ツール・ド・フランス第13ステージ:総合リーダーのアラフィリップが大番狂わせの個人TT制覇!マイヨ・ジョーヌマジックで優勝候補筆頭のトーマス撃破の会心の走り!

ツール・ド・フランスの総合順位を大きく左右すると言われる個人TT、その個人TTで誰もの予想を大きく裏切る素晴らしい走りをジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が見せてくれた。このステージで総合リーダーの証、マイヨ・ジョーヌを失うだろうという誰もが予想したが、ふたを開けてみればなんと全ての通過ポイントをトップで通過し、そしてゴールではステージ優勝候補筆頭だった総合2位のゲラント・トーマス(チームイネオス)を引き離しての会心の勝利を達成して見せた。

©Bettini Photo
マイヨ・ジョーヌマジックとは、総合リーダージャージを獲得したものが自らの100%の力を超える力を発揮できるというものだ。昔から頻繁に語られており、心理的作用として限界点を越えられることを指している。そして今回まさにそのマイヨ・ジョーヌマジックをアラフィリップは示して見せた。得意と言えない個人TTでありながら、スタートから快調に飛ばすと、全ての通過ポイントでトップタイムをたたき出し、ゴール一つ手前のポイントではトーマスとの差が6秒だったものを、ゴールまでの上り勾配を軽やかに走り切り、ここだけでさらに8秒広げて見せた。

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「このコースでは結果が出せると思っていたんだよ。前半は飛ばして、ゴール前でも全開スパートをしたよ。チームから秒差の僅差とは聞いていたんで何とか全力を出したらそのままステージまで勝ってしまったよ。ただひたすらにうれしいね~。とにかくできることを全力でやった結果だよ。僕はこれで新たなステージへと登れたと思うよ。自信をもって、最高のコンディションで、そしてモチベーション高く挑むことで結果が得られたんだよ。そうだね、うちはツール・ドフランス総合優勝を狙えるような布陣ではないよ。クライマーも少ないしね。でもうちらは勝利への闘争心では誰にも負けていないと思うよ。とにかく最高の勝利を挙げることが出来たよ。」アラフィリップの勝利は、マイヨ・ジョーヌ着用フランス人選手の勝利としては1989年以来となり、TTだけに限定すれば1984年以来となった。

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ステージ2位にはトーマスが盤石の走りで入ったが、もう一人のエースと目されていたイーガン・ベルナル(チームイネオス)は切れ味なくタイムを失い、総合順位を下げることとなった。ステージ3位には逃げ職人のトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)が入った。長時間にわたり暫定トップの選手が座るホットシートに座り続け、またしてもその存在感を強く印象付けた。
総合勢ではティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)、リッチー・ポート(トレック・セガフレド)らがタイムロスを最低限に抑え踏ん張った。しかし総合優勝争いという意味ではスティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ)とエンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)の二人が順位を上げチャンスをつかんだと言えるだろう。それぞれ総合で3位と4位となり、トーマスからもわずか1分ほどの遅れ、総合表彰台と共に総合優勝も視野に入ってきた。

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このステージで失速したのは、ナイロ・キンターナ(モビスター)、ダニエル・マーティン(UAEチームエミレーツ)、アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)らだ。さらにはロメイン・バルデ(AG2R)に至っては、バイク交換などでも手際が悪いだけではなくモチベーションの低下が目に見てわかるほどだった。
一つ気がかりなのは、先日ツールでも初勝利を挙げたワウト・ファン・アールト(ジャンボ・ヴィズマ)がこのステージ中間計測で好タイムを出していながらも、コースわきのバリアに接触し脚に深い裂傷を負たことだ。そのままリタイアとなり、救急車で運ばれる事態となってしまった。
「もしアラフィリップが今の調子を維持出来たら、間違いなく総合優勝できるだろうね。でもまだまだステージは多く残っているし、何が起きるかは分からないね。でもまあ今日のあの走りは正直予想外だったよ。要注意選手になったことは間違いないね。」
ゲラント・トーマス(チームイネオス) ステージ2位 総合2位

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「なんでそんなに真面目にならないといけないの?たかがTTでしょ。」
ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)
ツール・ド・フランス第13ステージ
1位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 35’00”
2位 ゲラント・トーマス(チームイネオス) +14”
3位 トーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル) +36”
4位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)
5位 リッチー・ポート(トレック・セガフレド) +45”
6位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ)
7位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +49”
8位 キャスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ) +52”
9位 エンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ) +58”
10位 ヨセフ・ロスコフ(CCC) +1’01”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 53h01’09”
2位 ゲラント・トーマス(チームイネオス)) +1’26”
3位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ) +2’12”
4位 エンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ) +2’44”
5位 イーガン・ベルナル(チームイネオス) +2’52”
6位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +3’04”
7位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +3’22”
8位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +3’54”
9位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +3’55”
10位 アダム・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
H.Moulinette