コロナウイルス感染者発覚でUAEツアーが打ち切り、ジロ・デ・イタリアも開催に黄色信号、「選手の安全が最優先事項」RCSは政府と連携して今後のスケジュールを決定
遂に自転車界にも影響が出始めた。いま開催中のUAEツアーで、2人のスタッフが新型コロナに感染していることが判明、それにより大会は第5ステージで打ち切りとなった。今後各地のレースも、開催予定とはしながらも、UCIによれば「流動的」であり、主催者判断によりレースの開催を中止することはありそうだ。現段階ではUCIからのワールドツアー開催中止には至っておらず、それぞれの主催者に判断が委ねられられている状況だ。
関係者に感染者が出たことで、選手たちも検査を受け、関係者や選手たちはその後もUAEで経過観察下に置かれている。万が一感染していた場合、他の選手や移動によりスーパースプレッダーになる可能性を考慮し、UAEの保健予防省が対応している。今のところ幸いなことに選手の感染は確認されていないが、エアロゾル感染することもわかっているだけに、いつ何時誰に感染するかわからない。
今回のCOVID19は呼吸器官に影響を及ぼすことがわかっており、気管支系にトラブルを抱える選手が多い自転車競技では、かなり神経質にならざるを得ない。それ以外でもスポーツ選手などはストイックに体を絞り込んでいる関係上、感染症などになった場合に重症化するケースもよくあり、安堵することができない状況だ。肺炎のみならず、サイトカインストーム(免疫機能の暴走)を引き起こし多臓器不全を引き起こすこともわかっており、重症化した場合の治療方法が確立していないのが現状だ。
アメリカのCDC(疾病対策センター)やWHO(世界保健機構)が既にパンデミックのステージに入りつつあるとしており、南極以外のすべての大陸で感染者が確認され、今後も感染者の数はどんどんと増えていくと予想されている。
イタリアでは感染者(現時点で1000人越え)、死者共に短期間で爆発的に増えたことで、イタリアRCS主催のワールドツアーなどの開催に黄色信号がともっている。ロードレースは沿道に多くの観衆が集まるだけに、感染拡大の恐れがあるだけに主催者は神経質にならざるを得ない。
「レース参加者、つまり選手たちの安全が最優先事項だ。」RCSはそう語りながら春先のストラーデ・ビアンケ、ティレーノ・アドリアティコ、ミラノ・サンレモに関しては検討を重ねた結果レースを開催することを決定した。「我々は常に保健機関と連携を取りながら対策を講じている。レースの開催は最後の最後までキャンセルの可能性はある。最終判断は感染者数と、感染対策が機能して状況がキッチリとアンダーコントロール下にあるかだ。それを踏まえて最終決定はイタリア政府とイタリア保健省に委ねている。」
しかし状況は芳しくない。次々とEU圏内での感染が日々広がっており、ジロ・デ・イタリアに関しても黄色信号がともっている状態だ。「ミラノでの感染が広がっていることが問題だ。我々はイタリア政府と保健省のガイドラインにしたがって対応していくつもりだ。地域差が大きく、まだ感染症者が出ていない地域はいいが、今後出る可能性もあるし、楽観視はしていない。今後の成り行きを見守りながら判断していく。」
UCIはすでに4月から5月に中国で行われる予定だったレースをキャンセル、そしてイタリアで行われる女子のトロフェオ・アルフレド・ビンダ・ウーマンズレースも開催の危機に晒されているとしている。
日本国内では外国と違い簡易的に検査できるキットがほとんど使用されず、検査体制があるが、万が一感染が発覚した場合の受け入れ先も含め様々な障壁があるために正直感染の全体像がいまだに見えない状態だ。レースなどのイベント主催者も政府方針に従うケースもあれば、従わないでイベントを開催しているケースもある。「健康体だったら感染しても大丈夫」などという過信はしないで、適切な防護策を取ってほしい。自転車型の楽しめるのは健康あってのもの、「俺は大丈夫」などという根拠ない過信は禁物だ。
3月2日で感染者数は世界で約9万人、死者も3000人以上だ。一日も早くこの感染症への治療法の確立をを願うとともに、一日も早い終息も願いたい。選手たちにとっては貴重な現役の一年、しかし健康を害してしまえばその後の現役生活にさえ支障が出かねない。早まる気持ちを抑え、主催者に方針に従いリスクマネージメントを徹底してもらいたい。
H.Moulinette