ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージ:クイックステップ強し!カバーニャが25km独走で勝利!あわやの危機!ログリッチ落車を無視しモビスター加速!物議を呼ぶ結果に
ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージは非常に後味の悪いステージとなってしまった。明確にルールで示されているわけではないが、「紳士協定」として勝負どころではないポイントで総合リーダーや、それに準ずる総合上位者が不可抗力により事故に巻き込まれた場合は、決して仕掛けることなく遅れたものがレース復帰をするのを待つというものがある。結果的には仕掛けたモビスターが待ったことで事なきを得たが、しかしその不文律がこのレース中盤では守られなかったことで、レース終了後もかなり紛糾するステージとなった。そんなステージを制したのはレミ・カバーニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、残り25kmを独走で勝利を決めた。
ステージ中盤で突然発生した落車は、あまりにも多くの選手を巻き込んだ。特に激しく巻き込まれたのは総合リーダーのプロモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)とそのアシストたち、さらには新人賞ジャージをタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)と激しく競い合っているミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)が犠牲となる。ここで本来であれば、逃げを追走しているメイン集団は、追走をやめそれら選手を待つものと思われた。しかしモビスターはここで攻撃に出る。一気に加速をするとぐんぐんと後続とのタイム差を開いていく。
ログリッチやロペスらは必至の追走でなんとかタイム差が広がるのを耐え続けるが、その差は1分以上にまで広がってしまう。しかし最終的には15kmほど続いたその攻撃も総合2位のアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)がチームメイトを手で制し、加速をやめるように促した。レース終了後選手たちは「チームからのオーダーだった」と口々に答え、さらにはチーム監督は「バルベルデが他のレースで落車したときには待たないし誰も難癖つけないのに、うちが同じ状況で同じことをしたら避難されるのは納得いかない」と不快感を示した。
しかしそれでもレースは続き、先頭集団はこの後続のごたごたもあり逃げ切りを容認される形となった。そうなれば逃げの中で勝利を狙うのは個性派集団のカバーニャ、ゴール前スプリント勝負になるよりは、一か八かの大勝負に出る。残り25km、一気に単独で飛び出すと、そのまま一人TTを開始する。この日は石畳やアップダウンもあり、逃げ切りにはうってつけのコースだけに、どこまでカバーニャが逃げ続けられるかに注目が集まった。残り1kmを切り、残り全ての逃げを飲み込んだ大集団がカバーニャも飲み込むかに思われたが、土壇場で火事場のクソ力を発揮したカバーニャはそのまま逃げ切りで勝利、これで本人は今シーズン2勝目、ドゥクーニンク・クイックステップに今大会4勝目をもたらした。
「今日が僕にとって最後のチャンスだったからね。だから全力を尽くしたんだ。僕の初のグランツール勝利だよ。今日はチームのエースがメイン集団にいたから、逃げ集団の中では積極的に動く必要がなかったんだよ。戦略的には追いつかれたらエースをアシストする立場だったからね。もうあれ以上は動けなかったよ。ラストコーナーを回るまで勝利を確信できなかったよ。」カバーニャはチャンスを確実にものにした。
その背後では残り30kmでログリッチが横風区間でいったん遅れるシーンも見られたが、ゴール後は相変わらずのマイペース、今回の一件も「レース映像を見ないと分からないよ」に徹するなど、一切の無駄口をたたかなかった。対してロペスは露骨にモビスターへの不快感を示し「最悪だろ、リーダーへのリスペクトがないのは。彼らはこれが初めてではないよね。ほんとバカだろ。」と言葉を荒げたが、その後「冷静ではなかったので言い過ぎた。」と謝意を表明した。そして様々な選手たちの批判に晒されたモビスターも「申し訳なかった、最悪の選択をした。」と謝罪した。
ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージ
1位 レミ・カバーニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 3h43’34”
2位 サム・ベネット(ボーラ・ハンスグロエ) +05”
3位 ゼネク・スティバー(ドゥクーニンク・クイックステップ)
4位 フィリップ・ジルベール(ドゥクーニンク・クイックステップ)
5位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)
6位 トッシュ・ファン・デル・サンド(ロット・ソウダル) +08”
7位 ディラン・テウンス(バーレーン・メリダ)
8位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
9位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)
10位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ) 71h16’54”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +2’47”
3位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +3’31”
4位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +4’17”
5位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) +4’49”
6位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +7’46”
7位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +9’46”
8位 カール・フレドリック・ヘーゲン(ロット・ソウダル) +11’50”
9位 ジェームス・ノックス(ドゥクーニンク・クイックステップ) +13’20”
10位 マルク・ソレル(モビスター) +21’09”
H.Moulinette