TDF Stage 17:ロペスが攻めの走りでログリッチを抑えてクイーンステージ優勝で総合3位へジャンプアップ!ポガチャル踏ん張るもログリッチに僅かに遅れステージ3位、総合勢は軒並み苦戦

超級山岳が二つそびえる山岳ステージは、クイーンステージと言われる。それすなわち勝負所であり、総合優勝争いの決定打にさえなりかねない大会で最もハードなステージを意味する。超級山岳はポイントも2倍となるため、山岳賞狙いの選手にとっても貴重なステージではあるが、総合を狙う選手にとってはボーナスタイムもまた貴重となる。そのため安易な逃げ入りはなかなか容認されず、このステージでも総合場を狙うチームが主導権を握り続けた。

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そんなステージを制したのはルイ・アンヘル・ロペス(アスタナ)、小柄なクライマーは表彰台へ向けたライバルの脱落を確認したうえでアタック、総合1位のプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、そして2位のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)をも置き去りにする走りで見事にツール初優勝を飾った。
ステージ優勝を狙う逃げの動きは、この日は容認されることはなかった。しかしそれでもジロ覇者のリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、昨日のステージ覇者レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグロエ)、さらにはゴルカ・イザギーレ(アスタナ)とダニエル・マーティン(イスラエル・スタートアップネーション)という強豪が飛び出していく。しかしミケル・ランダ擁するバーレーン・マクラーレンが集団をコントロール、逃げとのタイム差が大きく開きすぎないようにコントロールし続ける。

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最初の超級山岳をトップで通過したのはカラパズ、そしてその背後ではナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック))らが早くもペースアップしたメイン集団から遅れてしまう。さらにはこの頂上を追走のメイン集団の先頭で通過したポガチャルがバーチャルで山岳賞ジャージを獲得する。
そしてレースは一旦コースが下ると、ついに最後の超級山岳へと突入していく。先頭はカラパズ、アラフィリップ、イザギーレの3名に絞られていたが、ここでカラパズが抜け出し残り9kmで単独先頭となる。後続のメイン集団は人数を減らしながらここでもまだバーレーン・マクラーレンが主導権を握る。
最大勾配24%という劇坂区間もある終盤の上りを前に、先頭集団は逃げの最後の一人カラパズの背後10秒にまで迫るが、ここでバーレーン・マクラーレンのアシストのペースが上がらなくなり、残り5㎞でカラパズとのタイム差は再び45秒にまで広がる。しかし今大会最強山岳アシストが顔を揃えるユンボ・ヴィズマが主導権を握リペースアップを図ると、カラパズとの差は見る見る間に縮んでいく。それと同時に総合3位のリゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)、そしてなんとランダが遅れてしまう。さらにはリッチー・ポート(トレック・セガフレド)、エンリック・マス(モビスター)も遅れだす。

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先頭では満を持してセップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)がアシストを開始、ログリッチを引き連れてぐんぐんと進み、あっという間にカラパズをとらえて置き去りにしていく。そしてウランの遅れを知ったロペスはするすると抜け出しステージ勝利を狙ったクスを追走し、そのままアタック、独走態勢へと持ち込んでいく。クスはもう一度ログリッチのアシストに戻り、ポガチャルを脱落させるべく最後のあがきを見せる。これでわずかながらポガチャルが遅れ、ロペス、ログリッチ、ポガチャルがほぼ等間隔でゴールを目指す形となる。ログリッチは何とかポガチャルとのタイム差を広げようと試みるが、ポガチャルも苦悶の表情を浮かべながら食い下がる。しかしその二人の前ではロペスが淡々とペースを維持してゴールを目指す。
結局ロペスはログリッチに15秒の差をつけステージ優勝、ログリッチもポガチャルに15秒差をつけステージ2位となった。ポガチャルは3位に終わるも山岳賞ジャージを獲得し、ログリッチとのタイム差も何とか射程圏内にとどめた。ステージを制したロペスはこれで一気に総合3位にジャンプアップを果たした。
「この勝利までは遠かったね。この勝利は妻と息子に捧げるよ。長いシーズン家族と離れ離れだけど、彼らのことを忘れたことはないよ。今日のように標高2000mを超えるステージは僕らにはうってつけだったよ。僕にとっては故郷(コロンビア)にいるようなものだからね。」ロペスはコロンビア人の強さの一端を語ってくれた。

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また総合リーダーの座を守ったログリッチは、「馬鹿じゃないかと思うほどきつかったよ。残り4㎞ぐらいからはもう地獄だったよ。ステージ優勝できなかったことは悔しいけど、でも結果には満足しているよ。最大のライバルポガチャルにタイム差をつけられたからね。まあでも十分なタイム差というのはないよ。1秒でも多くタイム差をつけておきたいもんだよ。」とポガチャルへの警戒心を解かなかった。
総合上位ではまたしてもシャッフルが起きたが、気が付けば大ベテランのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)がついにトップ10に顔を出した。
TDF第17ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第17ステージ順位
1位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) 4h49’08”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +15”
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +30”
4位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ) +56”
5位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +1’01”
6位 エンリック・マス(モビスター) +1’12”
7位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +1’20”
8位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
9位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング) +1’59”
10位 トム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ) +2’13”
TDF総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 74h56’04”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +57”
3位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +1’26”
4位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +3’05”
5位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +3’14”
6位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング) +3’24”
7位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +3’27”
8位 エンリック・マス(モビスター) +4’18”
9位 トム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ) +7’23”
10位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +9’31”
H.Moulinette