TDF Stage 8:ピーターㇲが逃げ切りの大金星!プロ2勝がジロとツールの「持っている」男!ポガチャルが昨日の遅れを挽回!総合勢は激しく競り合うも大多数は大差つかず

良い日もあれば悪い日もある、それがステージレースのむつかしさでもあり、ロードレースの醍醐味だ。昨日大きくタイムロスをしたかと思えば翌日に挽回、そんなこともまた勝負のあや、そしてもう一つ明暗を分けるのはコールのアップダウンだ。上りで大きくタイム差がつくのはよくあることだが、昨今の高速化するレースでは下りも「攻め」スポットとなっており、下りの速さが勝敗を分けることも多くなった。この日のステージ勝利を目指すバトルはまさにそのくだりで明暗が分かれる形となった。

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この日ステージ勝利は逃げの面々に委ねられた。そしてその中から飛び出したナンス・ピータース(AG2Rモンディアル)が、時速90kmを超える猛スピードでテクニカルなダウンヒルをこなし、イルヌール・ザッカリン(CCCチーム)を置き去りにし、そのままうれしいツール初勝利を挙げた。これがプロ2勝目、そしてプロ初勝利は昨年のジロ・デ・イタリアでもあり、グランツールという最高の舞台で勝利を積み重ねた。
この日の逃げは13名、そして追走集団の総合リーダージャージを着用するアダム・イェーツ擁するミッチェルトン・スコットの緩いペースのおかげで逃げは最大で16分以上の大きなアドバンテージを手に入れる。その後ユンボ・ヴィスマが主導権を握ると一気にペースが上がり、その差はぐんぐんと縮まっていく。追走集団では激しく分裂と九州が繰り返される中、超級山岳への上りでティボー・ピノ―(グルーパマFDJ)が脱落、初日の落車の影響が尾を引いているのか顔色すぐれないエースはズルズルと遅れていく。

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逃げ集団ではピータースとザッカリンが抜け出し、一騎打ちの様相を呈していた。しかし超級山岳からのくだりに入ると状況が一変する。ピータースがテクニカルな下りセクションで90㎞以上の高速で安定して攻めるのに対し、下りで過去にジロ・デ・イタリアで落車し30m近く宙を舞って大怪我をした経験のあるザッカリンはよろけながら懸命の追走を見せるが、その差は歴然、一気に明暗が分かれる。ザッカリンは下りきってからの1級山岳の上りで何とか追いつこうと必死の走りを見せるが、独走状態となりアドレナリンでまくりのピータースンも衰えないペースの前にその差はなかなか縮まらない。
後続の集団も1級山岳に入ると、まずはジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンククイックステップ)が残り15kmで揺さぶりのアタックを仕掛けるが、その後そのまま遅れていく。代わりに総合上位のプリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ)、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、そしてナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック)が飛び出し、それをイーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)、ギヨーム・マルティン(コフィディス)、リごベルト・ウラン(EFプロサイクリング)、アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)、ルイス・アンヘル・ロペス(アスタナ)、ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン)ら各チームのエースが追走する形となる。この時点で総合争いは、各チームのエース同士のバトルへともつれ込む。そしてさらにリッチー・ポート(トレック・セガフレド)、ロメイン・バルデ(AG2Rモンディアル)らがそれを追走する。

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ピータースはザッカリンに追いつかれることなく最後まで踏み抜き、最後は観衆を盛り上げながらうれしい大金星を挙げた。「ツールでのステージ勝利は夢だったんだよ!もう気が狂いそうなほどに嬉しいよ!正直ザッカリンのほうが上りでよかったので、できることをやろうと思って下りで仕掛けたんだよ。あとは自分自身に「ベストを尽くせ」と言い続けたんだよ。すべてを出しきったよ!」ピータースは喜びを爆発させた。ザッカリンは不得意な下りで集中力と体力を削がれ、さらに2人に抜かれステージ4位に終わった
そして総合争いではその後もアタックと吸収が繰り返される中、ポガチャルが抜け出し独走態勢となる。昨日横風区間の分断で1分21秒のタイムロスを喫したポガチャルは、何とか優勝戦線に復帰すべく単独で仕掛け、そのままゴールまで追いつかれることなかった。結果38秒タイムを取り戻したが、他の有力選手に比べ大きく体力を使う結果となった。

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一時は脱落したAイェーツらも復帰した追走の総合系集団は、最後まで決定打がないままに推移、大きなタイムロスなくステージを終えた。しかし決定打がないという状況から察するに、誰も抜きんでたコンディションに無い可能性が高く、これからのステージでもますます混沌は深まりそうだ。この日総合から脱落したのはエマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)、トム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ)、ただしデュムランんはログリッチのアシストをしており、その結果遅れることとなった。
「デュムランのペースアップでもう脚が回らなかったんだよ。でもそのあとはマイペースで上ることに徹したら、集団全体のペースが下がってきたので救われたよ。」Aイェーツはステージ後そう語った。キンタナは復調の兆しを見せており「いい兆候だよ」と自らのコンディションを説明した。ピノーは「背中の痛みでもう無理だった」と語っており、今大会の主役から脱落した。
TDF第8ステージダイジェスト
TDF第8ステージ
1位 ナンス・ピータース(AG2Rモンディアル) 4h02’12”
2位 トム・スクインス(トレック・セガフレド) +47”
3位 カルロス・ヴェローナ(モビスター) +47”
4位 イルヌール・ザッカリン(CCCチーム) +1’09”
5位 ニールソン・パウレス(EFプロサイクリング) +1’41”
6位 ベン・ヘルマンス(イスラエル・スタートアップネーション) +3’42”
7位 クエンティン・パシャール(B&Bホテルズ・ヴァイタルコンセプト) +3’42”
8位 ソレン・アンデルセン(チームサンウェブ) +4’04”
9位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +6’00”
10位 ロメイン・バルデ(AG2R) +6’38”
TDF総合順位
1位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) 34h44’52”
2位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +03”
3位 ギヨーム・マルティン(コフィディス) +09”
4位 ロメイン・バルデ(AG2R) +11”
5位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +13”
6位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック)
7位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)
8位 リゴベルト・ウラン(EFプロサイクリング)
9位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +48”
10位 エンリック・マス(モビスター) +1’00”
H.Moulinette