コロナウイルスの影響拡大、UAEで選手感染でミッチェルトン・スコットらは3月後半までレース出場自粛、他チームも出場辞退など影響続々、「移動多いチームが感染拡大に寄与してはならない」

コロナウイルスの影響がヨーロッパでもますます拡大している。イタリア政府が暫定的に4月3日までの全てのスポーツを無観客試合にすることを決定、イタリアで開催されるクラシックレースなどが開催の危機に瀕している。まずストラーデ・ビアンケは開催中止が決定された。UAEでは日に日に感染者が増え、現段階で4名の選手たちへの感染も発覚、今後が見通せない状況となっている。
今回の一連の状況を鑑み、アスタナ、ミッチェルトン・スコット、チームイネオスは3月後半までヨーロッパでのレースへの出場をチームとして当面自粛、グルーパマFDJ、ジャンボ・ヴィズマ、EFプロサイクリング、AG2Rはイタリアでのレースを出場自粛を決定している。そしてUAEでレース関係者で感染者がさらに増加したことに伴い、多くの選手やチーム関係者が観察期間として留め置かれていることで、他レースへの出場が困難となり出走断念となるなど、影響は拡大の一途をたどっている。この様にすでに複数のワールドツアー、プロコンチネンタルチームがヨーロッパ全般、イタリアで開催される予定のレースへの出走自粛をすでに公言するなど、各チームが積極的な防護策として、出走自粛を選択し始めた。
あるチーム関係者は、ワールドツアーチーム各位の一致した意見として、「選手たちやチーム関係者の体調はもちろんだが、国間を多く移動する我々が万が一感染すれば、スーパースプレッダーになってしまう可能性がある。そんな状況を悪化させる一因になることだけは絶対に避けねばならない。」と語り、今後も各チームがそれぞれで出走自粛の判断をすることを検討していくようだ。
レース主催者よりも早く各チームが積極的にこのような議論を行い、対応を協議をする速さは評価に値する。「イベントを強硬するなどはありえない。もし実施し沿道での感染がさらに広がれば、結果的により長期間競技などが行えない情勢となっていく。UAEでの関係者感染とその拡大はその教訓とすべきだ。」
既に11チーム14人のレースドクターが、イタリアのレース、及びパリ~ニースの中止をそれぞれの主催者であるRCS、ASO、さらにはUCI(世界自転車競技連盟)に要望している。各チームは、「開催するかしないかの議論ばかりで、どのような対策を講じるかを議論しない主催者とUCIには今回のコロナウイルスの危険性が理解できていない。」とその態度に批判を強めており、「感染した場合の施設や隔離をどうするかなどの対策も考えていなければ、その他の濃厚接触者の観察期間の設定すら考慮していない。さらには今回のケースに関しての明確なルールやプロトコルの検討や議論もない。これでは選手たちの身の安全が守られないだけでなく、チームや選手たちが感染して他者に感染させてしまった場合に、その責任の所在がどこにあるのかもはっきりしない。こんな状況でレースを行うリスクの責任を果たしてRCS、ASO、UCIはきちんと取ってくれるのだろうか?」と不信感を表している。
「選手たちは観衆あってのスポーツ、それらの安全が最優先事項であるべき。」あるチームドクターは語尾を強めた。
もちろんレース続行を希望するチームも多数あるが、彼らもまた、「情勢次第では出走自粛をする」という選択肢は「常に用意している」としている。今回感染が発覚した選手の一人は、世代最強スプリンターのフェルナンド・ガヴィリア(UAEチームエミレーツ)であり、主力選手が感染したことに衝撃が走っている。
スタジアムスポーツとは違いオープンスペースで行われる自転車レース、密閉空間ではないことで感染の可能性は室内よりは低いとされるが、国境をまたぎ爆発的に広がる感染に対し、それをレース開催の根拠にはできない。各主催者は頭が痛いところだが、それ以上に苦しいのは選手たちだろう。「僕らにとってもレースができないことは痛いが、それよりも安全に、安心にレースが出来なければ、レースに集中することはできない。今自粛することで無駄な感染を広げず、早く終息してくれるのであればその方がましだ。」
選手たちの安全が最優先されること、そして一日も早い終息を願うばかりだ。
H.Moulinette