TDF Stage 10:ベネットが完璧なスプリント勝利!リードアウトがギリギリまで引っ張って発射で念願のツール初勝利!ポイント賞ジャージも再奪取!総合2位、3位のポガチャルとマルティンが落車

自転車というのはチームスポーツである。それを最も感じさせるのがスプリントだ。同じ過ちは繰り返さないとばかりにリードアウトのタイミングを変えることはよくあるのだが、それを実行に移せるのは並大抵のことではない。だがそれをあっさりとやってのけるのがチーム力だ。今大会ここまで2位、3位、4位と紙一重で勝利を逃してきた男がこのステージでその頂点に立った
今大会序盤のステージで勝利を逃したサム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)、その時の敗因をきちんとチーム内で見直し、戦略を立て直してきた。それにより完璧なリードアウトから、満を持しての発射、そのまま勝利という筋書通りの勝利でツール・ド・フランス初勝利、これでブエルタ、ジロでのステージ勝利と合わせ、すべてのグランツールでのステージ勝利を達成した。そしてポイント賞争いでもステージ3位に入ったピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)からポイント賞リーダージャージを奪取することに成功した。

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休息日明け、新型コロナウイルスのテストの結果を受けて全員が晴れてスタートラインに並んだが、この時点ではこのステージがまたしても落車のオンパレードになるとは思ってもいなかっただろう。この日は2名の逃げが発生したが、スプリントステージに持ち込みたいドゥクーニンク・クイックステップとロット・ソウダルが集団をコントロール、ハイペースでレースが展開していくこととなった。
集団内では落車が何度も発生、総合2位のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)に加え、総合3位のギヨーム・マルティン(コフィディス)までもが落車に巻き込まれるが、幸いにも二人ともすぐにレースに復帰し、事なきを得た。
逃げは吸収されるが、この日は横風に加え、複雑に何度も繰り返される細い路地と鋭角なコーナーが選手たちをより神経質にさせた。各チーム無駄な落車に巻き込まれまいとポジショニングのために隊列を編成し、位置取り争いは激しくなる。そうなれば当然落車は繰り返されることとなる。
この日残り16㎞で迎えるのは大きな橋、長さ2㎞以上にわたり選手たちは風にさらされ、この区間の風向きから分断が予想された。強風の情報が入ると、選手たちの位置取りはさらに激化、端に到達することなく集団は分裂を始めてしまう。さらには橋手前のコーナーとロータリーでの位置取りが激化した。するとまたしても落車が発生、総合3位のマルティンはここでも落車に巻き込まれるが、またしてもチームメイトたちのサポートで橋に差し掛かるギリギリで隊列に復帰する。

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さらに加速する主導権争いの中で、ゴールが近づくとその存在感を示したのはチームさんウェブだった。チームのエース、シース・ボルのために完璧に近い隊列を組んだのだが、高速カーブ連なるコースにボルは埋もれていってしまう。代わりにそのサンウェブトレインを利用したのがドゥクーニンク・クイックステップ、隊列に便乗するとそのまま最後のリードアウト、ミカエル・モロコフ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がベネットをけん引してなんと残り200mを切っていく。ここまでのステージで早めに仕掛けてカレブ・ユワン(ロット・ソウダル)らに敗北していたことを踏まえ、発射をぎりぎりまで粘り続けたのだ。
ユワンは完全にベネットマークで動かず、これが功を奏する形となった。残り150mを切ってスプリントを開始したベネット、もはやユワンにそれをかわす時間は残されていなかった。あっという間にゴールラインが迫り、ベネットがガットポーズを決めた。しかしこの時点でベネットはバイクを前に投げ出しておらず、ユワンに逆転されたかもしれないという可能性が頭をよぎり、勝利に確信がなかったようだ。その後の正式発表を受けて勝利を確信することとなった。

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「バイクを投げ出すのを忘れて、しまった!やられたかもしれない!って思ったんだ。最悪泣きじゃくる羽目になるかと思ったけど、勝利のアナウンスを聞いて喜びが爆発したよ。チームには本当に感謝したい!」喜び溢れる男の眼には涙があった。
ステージにはユワン、そして3位にはサガンが入った。総合勢は最終的には変動なくこのステージを終えた。
TDF第10ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第10ステージ
1位 サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ) 3h35’22”
2位 カレブ・ユワン(ロット・ソウダル)
3位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)
4位 エリア・ヴィヴィアーニ(コフィディス)
5位 マッヅ・ペデルセン(トレック・セガフレド)
6位 アンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネーション)
7位 ブライアン・コカード(B&Bホテルズ・ヴァイタルコンセプト)
8位 シース・ボル(チームサンウェブ)
9位 ジャスパー・ストゥーヴェン(トレック・セガフレド)
10位 ルーカ・メズゲック(ミッチェルトン・スコット)
TDF総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 42h15’23”
2位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +21”
3位 ギヨーム・マルティン(コフィディス) +28”
4位 ロメイン・バルデ(AG2R) +30”
5位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +32”
6位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)
7位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +44”
8位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +1’02”
9位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +1’15”
10位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +1’42”
H.Moulinette