TDF Stage16:ケムナが逃げ切りでボーラ・ハンスグロエに貴重な一勝をもたらす!総合は小競り合いも大きく動かず、昨日総合脱落のベルナルは、この日も大きく遅れる
今大会まだ未勝利のチームにとっては、残されたステージでいかに勝利するかがスポンサーに対するアピールとなる。スポンサースポーツであるロードレースにとっては、勝利とは対費用効果の一部であり、選手たちは翌年の自らの契約のみならず、スポンサー継続の要請を勝利という形で示すのだ。
第16ステージは、昨日の総合バトルがあったこともあり、逃げ切りの可能性が高いステージ、総合順位の脅威ではない選手たちにとっては格好のアピールの場となる。また山岳賞やポイント賞を狙うものにとっても、ポイントを稼ぎ出す絶好のステージとなった。そんなステージを制したのは逃げ集団から抜け出したレナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグロエ)、何度となく今大会逃げに乗っていた男が、ようやく勝利を射止めた。
このステージでは逃げが決まる前にかなりの時間を要した。断片的に発生する逃げが構成されては分解を繰り返す。そしてこのステージで山岳賞争いは激化を極めることとなる。2017年のU23 世界選手権で、ケムナを下して世界チャンピオンになったベノワ・コスネフロイ(AG2Rモンディアル)は、今大会山岳賞ジャージをここまでキープしているが、このステージでも逃げに乗ることができなかった。
対して山岳賞ジャージを狙うピエール・ローラン(B&Bホテルズ・ヴァイタルコンセプト)はこの日の18名の逃げに乗ることに成功する。ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)やリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)、ニコラス・ロッシュ(チームサンウェブ)、ケムナら強力なメンバーは、後続のメイン集団との差をどんどんと広げていく。ローランが山岳ポイントをトップ通過すると、さらに後続から逃げが合流し、23名にまで膨らむ。
そして逃げ集団は残り60kmで後続のメイン集団に12分以上のタイム差をつけ、逃げ切りが現実的となる。そして残り26km、まずはクエンティン・パシャール(B&Bホテルズ・ヴァイタルコンセプト)が飛び出していく。するとセバスチャン・レイエンバッハ(グルーパマFDJ)、カラパズ、アラフィリップ、ケムナの4名が追走しパシャールをあっさりと捕まると、今度は一番の実力者と思われたアラフィリップがここでついていくことができず脱落する。
残り20㎞で今度はケムナがアタックを仕掛け一発で単独走行へと持ち込む。そのまま残り18㎞の山頂ポイントをトップ通過したケムナは、最後まで追走にその差を詰めさせない一人TT状態でゴール、チームにとって喉から手が出るほど欲しかった1勝をもたらした。
「最高だね。今日は僕の日だったね。今日はステージの最初からずっと勝負だったし、勝つためには独走しかないと思っていたんだよ。カラパズがスピードを緩めたので、これはもう仕掛けるしかないと思って動いたんだよ。あとはもうただひたすら踏み続けただけだよ。とにかくチームとしても一勝できてほっとしているよ。僕自身にとっても今年結果が出ていることは、次につながっていくよ。」成長著しいケムナは、先日のクリテリウム・ドーふぃねに続くプロ2勝目を、ツール・ド・フランスという大舞台でやってのけた。
総合争いでは、昨日7分以上失った昨年度の覇者イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)はこの日も10分以上タイムを失う形となった。背中の痛みに耐えてきたが、緊張の糸が切れ、完全に脱落する形となった。
総合トップ10返り咲きを狙うギヨーム・マルティン(コフィディス)が途中アタックを見せるが最終的には吸収されてしまう。この日もユンボ・ヴィズマのアシスト勢は健在、ゴールまでの上りは仕掛けどころではあったのだが、そこまで複数のメンバーを残すユンボ・ヴィズマは、ハイペースでライバルたちにアタックするチャンスら与えない。揺るがないアシストに守られたログリッチはこの日も安泰だった。山岳賞は同点ながらも、 コスネフロイがルール上の関係でキープした。
TDF 第16ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第16ステージ順位
1位 レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグロエ) 4h12’52”
2位 リチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス) +1’27”
3位 セバスチャン・レイエンバッハ(グルーパマFDJ) +1’56”
4位 パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディウス) +2’34””
5位 サイモン・ゲシュケ(CCCチーム) +2’35”
6位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック) +2’37”
7位 ティス・ベノート(チームサンウェブ) +2’41”
8位 ニコラス・ロッシュ(チームサンウェブ) +2’47”
9位 クエンティン・パシャール(B&Bホテルズ・ヴァイタルコンセプト) +2’51”
10位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +2’54”
TDF総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 70h06’47”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +40”
3位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング) +1’34”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +1’45”
5位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +2’03”
6位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +2’13”
7位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +2’16”
8位 エンリック・マス(モビスター) +3’15”
9位 トム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ) +5’19”
10位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +5’43”
H.Moulinette