TDF Stage 11:最強4人によるハイレベルスプリント!制したのはユワン!サガンが僅差でベネットを下し2位も危険行為で降格処分に!危険と隣り合わせのスプリントにUCIの決断

スプリントバトルというのはいつ見ても迫力があり面白い。スプリントは純粋に「個」の力も求められるが、最終局面までの間に「チーム力」も問われるまさにチームスポーツの醍醐味を感じさせてくれる。しかし肉弾戦となるスプリントでは必ず危険は伴うもの、落車の多くがゴール前で発生する。限られたコース幅の中で4人がひしめいたこのステージでは、コースバリアぎりぎりを駆け上がったピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)が、その内側にいたワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)に対して危険なショルダーチャージ(かちあげ)があったとして順位とポイントがはく奪、このステージでの降格処分という判断が下された。

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そんなステージを制したのは”ポケットロケット”カレブ・ユワン(ロット・ソウダル)、低い姿勢からの加速で4つ巴となったゴール勝負で、バイクを大きく投げ出して僅差の先頭でゴール、今大会2勝目を手にした。めったに見ることができない4者横並びのスプリント、サガンの降格処分はあったが見ごたえのあるスプリントとなった。
この日はマシュー・ラダニュー(グルーパマFDJ)がスタート直後から単独逃げとなり、そのまま残り43㎞まで逃げ続けた。この日はスプリント日和、各チームがスプリント勝負を目指して隊列を組む。各チームスプリントへ向けた主導権争いをしながらも、総合系のチームは危険回避のために集団前方に位置取るなど、激しい駆け引きが行われながら進む。

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しかし残り7kmでルーカス・ポステルベルガー(ボーラ・ハンスグロエ)がアタックを仕掛けると、ボブ・ユンゲルスとキャスパー・アスグリーンのドゥクーニンク・クイックステップ勢がこれに反応、3人は懸命の逃げを見せ、これにより追走も一気に慌ただしくなる。この時点での逃げ切り勝利など許すまいとして後続の集団は懸命にこれを追走、そして残り2kmで最後まで残っていたユンゲルスも飲み込まれていく。
そして勝負はゴールまで1.6kmの直線コースへと持ち込まれる。残り250mで動いたのはワウト・ヴァン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)、視野が開けてしまい前に出された形となったことで、そのまま早めにスプリントを開始する。この時点でユワンはまだ後方、サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)はこれに遅れてタイミングを見てコース真ん中でスプリントを開始する。サガンは多選手の脇をすり抜け、狭いコースバリアとファン・アールトの間に突っ込んでいき、こじ開けようと左肩でファン・アールトをかちあげる。これにファン・アールトは驚いた表情を見せ、体が起き上がってしまう。
その左をベネットが駆け上がるが、その背後を撮ったユワンがさらに左へと展開、誰よりも早くバイクを投げ出し、ステージ2勝目を挙げた。その脇と奥ではベネットとサガンもバイクを投げだし、タイヤ一本分サガンが先着しステージ2位、ベネットが3位となった。ファン・アールトは最後まで踏んだがステージ4位となった。ゴール後にファン・アールトとサガンが激し舌戦を繰り広ロげ、周囲は騒然とする。
しかしこの後にサガンのショルダーチャージ(かちあげ)がUCIが規定する危険行為に当たるとして降格処分となってしまう。この判断には賛否両論が出ており、「スプリントとはそういうものだ」と擁護する声もある中で、サガンらの背後にいたスプリンターたちの声が一番的確かもしれない。「もしあれでファン・アールトがバランスを保てずに落車していたら、僕らは巻き添えになっていたのかと思うとぞっとする。」

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「入り乱れての大混戦のスプリントだったね。残り1kmを切って、一旦は前に出すぎてしまったんで少しペースを落としたんだよ。自分の間合いまで我慢するのが勝利への近道だと学んだからね。昨日は本当に勝ちたかったけど勝てなかったから、きょう勝ててよかったよ。チームメイトたちに恩返しができたからね。バイクを大きく投げ出した時は、顔が下を向くから正直誰が最初にゴールしたかはあまりわからないんだよね。でも何となく雰囲気で勝ったことはわかるんだよね。これで2勝目、あとはシャンゼリゼでの勝利が欲しいね。でもその前に山を完走しないとね。」ユワンは笑顔で語った。
今大会すでに2勝を挙げている渦中のファン・アールトは、「僕はまっすぐに走っていたんだよ。まさかあの狭い隙間にねじ込んでくるとは思わないし、弾かれたときに恐怖感を感じて体が起きてしまったんだよ。思わずゴール後に罵りあいとなってしまったよ。」ファン・アールトは状況をそう説明した。
後味が悪い形となってしまったが、裁定は下っており、サガンにとっては8度目のポイント賞ジャージがだいぶ苦しくなってきた。
TDF第11ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第11 ステージ
1位 カレブ・ユワン(ロット・ソウダル) 4h00’01”
2位 サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 ワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)
4位 ブライアン・コカード(B&Bホテルズ・ヴァイタルコンセプト)
5位 クレメント・ヴェントゥリーニ(AG2Rモンディアル)
6位 マッヅ・ペデルセン(トレック・セガフレド)
7位 ルーカ・メズゲック(ミッチェルトン・スコット)
8位 ユーゴ・ホフステッター(イスラエル・スタートアップネーション)
9位 オリビエ・ナーセン(AG2Rモンディアル)
10位 ライアン・ギボンス(NTTプロサイクリング)
TDF総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 46h15’24”
2位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +21”
3位 ギヨーム・マルティン(コフィディス) +28”
4位 ロメイン・バルデ(AG2R) +30”
5位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +32”
6位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)
7位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +44”
8位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +1’02”
9位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +1’15”
10位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +1’42”
H.Moulinette