チームイネオスがツール・ド・フランスメンバーからゲラント・トーマスと来シーズン移籍のクリス・フルームを外す決断、チームのエースはイーガン・ベルナル!ライバルチームは戦略練り直し
様々な憶測が飛び交う中で、最終的にはシーズン終了後にイスラエル・スタートアップ・ネーションへの移籍を決めたクリス・フルームだが、今年のツール・ド・フランスのメンバーから外されることが決まった。チームを去るものにエースを託さない、というのは過去にもよくあったケースではあるが、今回はどうだったのだろう?さらにはもう一人のエース、ゲラント・トーマスもツール・ド・フランスのメンバーから漏れる形となった。
今回の決断の裏には、過密な日程があるようだ。同時に発表されたのが、ジロ・デ・イタリアのエースをゲラント・トーマスとし、ブエルタ・あ・エスパーニャのエースをクリス・フルームとするということだ。これはすべてのグランツールに選手を送り込まねばならないチームにとっては、どれか一つの大会にエース格を集中させずに、すべてのグランツールで同等のエース格を出走させるという作戦だ。そしてさらには、ツール・ド・フランスのエースとなるイーガン・ベルナルのアシストに、急遽2019年度ジロ覇者のリチャード・カラパズを呼び寄せている。
「トーマスにはジロを狙ってもらうことに専念する。ウェールス人として誰も成し遂げていないジロ制覇と合わせとツールに続く二つ目のグランツールを狙わせるのが目的だ。そしてフルームに関しては、ブエルタを狙わせる。フルームはすでに伝説の人となっているが、昨年度の落車による大怪我から復帰してきた立場というものがある。ブエルタで今一度羽ばたく姿を見せらえるように頑張ってもらい、さらなる高みを目指してもらいたい。」
「チーム内に何人もグランツールを狙えるエース格がいるのは嬉しいことでもあるとともに、悩ましくもある。それは、勝てる人間がいるのに勝てなかった、では済まされないからだ。だから一極集中ではなく、あえてすべてのグランツールを狙えるような布陣にしたんだ。」チーム監督はそう経緯を語った。
クリス・フルームは、「正直今シーズンのここまでの僕自身の走りで、役割(ツールでの)を十分に果たせるかどうかは疑問だった。ツールからブエルタに目標がシフトすることで、さらなる調整が必要になるけど、去年のことを考えれば、そのくらいなんでもないし、今走れていること自体に感謝だよ。」と語り、状況を受け入れている。
またゲラント・トーマスも、「ようやくスケジュールが決まったんで、これで専念できるよ。でもまあ2017年に絶好調で迎えたジロで落車リタイアとなったからね。いつかまた狙いたいとは思っていたけど、急にこのタイミングとはね。」と語っている。
ライバルチームも今回の決定には驚きを見せており、各チームのグランツール戦略にも変化が出そうだ。「ツールにイネオスが専念してくると思っていたから、今年のスケジュールではジロとブエルタは正直チャンスが高いと思っていたんだけど、これじゃあうちも選手の配分を考えないとね。」とあるチーム関係者は悩まし気に語った。
どうあれ動き出した今シーズン、グランツールはどんな状況であっても最高峰の称号であることには変わりない。その栄冠を手にするのは誰になるのだろう。
H.Moulinette