南米開幕戦を制したエヴァネポエルがヴォルタ・アオ・アルガーベも制す!山岳と個人TTでステージ勝利で総合優勝!20歳の新鋭が一気にジロの本命へ、アシストのアルメイダにも注目
若人の勢いが止まらない。昨年度ネオプロとして19歳でクラシカ・サン・セバスチャンを制すなど鮮烈なデビューを飾った男が、20歳になった今シーズン開幕からその勢いが止まらない。南米開幕となったヴエルタ・ア・サンファンで総合優勝を果たしたレムコ・エヴァネポエル(ドゥクーニンク・クイックステップ)がヨーロッパに戻って挑んだヴォルタ・アオ・アルガーベで、山岳ステージと個人TTでステージ2勝、そのまま総合優勝も手にして見せた。前5ステージ中エヴァネポエルが2勝にくわえ、ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ)がオープニングステージでスプリント勝利しており、アルゼンチンに引き続いてここでもステージレースを支配した。
この勝利で一気にエヴァネポエルは出場が予定されている今年最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアでの優勝候補に名乗りを上げた。すでにヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)が名指しでライバルとして名を挙げており、今シーズンのエヴァネポエルの活躍から益々目が離せなくなってきた。
ヴエルタ・ア・サンファンと同じく、この大会はドゥクーニンク・クイックステップにとっては幸先の良いスタートとなった。オープニングステージで、23歳の若手スプリンター、ヤコブセンが勝利すると、翌第2ステージではエヴァネポエルが山岳ステージを制して見せた。
残り3km、20名ほどに絞られた集団は、ミカル・クウィアトコウスキー(チームイネオス)らが仕切る。しかしチームのエース、ゲラント・トーマス(チームイネオス)だがサポートの甲斐なくここで遅れてしまう。ルイ・アンヘル・ロペス(アスタナ)がまずアタックを仕掛けると、ルイ・コスタ(UAEチームエミレーツ)、ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ)、さらにはヴィンチェンツォ・ニーバリ(トレック・セガフレド)らがキッチリとマークする。しかし残り2kmを切り、ドゥクーニンク・クイックステップクイックステップが動く。山岳で今までこうした動きを見せるチームではなかったが、エヴァネポエルの為に、今シーズンワールドツアーチーム移籍一年目の21歳、ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がペースを上げていく。そして残り400mでエヴァネポエルは切れ味鋭く加速、ライバルたちを置き去りにする。マックス・シャッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)が反応し追いすがるが、エヴァンポエルはそれをキッチリ把握、勝利をガッツポーズで締めくくった。
「信じられないね。僕はただひたすらついていっただけだからね。ジョアンが素晴らしい仕事をしてくれて御膳立てしてくれたんだよね。残り500mでなんとなく勝てる気がしたんだよ。」エヴァネポエルは勝利を感覚で確信していたようだ。自転車界の大御所強豪ライダーたちを相手に真っ向勝負を挑み、これで総合リーダージャージを獲得となった。
そして迎えた第4ステージ、最難関の山岳ステージでもエヴァネポエルは素晴らしい走りを見せる。ステージを制したロペス、さらにはステージ2位に入ったマーティンに食い下がりステージ3位でこらえ切り、総合ではシャッフマン、マーティン、エヴァネポエルの3者が同タイムとなるが、エヴァネポエルがリーダージャージのまま最終ステージの個人TTを迎えることとなった。
「きつかった・・・全力だったよ。残り1kmでパワーメーターを見たら、1100wを越えていたからね。今日は流石に疲れすぎて頭が空っぽだよ。今日はこのジャージを死守するのが目的だったし、明日もこのジャージを守らないとね。」肩で息をしながらもエヴァネポエルはどこまでも冷静だった。
そして迎えた最終ステージ、得意の個人TTで圧倒的なパフォーマンスを見せる。TTスペシャリストのローハン・デニス(チームイネオス)に10秒差をつけての圧勝、小柄な体に驚異のパワーと持久力を兼ね備えたエヴァネポエルが、今シーズン2つ目のステージレース総合優勝を決めた。
山岳からTTまでこなすその走りはライバルたちにとっては脅威だろう。昨年度は元スキージャンプ金メダリストのプリモズ・ログリッチ(ロットNLジャンボ)が一気にその才能を開花させ、グランツールまで制して見せた。そして今年はすでにエヴァネポエルがステージレース2勝と早くも話題をさらっている。今シーズンのジロ挑戦はグランツールを余り狙わないチームにとっては普段とは違う戦略が求められることとなる。ステージ勝利を量産するチームが果たしてどのような戦略でその挑戦をサポートしていくかに関心が集まっている。またそれにはアルメイダの存在は欠かせないものとなりそうだ。この若手も総合で9位に入り、今後の成長を予感させる。総合系を積極的に育成してこなかったドゥクーニンク・クイックステップが果たして彼ら若手をどのように成長させるのかが楽しみだ。
ヴォルタ・アオ・アルガーベ2020総合順位
優勝 レムコ・エヴァネポエル(ドゥクーニンク・クイックステップ) 19h23’42”
2位 マクシミリアン・シャッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +38”
3位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +39”
4位 ルイ・コスタ(UAEチームエミレーツ) +56”
5位 ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル) +1’17”
6位 サイモン・ゲシュケ(CCC) +1’18”
7位 レナード・カムナ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’26”
8位 バウケ・モレンマ(トレック・セガフレド) +1’31”
9位 ジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +1’40”
10位 アマロ・アンテゥーネス(W52/FCポルト) +1’57”
H.Moulinette