ツール・ド・フランス第19ステージ:異常気象の影響、ゲリラ豪雹と土砂崩れでレースが最後の頂上ゴール手前の山岳で打ち切り!早めに仕掛けたベルナルが思わぬ形でマイヨ・ジョーヌ獲得
第19ステージ、本来であればこの日のステージは総合勢にとっては直接対決の場となるはずだった。しかし思わぬ突発的なゲリラ豪”雹”の影響で道路が走行不能な状況となり、レースが突如として通過地点であったイセラン峠の通過順で終了となることが決定された。その為正式な勝者は無しとなり、選手たちの中には納得しない表情も多くみられたが、結果的に主催者がエキストリーム・ウェザー・プロトコルを適応した。それによりこの峠で早めに仕掛けたイーガン・ベルナル(チームイネオス)がトップ通過、早めに仕掛けたことが功を奏してマイヨ・ジョーヌを奪取した。
レース序盤、まさかのシーンが飛び込んできた。昨日までのレースで脚を痛めていたピノーが、泣きながらリタイアしたのだ。ハンドルバーに足をぶつけたことで筋肉が部分断裂、激痛の中で昨日のステージを完走していたのだ。今日のステージは何とかスタートしたものの、激痛は限度を超え、悔し涙を流しながらのリタイアとなった。
そしてレースはばらばらと先行する逃げのメンバーを、追走の総合集団が追う展開となる。この日のレースはペースが速く、すでに多くのチームがアシストを失っていた。その中でマイヨ・ジョーヌのジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)はエンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)を失い孤立無援の状態となる。するとこの早い段階でなんとベルナルが仕掛ける。イセラン峠の先にはもう一つゴールまでの山頂決戦がある中で、残り45km近くを逃げ切るつもりなのか、大博打に出たのだ。頂上まで5.5km、どんどんと加速するベルナルは、先行していたリゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)などを捉えていく。
サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)がそれに追いすがるが、結局ベルナルは先頭にいたワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)を持捉えて置き去りにし、完全に単独状態で山頂を通過する。
その背後ではアラフィリップが早々と脱落する中で、スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ))、ゲラント・トーマス(チームイネオス)らが追走集団を形成している。先頭を無理して追うよりは、ある程度の無理ないペースで登り切り、最後の頂上決戦に備えているような速度での走りに、エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)らも加わり山頂を越えていった。
単独での走行を余儀なくされたアラフィリップは、時折脱落してくる選手などと並走しながらも、最後は歯を食いしばって頂上を越えていった。
下りではサイモンがベルナルに合流、下りでリスクを取りながらアラフィリップが猛追を仕掛けていた・・・
しかしここで主催者がラジオツールを通して全チームに対して、選手をスローダウンさせる通達を出す。コース下り途中のエリアで、突発的なゲリラ豪雨からのゲリラ豪雹が発生、路面が氷を散らばせた川となり、走行不能な状況となったことを踏まえ、ASOが素早くレースのニュートラル化と、イセラン峠通貨時点をこの日のゴールとすることを決断した。
状況が呑み込めない選手たちは抗議の姿勢を見せながら下り続けるが、結局映像を見たチームからの説得で納得、途中の村でバイクを降りてステージを終える形となった。
この決断により救われた選手あり、逆に攻撃のチャンスを失った選手あり、いったい誰が損をして誰が得をしたのかは神のみぞ知る状況、でもこれもレースであり自然相手の協議でもあることを再認識させるステージとなった。
「全力は尽くしたよ。後悔なんて微塵もないよ。ただ僕より強い選手に負けたというだけのことだよマイヨ・ジョーヌに袖を通すのは夢だったんだ。まさかここまで守れるとは思ってもいなかったよ。夢の時間がこんなにも長く続くとは思っていなかったからね。世の中なるようにしかならないもんだよ。ジャージを守ることに専念はしたけど、それは総合優勝を夢見るという意味ではなく、日々このジャージを守るということだったんだよ。」
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ツール・ド・フランス第19ステージ
1位 イーガン・ベルナル(チームイネオス)
2位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +13”
3位 ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック) +40”
4位 ローレンス・デ・プラス(ジャンボ・ヴィズマ) +1’03”
5位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ)
6位 ゲラント・トーマス(チームイネオス)
7位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)
9位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)
10位 ミケル・ランダ(モビスター)
1位 イーガン・ベルナル(チームイネオス) 78h00’42”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) +48”
3位 ゲラント・トーマス(チームイネオス) +1’16”
4位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ) +1’28”
5位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +1’55”
6位 ミケル・ランダ(モビスター) +4’35”
7位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +5’14”
8位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +5’17”
9位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +6’25”
10位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +6’28”
H.Moulinette