ブエルタ・ア・サンファン2020:南米開幕戦でいきなり次世代のスター候補、エヴァネポエルがステージ優勝と総合優勝!スティバーも勝利でクイックステップがステージ2勝、ガビリア2勝
オーストラリアと時を同じくして行われた南米最大の自転車レース、ブエルタ・ア・サンファンは、ワールドツアーチームのみならず、地元チーム北南米の強豪チームが顔をそろえ、毎年のように新星が現れる大会だ。まだ見ぬ強豪たちに加え、気候もヨーロッパとは違う中で行われるこのステージは、その移動距離からもヨーロッパを主戦場にする選手からすればかなり厳しいレースとなる。そんな注目を集めるレースを制したのは、次世代のスター候補、レムコ・エヴァネポエル(ドゥクーニンク・クイックステップ)だった。
そんなステージレースで毎年結果を残すのがドゥクーニンク・クイックステップだ。積極的にこの南米のレースに参加し、ハードなコンディションの中で実践経験を積み重ねるのだ。今年のブエルタ・ア・サンファンでは、事前の予想では、次世代のエースの期待高いエヴァネポエルで総合を狙うとされていた。しかし第1ステージでいきなり躓くこととなる。ゴール手前3km以上を残して落車が発生、それにエヴァネポエルが巻き込まれてしまう。救済措置の外での落車の為、最初のステージで夢ついえたかに思われたが、主催者が沿道のファンが落車を引き起こしたとして特例で落車した全ての選手を集団と同タイム扱いとしたのだ。
これで息を吹き返したエヴァネポエルは、第3個人TTでステージ優勝をあげ総合リーダーに躍り出る。しかし第5ステージでエヴァネポエルは苦境に立たされる。残り35kmで発生した集団の分裂で取り残されてしまうと、残り20kmを切り総合2位のフィリッポ・ガンナ(イタリア選抜)ら集団から1分20秒差を遅れた状態で総合優勝に黄色信号が灯る。チームメイトは僅かにピーター・セリー(ドゥクーニンク・クイックステップ)のみ、そしてセリー脱落後は自らが追走を牽引し猛追を見せる。残り14kmで上りに入ると、先頭集団は分裂、そしてエヴァネポエルはそれを視界にとらえる。そして残り8.5kmでついに先頭集団を捉えると、さらなるアタックに対応しながら総合リーダージャージを守りながらのゴール、総合系オールラウンダーとしての高いポテンシャルを見せた。
第6ステージではエヴァネポエルのチームメイト、ゼネク・スティバー(ドゥクーニンク・クイックステップ)が残り1kmから見事なアタックを決めそのまま勝利、チームにステージ2勝目をもたらした。
最終ステージも無難に走り切ったエヴァネポエルは見事に今シーズン最初のステージレースで、周囲の期待通り総合優勝を果たして見せた。進むロード界の世代交代の波、今年はこの男から目が離せないだろう。
そしてステージに注目すると、第1ステージ、第4ステージと最終第7ステージでフェルナンド・ガヴィリア(UAEチームエミレーツ)が勝利を果たした。昨年度まではドゥクーニンク・クイックステップのエーススプリンターだった男は、新天地でもキッチリと勝利を挙げて見せた。対して、勝利を狙い乗り込んだボーラ・ハンスグロエとその絶対的エース、ピーター・サガンは今大会で勝利を挙げることが出来なかった。
昨シーズン10代で初めてワールドツアーデビューを果たすと、いきなりセミクラシックで勝利を挙げ、さらにはハンマーシリーズで驚異的な独走を見せるなど、極めて印象的な初年度を送った男は、20才になった今シーズンも開幕から絶好調だ。身長171㎝、体重61㎏と日本人と同じような体系でヨーロッパでは小柄なでありながら、個人TT、クライミングでもその才能を発揮するエヴァネポエルは、今シーズンは一週間程度のステージレースやクラシックなどをターゲットとし、さらにはジロ・デ・イタリア出場も決まっている。新世代が次々と台頭する中で、エヴァネポエルも間違いなく今後の自転車界を背負っていく逸材となりそうだ。
「こんな大きなトロフィー飛行機に乗せられないんじゃないかな(笑)。荷物として持って帰れるのかが不安だよ。いきなり大きな勝利を獲得できたね。この勝利は大きな自信に繋がるよ。この調子でシーズンを駆け抜けたいね。きついレースだったよ。ここの大会じゃなきゃ出会わない選手やチームは手の内が読めないから、戦略が立てにくかったんだよ。さらにはロシアやイタリアの選抜チームはメンバーもよかったからね。」
「(ジロ・デ・イタリア第1ステージの個人TTで勝利をすると伝説のファウスト・コッピを抜いて最年少のマリア・ローザ獲得になることについて)そうなれば嬉しいね。でもそれを狙っているわけではないからね。ジロ前にもいくつも大きなレースを狙うしね。とにかく今は出場するレースで体調をベストに整え最高のパフォーマンスをすることに専念しているよ。その上でブダペストでのジロ開幕戦で最高のパフォーマンスが出来たら最高だね。」周囲の高い期待にも怖気ずくことなく答えるエヴァネポエルには、若者らしさと共にすでに貫禄が漂っている。
ブエルタ・ア・サンファ2020総合順位
優勝 レムコ・エヴァネポエル(ドゥクーニンク・クイックステップ) 23h13’59”
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア選抜) +33”
3位 オスカル・セヴィリア(チームメデリン) +1’01”
4位 ブランドン・マックナルティー(UAEチームエミレーツ) +1’21”
5位 ミゲル・フロレス・ロペス(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック) +2’11”
6位 ネルソン・オリベイラ(モビスター) +2’27”
7位 ギヨーム・マルティン(コフィディス・ソルーション・クレジッツ) +2’28”
8位 シーザー・パラデス(チームメデリン) +2’36”
9位 ガヴィン・マニオン(ラリーレーシング) +2’53”
10位 ホァン・パブロ・ドッティ(SEP de San Juan) +3’05”
H.Moulinette