ツール・ド・フランス第8ステージ:逃げ職人会心の仕事!デ・ヘントが200km逃げ切り勝利!追走集団からアタックのアラフィリップがマイヨ・ジョーヌ奪還!
自転車には逃げ職人と呼ばれる選手が存在する。集団から飛び出し、わずかな逃げ切りのチャンスにその運命をゆだねながらも、スポンサーにとってはカメラに映り続ける孝行息子でもある。その代表格でもあり、過去には山岳で大逃げを決めてグランツールでまさかの総合3位に食い込んだ経験もあるトーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)が見事にこのステージでも逃げ切りに成功、鮮やかにチームに今大会初勝利をもたらした。そして総合争いでは宣言通りジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)が総合リーダージャージ奪取を試み成功、フランス革命記念日にフランス人がツール・ド・フランス総合リーダージャージで走ることとなった。
最近では数少なくなった、逃げ職人と言われるほどに逃げに特化したデ・ヘントの嗅覚は抜群だ。間違いなく一般的な選手に比べて逃げ切りの可能性は高く、そのようなステージを選んで挑むのだ。このステージでは獲得標高3800mというまるで山岳ステージのようなアップダウンに加え、アルデンヌクラシックのようなコースレイアウトというハードなステージとなったが、デ・ヘントに躊躇はなかった。
4人の逃げ集団が200kmの逃げ切りをもくろむ中、総合勢も無駄なタイムロスをすることのないように懸命の走りをする。さらには昨日ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)に総合リーダーを奪われたアラフィリップが、自分向きのこのコースでの逆転を狙っていることは明白だった。その駆け引きの中でのペースアップは、コーナーと細い道幅、さらにはアップダウンというコースも合間り徐々に選手たちを削っていく。
逃げはアレッサンドロ・デ・マルキ(CCC)との二人逃げから最後の上りでデ・ヘントが独走となり、タイム差も逃げ切りが可能かが微妙なボーダーラインを行き来するが、それでもモチベーション高い男のペースは最後まで衰えず、追走を振り切って見せた。これで通算15勝目、そのすべてが逃げ切りであり、グランツールでの勝利もこれで4勝目となった。
「今日は気分良く走れたんだよ。でも最大でも5分差までしか開かなかったし、焦りもあったね。でもそこは冷静に対処して、後続とのタイム差を図りながら走ったよ。でもあまりにもリスクを取って攻めすぎたんで、何度も落車しかけたけどね。残り70kmでは今日の勝利は何となく予測できたよ。」デ・ヘントは早々と勝利を確信していたようだ。
その背後ではチームイネオスが危険回避での集団走行をしていたが、落車に巻き込まれる形で足止めを食らう。幸いにもゲラント・トーマス(チームイネオス)は落車を逃れたが、ペースの上がった集団への復帰に、難を逃れていたイーガン・ベルナル(チームイネオス)以外のチームメイトたちを総動員することとなった。
追走集団が最後の上りの急こう配に差し掛かると、狙っていたかのようにアラフィリップが攻撃を仕掛ける。あまりの切れ味に、わかっていてもほとんどの選手が反応すらできない。ただ一人ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)が反応し、追走は二人となる。残りはまだ12kmあまり、それでも二人はぐんぐんと加速し、また追走も協調性を欠き、その差は詰まらない。さらにはアラフィリップのチームメイトのエンリック・マス(ドゥクーニンク・クイックステップ)がアンカーとなり、追走のローテーションを阻むチームワークを見せる。
ぐんぐんと加速するアラフィリップは最後まで力を抜かなかった。ゴールこそピノーに後着となったが、ステージ3位でボーナスタイムとタイム差を合わせてキッチリと総合リーダージャージ奪還に成功した。
その背後ではなんとここまで何度となく遅れては合流を繰り返していたピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)とマイケル・マシューズ(チームサンウェブ)がスプリント勝負を繰り広げる。ポイント賞ジャージを獲得するためには、どんなステージでもポイントを稼ぎだしたいスプリンターの本能は、この過酷なステージでもその本質を見せた。
「失うものはなかったからね。だから今日は脚の様子を見ながらだったね。とにかく目的が果たせて最高にうれしいよ。チッコーネとは6秒差というのもわかっていたし、このくらい逆転できると思っていたからね。でもそのためには最後の上りでアタックを仕掛けなきゃいけないのもわかっていたよ。ピノーと共闘できたのが大きかったよ。まあもし一人だったとしてもゴールまで逃げようとは思っていたけどね。彼も総合でジャンプアップできる思惑もあったしね。」
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) ステージ3位 総合1位
「大丈夫だよ。ただ腹立たしいよ。ウッズが落車して、モスコンと僕が巻き添えをくったんだよ。僕はモスコンのバイクと自分のバイクが絡んで再スタートに手間取ったんだよ。バイクも大丈夫だったよ。最悪なのはメイン集団に合流した後、アラフィリップとピノーの追走のペースが遅かったことだよ。結局それでピノーのタイムを稼がれてしまったからね。ピノーは今大会要注意だよ。」
トーマス・デ・ヘント(チームイネオス) 総合5位
ツール・ド・フランス第8ステージ
1位 トーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル) 5h00’17”
2位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +06”
3位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
4位 マイケル・マシューズ(チームサンウェブ) +26”
5位 ピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 マッテオ・トレンティン(ミッチェルトン・スコット)
7位 ザンドロ・メウリス(ワンティ・グループゴベール)
8位 グレッグ・ヴァン・アーヴェルマート(CCC)
9位 イーガン・ベルナル(チームイネオス)
10位 ゲラント・トーマス(チームイネオス)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ) 34h17’59”
2位 ギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド) +23”
3位 ティボー・ピノー(グルーパマ) +53”
4位 ジョージ・ベネット(ジャンボ・ヴィズマ) +1’10”
5位 ゲラント・トーマス(チームイネオス) +1’12”
6位 イーガン・ベルナル(チームイネオス) +1’16”
7位 スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ) +1’27”
8位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +1’38”
9位 ヤコブ・フグルサング(アスタナ) +1’42”
10位 エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ) +1’45”
H.Moulinette