ジロ・デ・イタリア第14ステージ:総合勢大きくシャッフル!独走でステージ優勝のカラパズがマリア・ローザ獲得!ログリッチとニーバリはこの日も心理戦を繰り広げる

昨日の第13ステージで大方絞られると思われていた総合争いは全く落ち着かぬままに第14ステージへと持ち込まれた。そして距離が短いながらもアップダウンが鋸刃のように続くこのステージでようやく総合勢が大きく絞り込まれる結果となった。ログリッチはこの日も攻めることなく、TTで稼ぎ出した貯金がどんどん減り、結果大混戦となりつつある。そんなステージを制したのはモビスターのダブルエースとなっているリチャード・カラパズ(モビスター)、途中で総合勢の集団から抜け出すと、そのまま追走を振り切り独走でステージ優勝をあげた。
ショートステージだけに逃げが最後まで容認される可能性は少なかった。しかし大きくタイムを取り返したいミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)らが序盤から積極的な仕掛けを見せるなど、この日は序盤から荒れる展開を予想させた。集団が分裂し、スタートから7.5km、サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)が動くと、それに合わせてカラパズとログリッチが反応、すぐさま先頭集団へと合流を果たすと、ニーバリらも合流し、あっという間に動きは封じられる。そんな中で逃げが確定し、この日のペースメーカーとなる。逃げには山岳賞のギウリオ・チッコーネ(トレック・セガフレド)が乗り、この日も山岳賞を荒稼ぎ、ライバルたちとの差を更に広げた。

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ログリッチ擁するジャンボ・ヴィズマは積極的に集団コントロールをするが、役不足なのは明白、山岳でアシストがいないログリッチにとってはここ数日のようにヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)に批判されようが、なかなか仕掛けることができない、防御をベースとした走りしかできないというのが現実だ。その状況はこの日も変わらず、総合勢に絞られた集団が駆け引きを始めてもログリッチは淡々と集団内で状況を傍観、動きがあれば反応するというのを繰り返す。
総合リーダーのヤン・ポランク(UAEチームエミレーツ)はこの日最高標高のコル・サン・カルロで遅れて行き、逃げのメンバーも次々と捉えられていく。そして頂上まで3kmを残し、カラパズが動く。カラパズとニーバリとのタイム差が少ないためにニーバリは動きたいところだが、ここはぐっとこらえれログリッチに追走を委ねようとする。しかしこの日のマリア・ローザ獲得に興味を見せないログリッチはマイペース走法に徹し、その間にカラパズとのタイム差をどんどんと広がっていく。ミケル・ランダ(モビスター)もカラパズのアシストに回り、追走をしない。結局ニーバリは自らペースアップを図るが、ただついてくるだけのログリッチとランダに対し、自らだけが脚を使うわけにはいかない。
それでも頂上を超えるとニーバリは得意の下りでアタック、しかしログリッチはここでもニーバリのペースに対応する。ランダに加え、ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)、さらにはロペスがそれを追走するが、下りな苦手なロペスは必至の走りとなる。

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途中ログリッチがペースアップするシーンも見せたが、ニーバリが冷静に対応、結局集団はカラパズの逃げ切りを容認する形となった。カラパズはぐんぐんとその差を広げ、下りに入った段階で20秒ほどだったタイム差は、ゴール時点では2分近くまで広がっていた。カラパズはこれで余裕をもってマリア・ローザ獲得、山岳が得意なモビスターがついに大会の主導権を握ることとなった。
ログリッチは自らが総合リーダージャージを獲得するよりは、ライバルチームと選手が獲得することで自らへのプレッシャーが緩まることを期待しての戦略かと思われるが、ニーバリにとってはこれで対応しなければならない相手が増え、心労が増えそうだ。

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「サン・カルロの上りでライバルたちを見ていたら、うまく協調できていないのが分かったんだよ。それにニーバリとログリッチはお互いをマークしているのもわかったしね。だからタイミングさえ間違わなければうまくいくと思ったんだよ。今日はステージ勝利が目的だったんだけど、結果的にマリア・ローザまで獲得できてしまったね。これでうちは手の内にランダと僕の二枚のカードになったからね。二人とも今大会調子いいしね。ランダは昨日までの二日間で脚を使ったから、今日は好調とは言い難かったんで、僕が動いたんだよ。今日はしっかりと脚を休めてくれたと思うよ。」
~リチャード・カラパズ ステージ1位 総合1位
「僕は舌戦をするつもりは全くないんだよ。僕はレースするためにここにいるんだよ。まだいい調子で走れているよ。今日はただ全力だったよ。何もロマンチックなことも戦略的なこともなかったよ。ただ全力だったからね。」
~プリモズ・ログリッチ ステージ8位 総合2位
「今日はログリッチは違ったよ。ちゃんと自分の役割を果たしていたよ。お互い優勝を目指しているからね。
~ヴィンチェンツォ・ニーバリ ステージ3位 総合3位
ジロ・デ・イタリア第14ステージ
1位 リチャード・カラパズ(モビスター) 4h02’23”
2位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +1’32”
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +1’54”
4位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ)
5位 ミケル・ランダ(モビスター)
6位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)
7位 パヴェル・シヴァコフ(チームイネオス)
8位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ)
9位 ジョー・ダンブロウスキー(EFエデュケーション・ファースト・ドラパック)
10位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・メリダ) +2’01”
ジロ・デイタリア・総合順位
1位 リチャード・カラパズ(モビスター) 58h35’34”
2位 プリモズ・ログリッチ(ジャンボ・ヴィズマ) +07”
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ) +1’47”
4位 ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグロエ) +2’10”
5位 ミケル・ランダ(モビスター) +2’50”
6位 バウク・モレンマ(トレック・セガフレド) +2’58”
7位 ヤン・ポランク(UAEチームエミレーツ) +3’29”
8位 パヴェル・シヴァコフ(チームイネオス) +4’55”
9位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +5’28”
10位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +5’30”
H.Moulinette