ツール・ド・フランス第20ステージ:異常気象からの土砂崩れで大幅短縮、最終山岳2連戦は水を差された形に、ステージはニーバリが制し、総合勢はアラフィリップのみが大幅に脱落
今年のツール・ド・フランス最後の山岳ステージは、昨日のステージ同様に異常気象の影響による地滑りの影響で、距離がカットされる形となった。僅か59km、上りだけのステージとなったことで、最終決戦としては盛り上がりに欠ける形となった。しかしそれでもステージはステージ、勝負は勝負、逃げ切りは容易ではないと思われたが、総合優勝候補でもあったヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)が鮮やかな逃げ切り勝利を決め、今大会の記録にしっかりとその名を刻んだ。
そして総合勢は最後の最後まで積極的な動きを見せず、実質不完全燃焼の昨日の山岳が最終山岳バトルとなってしまった。ただ一人昨日のステージでマイヨ・ジョーヌをうしなったジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)にとっては、この日のような上りだけのコースは全く専門外、途中で苦悶の表情で遅れると、そのままずるずると後退、大きくタイムを失い総合5位までその順位を下げてしまった。それでも沿道の応援は最後までアラフィリップを激励し続けた。
そんなステージはまさかの逃げ切りという形での決着となった。まずは6人の逃げが発生、さらにそこから追走が合流し29名までその集団は膨れ上がった。しかしやはりそこは山岳ステージ、あっという間に逃げ集団はばらけていく。一人、また一人とちぎれていく中、追走のメイン集団では徐々にペースが上がっていき、その人数が減っていく。
先頭は気が付けばニーバリが独走となる中、追走のメイン集団はジャンボ・ヴィズマが支配、ペースをさらに上げていくとついにアラフィリップが脱落する。これによりスティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ)は総合3位へのジャンプアップが見えたことでペースはさらに上がっていく。
アラフィリップはアシストの助けを受けながら歯を食いしばって登り続ける。今までのレースであれば、自分のペースで無理なく上るはずの山岳も、今年はすべて自らの限界を超える走りで乗り越えてきた男は、この日も最後の最後まで手を抜くことなくペダルを踏み続けた。
ステージ優勝はニーバリ、そしてメイン集団から飛び出した現世界王者のアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)がちゃっかりとステージ2位を確保、そしてミケル・ランダ(モビスター)もステージ3位を確保した。アラフィリップは大幅に遅れながらも踏ん張り切り、総合5位でこのステージを終えた。
これで総合争いも実質終了、新世代のエースと期待されていたイーガン・ベルナル(チームイネオス)が、クリス・フルームの代役ともいえる形でのエースという立場であったことを全く感じさせない圧倒的な強さを見せて、コロンビア人として初のツール覇者が確定的となった。新人賞も併せて確定的、チームスカイからチームイネオスに名は変わったが、相変わらずの強さでツールを制することとなりそうだ。
「勝利が目前だね。あと1ステージ、”ほぼ”ツール制覇だね。母国コロンビアではきっとお祭り騒ぎだろうね。この勝利はコロンビアにとっても歴史的偉業だからね。僕もずっとテレビで見ていたファンだったんだよ。そしていつかそこに出場したい、勝ちたい、って夢見てきたんだよ。今いろいろな感情が渦巻いているよ。」ベルナルは眼前に迫ったツール制覇に思いを馳せた。
「苦しかったよ。でもやっぱり勝利はいいねぇ。ジロの後の疲れが抜けないまま挑んだから、ほんときつかったよ。さらに総合で全く競い合えないことで、ならばなぜ出場しているのだ、とお叱りも受けたしね。ほんともう帰ってしまおうかと思ったよ。でもツールに出場できるという名誉のために途中で投げ出したくはなかったんだ。だから最後くらいは大きく花を咲かせようと無理をしてでも狙ったんだ。」
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) ステージ1位
ツール・ド・フランス第20ステージ
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) 1h51’53”
2位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +10”
3位 ミケル・ランダ(モビスター) +14”
4位 イーガン・ベルナル(チームイネオス) +17”
5位 ゲラント・トーマス(チームイネオス)
6位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +23”
7位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)
8位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ) +25”
9位 ワウト・ポエルス(チームイネオス) +30”
10位 ナイロ・キンターナ(モビスター)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 イーガン・ベルナル(チームイネオス) 79h52’52”
2位 ゲラント・トーマス(チームイネオス) +1’11”
3位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ) +1’31”
4位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +1’56”
5位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +3’45”
6位 ミケル・ランダ(モビスター) +4’23”
7位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +5’15”
8位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +5’30”
9位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +6’12”
10位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック) +7’32”
H.Moulinette