TDF Stage 15:総合バトルでスロベニア2強の前にライバル勢打つ手なし、ポガチャルがステージ2勝目!ステージ2位のログリッチがライバル突き放す、昨年覇者のベルナル完全撃沈
ジュラ山脈を駆け抜ける第15ステージは、総合勢のバトルが予測されていた。そしてその通りの激しい駆け引きと展開が待っていたが、山岳アシストの人数とその圧倒的なチームワークと脚質が勝負の行方を大きく左右した。ユンボ・ヴィズマのアシスト勢がライバルたちのアシストを粉砕、そしてエースまでをも脱落させ、総合リーダーのプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)が仕掛ける前に大方の勝敗は決してしまっていた。
しかしそんなステージを制したのは、己の力だけで残っていたログリッチの同胞タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、ログリッチの動きだけを注視し徹底マーク、そして最後にログリッチとゴールスプリントを演じ、今大会ステージ2勝目を挙げて見せた。
この日はスタートから28kmまで逃げが決まらなかったが、最終的には8名が集団から飛び出していく。序盤からポイント賞争いが激しく繰り返される。ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)とサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)がお互いをぴたりとマークし、お互い譲らない姿勢を見せた。
しかしここは山岳ステージ、徐々に総合系のチームがこの日のステージの主導権を握っていく。勝負はこの日最後の山岳ではあるものの、その途中の山岳でいかに労力とアシストを失わないかの勝負でもあるが、総合上位を狙うチームのペースアップに、集団はどんどんと小さくなっていく。
ゴール前最後の一級山岳を先に超えていったのは、逃げのヘスス・エラダ(コフィディス)ピエール・ローラン(B&Bホテルズ・ヴァイタルコンセプト)、ミカエル・ゴグル(NTTプロサイクリング)だったが、後続ではユンボ・ヴィズマのペースアップがさらに早まり、その差は縮まり、もはや逃げ切りは不可能となる。
そして迎えたゴールまでの18㎞にわたる上りでは、すでにステージ2勝を挙げているワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)が驚異の鬼引きアシストを見せる。なんとふもとから10㎞以上にわたりハイペースで延々と引き続けたのだ。これによりライバルたちが次々と脱落していく。その最大の犠牲者となったのが、昨年度の覇者であり、今年も総合3位につけていたイーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)、早々に脱落すると、あとはただひたすらタイム差が広がっていった。そして落車の影響もある総合5位のナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック)もその餌食となった。何とかチームメイトのアシストを受け踏ん張ろうとしたが、こちらも大きくタイムを失う結果となる。さらには上りの麓でまさかのメカトラに見舞われ、追走に時間と労力を費やしたギヨーム・マルティン(コフィディス)も粘り続けたが、最終的には後れを取ってしまう。
ファン・アールトがアシストを終えた時点で、ユンボ・ヴィズマはログリッチに加え、グランツール覇者のトム・デュムラン、ジョージ・ベネット、セップ・クスと4名もの人数を残している。総合8位のミケル・ランダ擁するバーレーン・メリダも3名、総合6位のミゲル・アンヘル・ロペス擁するアスタナが2名、総合10位のエンリック・マス擁するモビスターも2名は残してはいるが、それ以外は各チームのエースしか残っていない状況だ。ポガチャル、リッチー・ポート(トレック・セガフレド)、アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)、リごベルト・ウラン(EFプロサイクリング)はアシストなく、攻めの手札を欠く状態となる。
その中からアダム・イェーツは一度はアタックを見せるも、ゆったりと吸収されると、あとはユンボ・ヴィズマの高速アシストに耐える時間が続く。
グランツール覇者のデュムランをもアシストに使うぜいたくな布陣のユンボ・ヴィズマは、結局クスをほとんど使うことなく残り1㎞に到達、バーレーン・メリダもアスタナもアシストを削られ、エースが丸裸の状態となる。満を持して残り700mでログリッチがアタックを仕掛けると、それに対応できたのはポガチャルのみ、最後はログリッチはポガチャルに勝利を譲るも総合ではライバルたちを大きく突き放すことに成功した。特にベルナルに至ってはこのステージ単独で7分以上のタイムロスとなり、実質総合優勝争いから完全に脱落となった。 ステージ3位のポートは総合6位にジャンプアップを果たし、久しぶりに健脚を見せている。
「ユンボ・ヴィズマのペースは異常な早さだったね。それが難しいステージにしたし、僕はただ耐えしのいでゴール勝負に備えるだけだったよ。でも2勝目が勝ち取れて本当にうれしいよ!とにかくユンボ・ヴィズマが今日準備していたのはわかっていたし、それに対して無駄な仕掛けをすることが無意味になるであろうこともわかっていたよ。ベルナルに何があったのかはわからないけど、誰にでも調子が上がらない日はあるだろ。それを考えると無敵に見えるログリッチでさえ、そんなステージがあるかもしれない。長丁場のレースではなんでも起きうるんだよ。」ポガチャルはステージ勝利を喜びながら、さらなる高みを狙っていることをにおわせた。
これで総合もまたしても大シャッフル、昨日までは総合で1分台遅れに8名がいたが、この日の結果で半減し4名となった。
TDF 第15ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第15 ステージ
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 4h34’13”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)
3位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +05”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +08”
5位 エンリック・マス(モビスター) +15”
6位 セップ・クス(ユンボ・ヴィズマ)
7位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン)
8位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
9位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング) +18”
10位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +24”
TDF総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 65h37’07”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +40”
3位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング) +1’34”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +1’45”
5位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +2’03”
6位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +2’13”
7位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +2’16”
8位 エンリック・マス(モビスター) +3’15”
9位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +5’08”
10位 トム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ) +5’12”
H.Moulinette