TDF Stage 14:見事なサンウェブの波状攻撃!クラー・アンデルセン渾身のアタックから逃げ切り勝利!「12ステージのヒルシの勝利でチームが勢いづいた」とチーム全体への波及効果に言及
勝負の決着に華麗さを求める必要はない。ただあまりにも鮮やかにチーム戦略がハマったとき、その印象は深く人の心に刻まれる。今大会何度となく積極的な動きを見せているチームサンウェブ、決して前評判が高くなかったチームと選手たちが、誰をも驚かせるチームワークと個の力を見せつけている。
波状攻撃とは、言葉の通り、連続して仕掛ける攻撃のこと。ゴールが近くなり、次から次へとチームサンウェブの選手たちが攻撃を繰り返すことで、ライバルチームたちのあいだでは、誰が それを抑え込むべきかで一瞬の躊躇が生まれた。その間隙を縫って仕掛けた最後の一撃でソレン・クラー・アンデルセン(チームサンウェブ)が見事に集団を引き離し、独走で余裕のガッツポーズを決めた。これでチームは今大会2勝目、きっちりと結果を残している。
この日のボーラ・ハンスグロエの作戦は明確だった。先日のステージで降格処分となりポイントとポイント賞ジャージを失ったピーター・サガン(bp-羅・ハンスグロエ)のポイント賞ジャージ奪還のために、最大ライバルであるサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)と、もう一人の危険因子マッテオ・トレンティン(CCCチーム)を脱落させることだった。この日の逃げの追走とは関係なくチームは山岳ポイントで加速、ライバルたちを振るい落とすことに成功する。
しかしトレンティンはサガングループへと復帰、すると今度はCCCがボーラ・ハンスグロエと協調、ベネット復帰を阻むべくペースを上げていく。ドゥクーニンク・クイックステップもベネットを復帰させるために猛追を見せるが、CCCのペースの前についにベネット復帰作戦をあきらめることとなった。それと同時にレース中盤にこの日のステファン・キュング(グルーパマFDJ)の逃げも終わりを迎えた。
これで残りはサガンがポイントを量産すること一点に絞られることとなる。しかしそれ以外にこのステージ勝利を狙っていたのはチームサンウェブだった。今大会何度となくゴール前で見事なトレインを形成しながらも勝利には届いていなかったが、マルク・ヒルシ(チームサンウェブ)が何度となく果敢な大逃げで勝利を挙げたことで、チームは勢いづいていた。
激しく主導権争いが繰り広げられ、集団のペースは高いままで徐々に人数が削られていく。すると残り11kmでまずティス・ベノート(チームサンウェブ)が仕掛ける。これにもう一人加わるが、結局残り7.4㎞でつかまってしまう。するとこれにカウンターでレナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグロエ)とトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)がアタックを仕掛ける。さらにこれにジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)も加わり決定的な動きになるかに思えたが、これもまた集団が引き戻す。すると残り3.8kmでヒルシがアタックを仕掛ける。
独走力のある選手たちのアタックに集団はうまく対応してきたが、すでにステージ勝利で実力を見せているヒルシの危険度を踏まえ、集団は即座につぶしにかかる。それこそが罠だった。わずか800mほどでとらえられたヒルシだが、それを狙いすましたかのようにクラー・アンデルセンがアタック、この勢いに誰も反応さえできない。そして追走を誰がするのかで一瞬お見合い状態となる。
残り距離が短い中での子の躊躇は集団にとっては致命傷となった。独走力のあるクラー・アンデルセンは躊躇なく踏み続け、あっという間に10秒以上のタイム差を集団につけてしまう。すると集団に残ったサンウェブ勢が追走を阻むかのように集団先頭に出て、追走が発生しないようにアンカーの役割を果たす。これで勝負あり、クラー・アンデルセンは余裕でゴール、チームはこれで今大会2勝目を挙げた。
「言葉に表せないよ!この勝利を夢見てきたし実際に勝利するまでは自分が勝利に値するとは思ってもいなかったからね。ただ驚きと感動でいっぱいだよ!今日は脚が回っていたんだけど、それはほかの選手も一緒だろうと思う。自分が調子が良くても、ライバルたちもそうだろうしね。チームはヒルシの勝利でモチベーションと勢いがついたんだよ。あれで自分たちのやっていることが間違っていないと確信し、自信がついたんだよ。若者の勢いは本当にすごいね、僕もその影響をもろに受けたよ。」クラ―・アンデルセンは自らの勝利を喜ぶとともに、若手の勢いがチームに波及したことを語った。
追走の集団ではサガンが最大ポイントを獲得すべく動くが、アタック潰しで自らから足を消耗していたために伸びず、結局ステージ4位に沈んだ。ルーカ・メズゲック(ミッチェルトン・スコット)がステージ2位、シモーネ・コンソーニ(コフィディス)がステージ3位に入った。総合順位に変動はなかった。
TDF第14ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第14 ステージ
1位 ソレン・クラー・アンデルセン(チームサンウェブ) 4h28’10”
2位 ルーカ・メズゲック(ミッチェルトン・スコット) +15”
3位 シモーネ・コンソーニ(コフィディス)
4位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)
5位 キャスパー・フィリップ・ペデルセン(チームサンウェブ)
6位 ジャスパー・ストゥーヴェン(トレック・セガフレド)
7位 マッテオ・トレンティン(CCCチーム)
8位 オリビエ・ナーセン(AG2Rモンディアル)
9位 ソニー・コルブレッリ(バーレーン・マクラーレング)
10位 マルク・ヒルシ(チームサンウェブ)
TDF総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 61h03’00”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +44”
3位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +59”
4位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング) +1’10”
5位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +1’12”
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +1’31”
7位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +1’42”
8位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +1’55”
9位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +2’06”
10位 エンリック・マス(モビスター) +2’54”
H.Moulinette