High Ambition 2020jp.大堀 博美選手リポート:BIWASE CUP 2019 Vol.1
ベトナムで3/8から3/16までの9ステージで開催されたBIWASE CUP2019に参戦してきました。今回、私にとっては初の海外レース&ステージレース。いままで日本国内のレースにしか出たことがなく、完全に未知の領域でした。出発直前まで自分がいったい何が分からないのか自体が分からない状態にあり、大きな不安と共に貴重な経験ができることへの喜びを感じて現地入りしました。
今回、幸運にも加藤代表よりお声掛けがあり、High Ambition International(HAI)で走らせていただきました。チームは日本国籍ですが、メンバーは皆、経験豊富な海外選手達(Arianna Fidantza, Ana Covrig, Serene Lee, Breanna Hargrave)で、初日のレースから一緒に走るだけでたくさん学べることがありました。また、Manel監督は過去に様々な実績を持った経験豊富なとても頼りになる監督でありながら、明るく面白い方です。
ロードレースが個人競技となってしまっている日本国内での女子レースでは経験することのできない、チームとして走ることの楽しさや、チーム戦の考え方にも触れる事が出来ました。
また、国内レースよりも出場人数が多く、密集度の高い集団の中で、周りと比べると悲惨すぎた集団内での動き方が少しずつではありますが改善されてきたことも実感していました。
レース前日にはチームプレゼンテーションがあり、このようなセレモニーにも参加することは初めてで、とても盛大なレースの雰囲気を感じていました。
レース中は集団内で起こっている自分の周囲の事と集団内にチームメンバーが何処にいるのかを確認し、そこへ行こうとする事で精一杯で、レース展開を完全に把握しながら視野を広く持って走る余裕が持てませんでした。自分の身の回りの出来事にしか注意を向けられませんでしたが、その中で私自身が感じた事のレースレポートを書かせていただきました。
・Stage1
ホテルから会場まで車移動かと思っていたら、自走と言うことをホテルを出る直前に知る。朝ごはんは車内で済ませようと思っていたが、まさかのレース直前に食べることになってしまった。
初日は66km(22km×3周)の平坦コース。この日は2日前まで初対面だったチームメンバーが初めてチームとして走るデビュー戦。マネル監督含め、選手たちもお互いにどのような走りをするのかを全く把握できていない。Manel監督からは、チームで固まってみんなで一緒に走ること、周りとコミュニケーションをとること、9日間あるので無理はしないこと、とのアドバイスがあった。
レースがスタートしすぐに、いままで経験してきたレースの中で1番密集度が高く、集団の中を走る怖さを感じていた。チームでまとまって走るようにと言われても、全くポジションを上手くキープできずにどんどん集団後方へ下がってしまう。特に1、2周目は集団内で下がって、上がって、また下がって…の繰り返し。3周回目はBreanna の後ろをキープでき、比較的集団前方を位置する事が出来た。チームメイトの近くに居られた時は、皆頻繁に”Are you ok?”と気遣って声をかけてくれた。
ゴールまであと2kmほどの地点でチームメンバーは5人全員が前方を位置しており、タイランドチームが先頭を走る中、それに一歩下がって平行して走っていた。私はチームの中で前から3番目を走っており、チーム員から「前にでるように」との指示がかかった。チームの先頭に周り、タイランドの2番手の選手の横に出ると、「もっと前だ」と言われ、1番手の横についた。後ろから“Go, go, go!”と声が聞こえ、「先頭を引くの?」と思いながらタイランドを追い抜いて先頭に出た。
最終コーナーを先頭通過し、少しするとゴールスプリント合戦が始まった。私はそれに加わる事が出来ず、どんどん後ろへ下がってしまいながらゴールを切った。1位通過はタイランドの選手、HAIのエースのAriannaを勝たせる事が出来なかった。
後から知ったのだが、”Go, go, go!”と後ろから声を掛けたのはチームメイトではなく、タイランドのメンバーだったらしい。チームメイトはそこまでスピードを上げて欲しかったわけではなかったらしい。
私の勘違いと、チームプレイに関する知識が欠けているが故にチームに迷惑をかけてしまったと、自分はチームのために頑張ったはずなのに結果的にマイナス要因となってしまったと、自分の無知さを悔やんで悲しくなっていた。しかし、チームメンバーは「気にしないで。後ろにいるよりは良いよ。あの時前にいたのにはびっくりした。初めての大きなレースで、ラスト1km地点で先頭を引いているのはすごいことだよ。」と逆に褒めてくれて、気持ち的に救われた。Manel監督にも走り方についてアドバイスをもらい、皆んなのおかけで明日からも頑張ろう!と切り替えることができた。
・Stage2
2日目のレースは後半に8日kmの登りがあり、ラスト15kmくらいは平地を走り、短い上り坂の上にゴールのある88kmのコース。のはずですが、コースプロフィール上の距離と実際の距離に10kmほどの差が…。これに関してはレース後にManel監督も”Mamma Mia”と呆れた口調で話していたほど。
このレースでは体力を最後の登りに温存するように、また、AriannaとAnnaの近くを走ること、とのアドバイスがあった。スタート5分前にフロントディレラーが動かないことに気づき、かなりパニクった。
メカのAlaricが自転車を見てくれても動かず、代車を組みはじめたが、日本出国前にUNOの店長に言われたことを思い出し、自分でケーブルの外れをチェックし始めると、Alaric がそれに気づき、再チェックして直してくれた。無事にマイバイクでレースに出ることができで一安心。
レースがスタートしArianna とAnnaの近くにいようと、昨日Manel監督よりアドバイスを頂いた方法を頭に入れて自分の居場所をキープしようとした。やはり何度も周りの選手たちに埋もれ、後ろに下がってしまったが、昨日よりは少しマシになってきたと思う。集団の中で殆ど上手くいかないことだらけだったけれど、このレースでは今までで初めて集団内をぬいぬいして前方へ上ることができた。
この方法だと、外側から追い上げて前方まで行くよりも、上がり加減は少しずつではあるが足的には楽に上がれる!
レース前半は車道のセンターラインにキャットアイがあり、かなり怖かった。2回ほどその上を乗ってしまったがパンクしなくて良かった…。
スプリントポイントの手前で何人か逃げ出したのが見えたが、力を最後の登りに温存する事と指示が出ていたのでそのまま集団にとどまった。その後、何度か小さなアップダウンの中でペースアップがかかったが、なるべく足を使わないように、周りの流れに乗って走った。
最後の登りに入り、登りはじめは他の選手よりもスピードが出ず、ポジションが後ろに下がってしまったが、少しすると周囲のペースが落ち、逆に自分が周りを抜いていく形となった。18kmある登りだと聞いていたので、自分のペースで登ることにした。前に20〜30人ほど先行されている中、ペースダウンした集団を抜け出し、先頭からドロップしてきた10人くらいを抜き、私の後ろを走っていたBreannaを連れて、Sereneのいる5人の集団にとどまった。登り途中でBreannaがドロップしてしまった。
山頂後の下りと平坦では、先頭集団にArianna が走っていたので、Sereneは集団での先頭交代に加わらず、私もSereneの後ろについて、地元チームの2人の選手がローテーションする形で進んだ。ゴールが見え、スプリントがかかった。はじめは集団内最後尾となってしまったが、昨日のポンコツなゴールを思い出し、少しでも早くゴールできるように踏んだ。2名の選手をゴールライン寸前でかわし、ゴールを切った。
するとなんと、このレースでは10位に入ることができた。海外で初めての表彰を受けることができ、とすごく嬉しかった!
続く
大堀 博美