今年のツール・ド・フランスを制すのは誰なのか?大本命なき大激戦をリードするのはイネオスとモビスター、しかし総合トップ10クラスの選手が多く顔を揃える大激戦のにおい
今年のツール・ド・フランスは全く読めない。ジロ・デ・イタリアもそうであったように、絶対的な大本命がいないのだ。強豪は多く顔を揃えるが、絶対的な存在がいないことで、各チームの総合系エースには平等にチャンスがありそうだ。トップ10は混戦模様、トラブルなく走り切ればそれだけで総合上位が一気に見えてくる大会となりそうだ。
それほどの混戦模様となりそうな布陣だが、一歩リードしている雰囲気があるのは、昨年度の覇者ゲラント・トーマスと新世代エース、イーガン・ベルナル擁するチームイネオスだろう。ダブルエースな実力者であることに間違いはない。しかしながらトーマスは絶対的と言えるまでではなく、ベルナルも本格的エースは未体験なだけにかなり未知数だ。
その対抗馬となりうるのはトリプルエースで挑むモビスターだ。ナイロ・キンターナとミケル・ランダ、さらには現世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデの布陣は強力だ。経験も豊富ながら、ここ一番での弱さを露呈するケースも多いのが難点だ狼。ただチーム総合を考えたときには、このチームが間違いなく優勝候補だろう。3枚エースは誰もがアシストにもなれるだけに、混戦となればこの選手層の厚さで誰かが総合優勝という可能性はあるだろう。
ダブルエースと言えば、ミッチェルトン・スコットもアダムとサイモンのイェーツ兄弟がそろい踏みだ。はまれば怖いが、いつも後半戦で力尽きることが多いだけに3週間の大会を乗り切ることができるかが課題だ。
総合優勝を狙える経験値豊富な強豪と言えば、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)、ロメイン・バルデ(AG2R)、ファビオ・アルー(UAEチームエミレーツ)、リッチー・ポート(トレック・セガフレド)、リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック)、ティボー・ピノー(グルーパマFDJ)、スティーブン・クライズワイク(ジャンボ・ヴィズマ)らだろう。ただし今シーズンのここまでの調子を考えても、なかなか優勝候補と断言できるほどではない。ベテランたちの走りはある程度予測できるものの、3週間という長丁場でトラブルやバッドデイをいかに少なくするか、そのあたりのレースマネージメントが大きく問われそうだ。
更に前哨戦を制し今シーズン絶好調ながら、グランツールのエースとしては役不足のヤコブ・フグルサングだが、勢いに乗れば怖い存在となるかもしれない。さらにはドゥクーニンク・クイックステップのエンリック・マスはダークホースだ。チームとしてはステージ優勝狙いで現段階での世界ランク1位のジュリアン・アラフィリップを送り込んでいるが、チームが好調なだけに、その波に乗れば大金星の可能性はある。
ダークホースと言えば、イルヌール・ザッカリン(カチューシャ・アルペシン)、ワーレン・バルギル(アルケア・サムシック)、エマニュエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグロエ)辺りが大化けする可能性を秘めているだろう。
この中でもすでに脱落している選手もいるが、果たして誰がその実力を越えた力を発揮して勝利をつかむのか、運も味方につける選手は果たして現れるのか、今年の大会は目まぐるしい混戦模様となりそうだ。また総合という結果を残せなくても、特化した強さを発揮し来年度以降エース格に上り詰める可能性のある選手を探すのも楽しみだ。
H.Moulinette