TDF Stage 9:スロベニア勢躍動!ポガチャルがステージ勝利、ログリッチが2位で総合リーダーに!ヒルシュは逃げ切り一歩及ばず、それでも諦めずスプリント参加で3位

激動のステージ、総合上位勢のエース同士がぶつかり合うステージは大会後半の山岳ではよくみられる光景だ。しかし最近の大会では中盤でもそのようなバトルがみられることが多くなった。アシストの削りあいからの直接対決で一気に本格化するのだ。中盤戦にして心折られるエースとチーム、それも長丁場のステージレースならではだ。

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直接対決でこの日も積極的に動いたのは、おとといのステージで横風区間でタイムを失ったタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、昨日の山岳ステージでの頂上ゴールで攻めた男は、この日も攻めの姿勢を貫いた。そしてライバルとの駆け引きをしながらも攻撃的な走りでライバルたちを翻弄し続け、最後は少人数でのスプリントも制してステージ勝利を挙げた。
この日の153㎞のステージはスタート直後から激しいアタックの応酬となった。そこで動いたのがマルク・ヒルシュ(チームサンウェブ)や、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)らだったが、この時点では逃げは決まらない。ペースが速く活発なこのペースに、ポガチャルのアシストで元グランツール覇者のファビオ・アルー(UAEチームエミレーツ)は脱落、そのままリタイアとなってしまった。アルーは昨年度受けた腸骨動脈の手術からの完全復帰を目指しているが、まだ以前のような走りができていない。
そして残り90㎞になると、上りでヒルシュがまたしてもアタック、それに伴い9名の逃げが確定する。しかし追走の集団もユンボ・ヴィズマが主導権を握り、ライバルチームの動きに牽制をする。しかしこの逃げも最終的には残り45㎞でヒルシュの単独となってしまうが、タイム差は4分以上ある状態で推移する。

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残り25㎞、一級山岳のふもとでもまだ3分半の差を維持した状態でヒルシュが一人旅を続ける中、後続ではバトルが本格化する。残り21㎞でポガチャルが仕掛けると、一気に局面が動き出す。総合リーダージャージのアダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)は早々と脱落、ここから苦しい展開を余儀なくされる。そして総合バトルはここで一気にポガチャル、プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン)、イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)に絞られていく。そして追走には、ロメイン・バルデ(AG2Rモンディアル)、ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック)、リッチー・ポートとバウク・モレンマ(共にトレック・セガフレド)、ギヨーム・マルティン(コフィディス)、ルゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)となる。
そのまま1級の頂上を超えるが、ここでポガチャルの不注意でログリッチとポガチャルが接触、あわや両者落車しかねない状況だが何とか双方持ちこたえると、ここからのダウンヒルで逃げ続けるヒルシュとの差はどんどんと近づいていく。そして残り1.5㎞、ついにヒルシュはとらえられてしまう。大金星間近で捕まったが、それでもヒルシュは勝利をあきらめなかった。
ゴールスプリント勝負となった5名の中から、ヒルシュは真っ先に飛び出していく。それをマークしていたポガチャルはそれを捉えきっちりと差し切りステージ勝利を挙げた。ログリッチ持つ層を仕掛けゴールライン直前でヒルシュを交わしステージ2位、これで総合リーダージャージを奪取することとなった。ヒルシュは最後まで粘りを見せたが、ステージ3位に終わったが、大きな印象を残した。

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「凄いステージだったね!クレイジーだよ!勝利できたなんて信じられないよ!きょうの勝利はチームメイトのおかげでもあるよ。とにかく勝ててよかった!できれば失ったタイムをもっと奪い返したかったんだけど、でも結果的に総合順位は上がったし、ステージ勝利での10秒のタイムボーナスが大きいね。ログリッチはもうすでに多くの結果を残してきている。僕もそれに続きたいね。スロベニアの歴史に二人で名を残していきたいよ。」ポガチャルは勝利とともに、スロベニア勢によるワン・ツーフィニッシュを喜んだ。
これで総合リーダーに躍り出たのはログリッチ、「これ(総合リーダーの証マイヨ・ジョーヌ)が欲しかったんだよ、最高の気分だね。選手のだれもがこのジャージを夢見るんだよ。そしてこのジャージは僕だけのものではなくてチームのものでもある。チーム力なしに、このジャージは得ることができなかったよ。」ログリッチは感慨深くそう語った。
この日大いに目立ったヒルシュだが、「勝利できなければ意味がない」としながらも、「自分の可能性を示すことができた。」と一定の満足感を見せた。
TDF第9ステージダイジェスト
ツール・ド・フランス第9ステージ
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 3h55’17”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)
3位 マルク・ヒルシュ(チームサンウェブ)
4位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
5位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン)
6位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド) +11”
7位 ギヨーム・マルティン(コフィディス)
8位 ロメイン・バルデ(AG2R)
9位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド)
10位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)
TDF総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 38h40’01”
2位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +21”
3位 ギヨーム・マルティン(コフィディス) +28”
4位 ロメイン・バルデ(AG2R) +30”
5位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +32”
6位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)
7位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +44”
8位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +1’02”
9位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +1’15”
10位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン) +1’42”
H.Moulinette