ジロ・デ・イタリア総括:今大会で目立った選手たち、想定外の活躍をした選手たち、日本人選手たちの活躍と挫折、それぞれの今後の活躍に期待

今年のジロ・デ・イタリアは観戦する側にとってはとても面白い大会だった。それは絶対的な優勝候補がいないことで、誰が優勝するかという想定が難しかったことが大きく影響している。そしてそれは同時に思わぬ選手の活躍、思わぬ選手たちが結果を残すということに繋がった。

©Bettini Photo
まず何と言っても、もっとも以外かつ大躍進を遂げたのは総合優勝のリチャード・カラパズ(モビスター)だろう。これまで大きな勝利は、2年連続でヴエルタ・ア・アストリアスで2年連続総合優勝したぐらいで、エクアドル人として初のグランツールステージ優勝をあげた昨年度のジロ・デ・イタリアで総合4位になったのが目立った成績だった。それが一気に今大会で才能が開花、26歳の若手はチーム力という武器を使いこなしスターダムへとのし上がった。

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山岳賞のギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)も予想外の大活躍だった。トレック・セガフレドは今大会ずっと山岳賞をキープし続けたが、チッコーネがそのほとんどの役割を担っていた。もちろん山岳ステージで逃げての山岳ポイント集めをしただけではなく、逃げ続けてステージ優勝を上げ、さらには別のステージでも優勝争いに絡む活躍を見せた。

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ポイント賞ジャージのパスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグロエ)も、正直ここまでの活躍は予想していなかった人が多かっただろう。今大会は前半にスプリントステージがほとんどで、後半は少ない中、その後半の僅か一度のチャンスを活かしての大逆転ポイント賞ジャージ獲得となった。
印象に残った選手としては、ファウスト・マスナダ(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック)だ。今大会何度となく逃げただけではなく、印象的な走りで目立っていた。第6ステージでステージ優勝を飾ると、第16ステージと第17ステージで4位に入る走りを見せた。
総合系ではヒュー・カーシー(EFエデュケーション・ファースト・ドラパック)だろう。山岳ステージでニーバリら総合系に交じって何度となくアタックについていく走りを見せ、最終的には総合11位で大会を終えた。189㎝と大柄な体を大きく左右の揺さぶりながらのダンシングは、一見すると非効率的にも思えるが、それでも前評判が全くない中で、これだけの活躍をしたことを考えれば、これからが楽しみな存在だ。まだ24歳と若く、多くの個性的なグランツールライダーを輩出しているイギリス出身だけに今後が楽しみだ。
そして今大会注目されていたのは日本から出場の二人、初山翔と西村大輝(共にニッポー・ヴィーニファンティーニ・ファイザン)だ。西村大輝は悪い意味で今大会最初に大きく目立ってしまった。第1ステージの僅か8kmの個人TTでまさかのタイムオーバー失格、初出場で緊張したとはいえ、他にも多くの選手が同じく初出場という条件の中で結果を求める走りをしていたことを考えれば、あまりにも残念な結果と言えるだろう。海外でもニュースになるほどであり、これは日本自転車界にとっては大きなドローバックとなった。日本人選手は他のスポーツでもメンタルが弱いといわれ続けてきたが、奇しくも西村大輝のリタイアはそれを証明する形になってしまったのだ。今後の活躍で取り戻していくしかないが、チームとしてはなかなか大舞台で使いにくくなったというのが現状だろう。

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しかしこのマイナスを一気に吹き飛ばしてくれたのが初山翔(ニッポー・ヴィーニファンティーニ・ファイザン)の活躍だ。30歳という中堅の年代として世界挑戦している男が、世界を相手に一度はたった一人で大逃げを敢行、そしてもう一度も少数での逃げをはかる勇姿を見せたのだ。最終的には完走者の中で再会で大会を終えたが、それにより最下位賞である黒ジャージを手も入れたのだ。印象深い結果を残すことは海外では知名度と人気へとつながる一つの大きなファクター、初山翔はそれをやってのけた。
グランツールは誰にとっても大舞台、ここで評価をあげることで大きくその後の選手生活に影響していく大切な場である。今年ここで目立った選手たちが、今後どのように活躍していくのかが非常に楽しみだ。
H.Moulinette