジー)の4人が飛び出していく。この4人はぐんぐんと後続とのタイム差を広げ、最大で9分差以上にまでその差は広がる。
この日は残り85㎞で周回コースに入り、例年よりも数が増えた丘で、多くの駆け引きが繰り返される。それでも逃げの最後の一人ファンセヴェナントは後続の大集団での駆け引きなどお構いなしに逃げ続け、残り14㎞でまだ1分の差を保っている。丘の頂上越えでベテランのリゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)が抜け出し、集団にわずかながら差をつける。
逃げ続けるファンセヴェナントだったが残り4㎞で悲劇が待っていた。丘への上り口までの下りセクションでまさかの落車、ケガはマシントラブルは免れたが、これで一気にウランに追いつかれてしまう。その後二人は逃げ続けたが、勢いを失い生き残り2㎞で大集団に飲み込まれてしまった。ここでファンセヴェナントのワールドツアー初出場でのクラシック制覇という大金星の夢と快挙は潰えてしまった。
そして残り1㎞、こちらも復活を遂げた大ベテランのリッチー・ポート(トレック・セガフレド)が動き出す。そして残り200mでマイケル・ウッズ(EFプロサイクリング)が一気に仕掛ける。これで勝負ありかと思われたが、ヒルシは虎視眈々と自分の間合いを見計らっていた。残りわずか50mで一気に加速をすると、あっという間に先頭に躍り出て、そのまま余裕のガッツポーズでトップでゴールラインを超えた。そしてヒルシ同様にツールで一躍名を世に知らしめたベノワ・コスネフロイ(AG2Rモンディアル)もヒルシと同じく間合いを見計らってうごくが、ヒルシのパンチ力には及ばなかった。それでも2位でゴールし、若手二人が結果を残し、そして躍動したレースとなった。
「きつかったよ!激坂というより壁だしね。でもそういう時って、皆がペースが落ちるんで、ぎりぎりまで待つのがいいんだよね。でも脚には乳酸がたまっているし後は頭で考えるしかないんだよね。痛みに耐えて、その中でも思考をクリアにもって戦略を練ること、これが勝利のために必要なことだったよ。」勝利したヒルシは冷静かつ大胆だった。
ツール覇者のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)は9位に入り、グランツールのみならず、クラシックでもタイトルを狙えることを証明して見せた。残りのシーズンでのクラシック制覇の可能性が出てきた。
フレッシュ・ワロンヌ2020ダイジェスト
フレッシュ・ワロンヌ2020
優勝 マルク・ヒルシ(チームサンウェブ) 4h49’17”
2位 ベノワ・コスネフロイ(AG2Rモンディアル)
3位 マイケル・ウッズ(EFプロサイクリング)
4位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)
5位 ダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション
6位 ミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)
7位 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグロエ) +05”
8位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド)
9位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ))
10位 サイモン・ゲシュケ(CCCチーム) +10”
H.Moulinette