U-23のパリ~ルーベでディスクブレーキによる裂傷で選手が怪我、本人も「実際にディスクローターでこんなことが起きるとは思わなかった」、血まみれのディスクローターにリスク増加の可能性

本格的にディスクブレーキが解禁され、各メーカーがディスクブレーキを導入するかに思われたが、徐々に増えているとはいえその普及のペースはまだまだ遅い。フレーム供給メーカー、そしてコンポーネントメーカーであるシマノはディスクブレーキへの流れを推奨しているが、まだまだ選手たちがその絶対的な必要性を感じておらず、キャリパーブレーキを要望する選手が多いのがその一因だ。
試験段階でフラン・ヴェントソがディスクブレーキで怪我をした(実際にはチェーンリングなのかディスクなのかがはっきりしなかった)、という一件があり、ガードを取り付けるなどの提案がなされたが、結局ローターエッジの形状見直しなどが行われ、あの”ダサい”ローターカバーなしでの解禁へとこぎつけた。
若手選手は従来のキャリパーブレーキの使用経験浅いままにディスクを使い始めるケースも増え、ディスクブレーキを選択する選手が多い。U-23のパリ~ルーベに出場していたマッテオ・ヨルゲンセン(シャムベリーCF)もその一人だった。AG2Rの育成チームでもあり強豪チームのメンバーでもあるこの19歳は、荒れた路面で有名なこのレースで落車に巻き込まれた際に大怪我を負ったのだ。

©ChamberyCF
「正直こんなことが起きるなんて僕自身信じられなかった。」と語ったヨルゲンセンは、「本当にディスクローターが原因なのか?」との質問に対して、「起き上がろうとした際に、絡んで落車したほかの選手のディスクローターと僕の靴と靴下が血まみれだったんだ。深さ4㎝のこんなに綺麗なカットはディスクローターしかないよ。ヨルゲンセンは、カットの深さとその切り口の綺麗さから、チェーンリングのような鋸刃形状のもので裂傷を負ったのではないと語った。ヨルゲンセンは即手術を受け今は順調に回復中だ。
一つ気になるのは、危険性を危惧する声が上がりながらも、コンポーネントメーカーがその危険性に関する可能性などを自ら語ることなく、優位性ばかり語り続けることだ。そんなコンポーネントメーカーの社員と話した際に、「選手たちの選択の余地が無くなれば、いずれ皆ディスクブレーキになるでしょ。早く全チーム使ってほしいよね。まあでも選手たちの中に根強く”いらない”って”そこまで必要性を感じない”って声があるのが実情だから、まだしばらくかかるかな。」と語っていた。
ロード用ディスクブレーキにはそれなりのメリットがある、その反面もちろんデメリットもある。回転する金属板が前後で一か所ずつ、2カ所増えるということは、落車時に接触して怪我をする可能性がある個所が2カ所増えるということだ。ディスクブレーキにすることにより接触・落車の可能性が大きく減るというのであれば、リスク増加とはならないが、昨今のレースでブレーキの違いにより接触、落車のリスクは大きく変動はしていない。また実質勝利の可能性が大幅に変わるものでもない。勝負は最終的には選手の実力で決まるのだ。それを考えればリスク増加を避けたいという選手の声にも一理あるわけだ。
ディスクブレーキ普及はメーカーとしては買い替え需要を促せるチャンスでもあり、積極的な販売促進も構わないが、製造メーカーは最前列であるレースシーンでのリスクの声とその対処に関して、もっときちんと説明責任も果たしてほしい。それでこそ良心的なメーカーと言えるだろう。
H.Moulinette