ジロ・デ・イタリア第17ステージ:前半総合3位にもつけたピータースが念願のプロ初勝利の大金星!カラパズとランダ揺動でニーバリタイムを失う、モビスターが戦略的優位に
本格的な山岳ステージが続く中、このステージは総合系のバトルの場とはならないと思われた。しかしゴールへの緩斜面でモビスター勢が仕掛けると、昨日必死の仕掛けをしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)は対応できず、僅かではあるが貴重なタイムを失う結果となった。そんなステージを制したのはナンス・ピータース(AG2R)、大逃げの第6ステージで総合3位にまで一時は上り詰めた男が、念願のプロ初勝利をジロという大舞台でやってのけた。総合系エース不在のAG2Rにとっては、その後第11ステージまで総合3位をキープ、そしてステージ勝利まで収めたピータースの活躍はまさに予想外の大収穫だっただろう。
この日も11人の逃げに乗ったピータース、今大会で何度となく逃げに乗っている男はこの日も好調だった。さらにボブ・ユンゲルス(ドゥクーニンク・クイックステップ)、ダビデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグロエ)らが合流し、一時は18名まで広がるが、協調性はあまりない。そこからヤン・バークランツ(チームサンウェブ)が抜け出すと、これにより逃げ集団は分裂してしまう。
しかし残り30km、バークランツを捉えた逃げ集団は再び一つとなる。しかしここからもアタックの応酬が激しく繰り返される中、残り16kmでピータースが仕掛けると、あっという間に後続との差が広がっていった。必死の形相でペダルをこぐピータースは、気が付けば後続のもと追走仲間たちに1分の差をつけ独走態勢となる。
その背後では総合系の選手たちも心理戦が繰り広げられる。ピータース独走の中、ゴールまでの緩斜面でまずはミケル・ランダ(モビスター)が仕掛ける。これに反応したのはここ数日目立っているヒュー・カーシー(EFエデュケーション・ファースト・ドラパック)、するとさらにマリア・ローザのリチャード・カラパズ(モビスター)もミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)のアタックに反応してニーバリらから抜け出て加速をしていく。
これに対して動けないニーバリ、さらにはプリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)、大きなタイムロスとはならなかったが、ニーバリが全く動けなかったところを見ると、これからのステージで苦しい局面が出てきそうだ。それに対して二人体制で動けるモビスターは、ランダも総合4位につけているだけに圧倒的に有利な状況となってきた。
先頭ではピータースが歓喜のゴール、プロ初勝利がジロのステージ優勝という結果に、喜びを爆発させた。もう一人逃げでステージ4位に入ったファウスト・マスナダ(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック)もステージ優勝をあげるだけでなく毎ステージのように逃げに顔を出しており、今大会目立った存在となっている。
「この勝利はでかいよ!グランツールでの勝利だろ、これは覚めない夢なんじゃないかと思うよ。ユンゲルス、フォルモロ、トーマス・デ・ヘント(ロット・ソウダル)と言ったそうそうたるメンバーの中で、メンタルがすり減らないように気を付けたよ。だからついていくことに必死、何とか堪えてタイミングを見計らっていたんだよ。最低限の協調で脚を貯めて、後は勝利を狙って仕掛けたんだ。誰かを追走する立場は嫌だったから、積極的に前に出たんだよ。一発のアタックで仕留められてよかったよ。残り1.5kmからは、監督が”おまえならできる!”って絶叫してたね。その時点でコースがテクニカルになったんで、勝利を確信したよ。」
~ナンス・ピータース ステージ1位
「ロペスが仕掛けたんでそのまま一緒に仕掛けたんだよ。後ろ振り返ったらギャップが出来ていたんで、これはいけると確信して二人で協調したんだ。この数秒を獲得できたのは大きな意味があるよ。ここはジロ、なにが起きるかわからないし、最後の個人TTを考えたら、1秒でも多くタイム差を確保しておけば心の余裕が持てるからね。」
~リチャード・カラパズ 総合1位
「予測はしていたよ、でも調子が良くなかったんだよ。でもまあいいさ、ステージ全般としては何とか切り抜けられたからね。」
~ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) 総合2位
「まだガードレース直撃の傷が痛いんだよ。特に胸筋が痛いんだけど、徐々に収まってきているよ。それはいいことだよね。だって僅からほころびもタイムに繋がるのがレースだしね。誰もが限界の中で勝利を欲しがっている、誰もがきついんだよ。」
~プリモズ・ログリッチ 総合3位
ジロ・デ・イタリア第17ステージ
1位 ナンス・ピータース(AG2R) 4h41’34”
2位 エステバン・チャベス(ミッチェルトン・スコット) +1’34”
3位 ダビデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグロエ) +1’51”
4位 ファウスト・マスナダ(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック)
5位 クリスツ・ニーランズ(イスラエル・サイクリングアカデミー)
6位 タネル・カンゲルト(EFエデュケーション・ファースト・ドラパック) +2’02”
7位 ヴァレリオ・コンティ(UAEチームエミレーツ) +2’08”
8位 ジャンルーカ・ブランビッラ(トレック・セガフレド)
9位 クリス・ハミルトン(チームサンウェブ) +2’22”
10位 アンドレア・ヴェンダラメ(アンドローニ・ジョカットリ・シデルメック) +2’34”
ジロ・デイタリア・総合順位
1位 リチャード・カラパズ(モビスター) 74h48’18”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +1’54”
3位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ) +2’16”
4位 ミケル・ランダ(モビスター) +3’03”
5位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド) +5’07”
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +6’17”
7位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +6’48”
8位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +7’13”
9位 パヴェル・シヴァコフ(チームイネオス) +8’21”
10位 ダビデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグロエ) +8’59”
H.Moulinette