TDF Stage 4:今大会初の頂上ゴール決戦を制したのはログリッチ!元シクロ世界王者で今絶好調のファン・アールトが最強アシストとして機能、総合勢は早くも一気に絞られ始める展開に
本格的な山岳ステージではいつでも激しいバトルが繰り返されるともに、多くの選手にとっては運命の分かれ道とさえなる。ここで脱落することで一気に総合狙いからステージ狙いへとターゲットを変えるもの、逆に好調さを発揮してチームのエースへと格を上げるものもいる。山岳ステージは常に気の抜けない休むことのできない緊迫感漂うステージなのだ。
今大会初めての山頂ゴールバトル、当然総合争いは絞られていくことが予想されていたが、ユンボ・ヴィズマの圧倒的なアシストの前にライバル勢のアシストが崩壊、一部総合勢がタイムを失い、一気に総合優勝争いが動き出した。そのダブルエース、プリモズ・ログリッチとトム・デュムランのグランツール覇者2枚看板はその圧力を遺憾なく発揮、最後はログリッチが一気に頂上をトップで駆け抜けた。
この日も昨日同様に、スタート直後に逃げが決まる。6名の逃げに、今大会初出場を決めたイスラエル・スタートアップネーションは2名を送り込み、来シーズンのクリス・フルーム加入へ向け様々なアピールを続ける。しかしそんな逃げも総合リーダージャージを一日でも長く守り続けたいどぅくーにんく・クイックステップの思惑もあり、最大で4分差までしかその差を広げることができない。この日の山岳ゴールを狙う各チームのクライマー及び総合系のチームが追走の手を緩めることなく、常に逃げを手の届く範囲で推移させると、頂上ゴールの最後の上り口までにドゥクーニンク・クイックステップが追撃を主導し、一人を除くすべての逃げをとらえてしまう。
すると今度はユンボ・ヴィズマが主導権を握りペースアップ、最後の一人、クリスツ・ニーランズ(イスラエル・スタートアップネーション)を残り7㎞で飲み込んでいく。しかしそれでも手を緩めない加速に、ライバルチームは徐々にアシストが削られていく。どんどんと数が少なくなっていく先頭集団、ライバルチームも打つてなくハイペースに耐える時間が続く。
総合リーダージャージのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)は、この日の追走で消耗したアシストたちをすべて失ってしまい、一気に孤立無援となる。しかしそれはほかのチームのエースにとっても同様、苦しい展開を余儀なくされる。
そしてシクロクロス元世界王者でもあり、再開後のシーズンでクラシックも制したワウト・ファン・アールト(ユンボ・ヴィズマ)が先頭に出てペースアップを図ると、もはやライバルチームは攻撃の手段を失ってしまう。あまりのハイペースに各チームのエースまでもが削られていき、残り150mでアールトがアシストを外れる段階では先頭集団はわずか16名にまで絞られてしまう。
第2ステージ勝利し総合リーダージャージのマイヨ・ジョーヌを着用するアラフィリップにとっては今大会2勝目のチャンスが転がり込むが、脚を温存してきたログリッチとでは力の差は歴然としていた。ゴール前で失速したアラフィリップは結局ステージ5位に終わり、ログリッチがステージ優勝、そして同胞のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がステージ2位、スロベニア勢がワン・ツーとなった。ボーナスタイムを獲得したログリッチはこれで一気に総合3位へとジャンプアップを果たした。
「毎日レースできることで調子が戻ってきているのを実感しているよ。やっぱりサドルにまたがっているというのはいいね。チームは絶好調だし、あとはこれを継続していくことだけだね。」ログリッチは余裕の表情を見せた。
対して一日でも長く総合リーダージャージをキープしたいアラフィリップは、「結果がすべてだよ。でもまあ総合リーダージャージを今日は守れたし、それはそれで良しとしよう。このまま守り続けていくよ。」と気持ちを切り替えながらも、迫りくるログリッチに半ば諦めにも似た表情を見せた。
このステージではジロ覇者のリチャード・カラパズ(イネオス・グレナディアス)、エンリック・マス、アレハンドロ・バルベルデのモビスターツートップ、ダニ・マルチネスとセルジオ・イギータのEFプロサイクリングコンビ、エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)らがタイムを失う形となった。総合上位を狙える選手たちにとっては、序盤であまりタイムロスはしたくないものだが、すでに苦しい展開へと持ち込まれつつある。
TDF第4ステージハイライト
TDF第4ステージ順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) 4h07’47”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
3位 ギヨーム・マルティン(コフィディス)
4位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック)
5位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)
7位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
8位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)
9位 ミケル・ランダ(バーレーン・マクラーレン)
10位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
TDF総合順位
1位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 18h07’04”
2位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +04”
3位 プリモズ・ログリッチ(ユンボ・ヴィズマ) +07”
4位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +11”
5位 ギヨーム・マルティン(コフィディス) +13”
6位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +17”
7位 トム・デュムラン(ユンボ・ヴィズマ) +17”
8位 エステバン・チャベス(ミッチェルトン・スコット) +17”
9位 ナイロ・キンターナ(アルケア・サムシック) +17”
10位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +17”
H.Moulinette