シクロクロス界から二人の刺客、最強24歳コンビは果たしてどこまでロードで結果を残すのか、末恐ろしいモンスター級の才能はいかに炸裂するのか楽しみな春のクラシックシーズン
今シーズンもいろいろな話題がロードである中で、注目を浴びている一つがシクロクロスのツートップがそろってクラシックシーズンを戦うということだろう。元世界チャンピオンのワウト・ファン・アールトは3度の世界チャンピオンに輝き、今シーズンからトップチーム入りを果たした。契約問題でもめたものの、最終的にはワールドツアーのジャンボ・ヴィズマへの加入が前倒しとなった。これで全てのクラシックに参加が可能となった。
そして今年世界チャンピオンに返り咲いたマシュー・ファン・デル・ポエルは、ここ数シーズン怪我などに泣かされてきたが、今シーズンは絶好調だ。出場したレースで1戦を除いてすべて優勝というのは常識では考えられない圧倒的な強さだ。そのファン・デル・ポエルは所属しているコレンドン・サーカスは、所属のほとんどがシクロクロスの選手でありながら、プロコンチネンタルチームということで招待(ワイルドカード)という形での出場が可能となった。ファン・デル・ポエルは昨シーズンロードでもオランダチャンピオンとなり、出場したいくつかのレースでも結果を残してきた。チームとの契約も2020年まで延長、成長を続けるチームの核として今シーズンさらなる結果を求めることとなった。そのコレンドン・サーカスはフランダースクラシックの一戦、ヘント・ウェベレヘムへのワイルドカードを獲得、今年のシクロ世界王者がついにクラシックの頂点を狙うこととなった。
果たしてシクロクロスからの転向というのはどうなのだろう、そう思った人も多いはずだ。実はシクロクロスからロードへの転向組には人数もそこそこおり、また成功者が多い。現役でまず名前が挙がるのがゼネク・スティバー(ドゥクーニンク・クイックステップ)だろう。シクロクロス世界チャンピオンからロードへと華麗なる転身を遂げると、ストラーデ・ビアンケで優勝、さらにはツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでもステージ勝利を挙げている。他にもラース・ボーム(ルームポット・チャールス)もシクロクロスで世界チャンピオンになっている。さらにはスティバーのチームメイトでもあるジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)もジュニア時代に世界選手権で2位表彰台に上がった経験を持つ。
シクロクロスのような悪路に慣れた選手は、クラシックのように比較的荒れた石畳などのコースを駆け抜けるレースで強さを発揮するほか、上りゴールなどでのスプリントで強さを見せる選手が多い。転向するにはある程度の実力が認められてロードに引き抜かれるパターンが多いので,結果を残している選手が多いのは当然と言えるかもしれない。しかしながら1時間という限定された時間内でのレースから、数時間にも及ぶロードレースの転向は難しいのではないかと思ってしまう。それに関してスティバーは「シクロでは1時間ずっと全力で力を抜くところがほとんど無いけど、ロードはポイントポイントで力を出すのが中心で、後は休んでいられるから楽といえば楽」と発言しており、適応は比較的容易なのかもしれない。
圧倒的な強さを誇るシクロクロッサー二人が揃ってクラシックに挑む今シーズン、果たしてどんな結果を残してくれるのかが非常に楽しみだ。それぞれ昨年度からロードでもすでに適応を見せており、本格的にトップレースでぶつかる今シーズン、この二人がクラシックシーズンの台風の目となるかもしれない。
H.Moulinette