進化する電動コンポ、独自路線をひた走るSRAMが世に送り出してきたAXSが凄い!1X 、2X、MTBコンポとのミックスまで可能な12速はライドスタイルに合わせてバーサタイルな選択可能

電動コンポが世に出て大分経つが、それは着実に進化を遂げてきた。シマノとカンパニョーロが2台巨塔としてロード界を牛耳る中で、独自路線を歩み続けるスラムは電動では後発となり常に後塵を拝する形となってきた。しかしeTapで無線スタイルをいち早く確立すると、2019年度AXS(アクシス)ではさらなる独自の進化を加速させ、他の追随を許さないライドスタイルに合わせた柔軟性のある選択が可能なコンポーネントとなった。

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レースシーンで一時期半数近いシェアを誇りながらも、電動化に遅れたスラムは気がつけばマイナーな存在となっていた。それでも独自路線の開発を続けて登場させたeTapはしっかりと市民権を獲得、高価であるがゆえに高嶺の花ではあるが、着実にファンを増やしていった。スラム自体はアメリカのでのMTB市場をしっかりとターゲットにし、シマノしかライバルがいないオフロードコンポーネントで安定したシェアを獲得、そして今回はロードとMTBで互換性のある無線システムを導入、シクロクロスシーンやグラベルバイクなどの視野獲得も想定したシステムとなっている。
まず魅力の一つが12速化だ。Xレンジと呼ばれるシステムは、よりワイドレンジなギア設定となり、さらに1T差のギアを増やしたことで、より滑らかなギア構成となっている。スーマートフォンのアプリからバッテリー状況と共にディレーラーの動作調整ができ、Xレンジと相まってより静かで正確な変速が約束される。また無線は独自の物に加えブルートゥースとANT+にも対応している。また変速のパーソナライズが可能となっており、好みに合わせたフィーリングを追求できるのもまた魅力と言えるだろう。

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フロントシングルとダブルに対応しており、軽量なだけでなく、昨今フレームメーカーがディスクオンリーに無理やり舵を取る中で、既存のユーザー向けにキッチリとキャリパーも用意している。各社がリムブレーキ開発を減らす中で、魅力的なのはきちんとユーザー向けに新型のキャリパーブレーキを用意していることだ。ブレーキレバー側でブレーキタッチやフィールを調整できるようになっており、制動力などが調整できることで、ディスクに劣るというマーケットの思惑は的外れになりつつある。シングルピボットながらもコンパクトでエアロ構造、さらには片利き防止だけではなく、昨今流行になりつつあるワイドリムとワイドタイヤにも対応、28cまで対応できる懐の深さは、ディスクのフィールが好きになれないユーザーには朗報だろう。

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シフト操作においてAXSではコンペンセイティングモードとシーケンシャルモードが追加された。コンペンセイティングモードでは、フロントの変速に伴いリアディレーラーが1段ないしは2段シフトし、ギア比の変化を最小限にとどめる。またシーケンシャルモードでは、自動的に次のギア比へとシフトするのだ。つまりフロントギアはそれに合わせて自動で変速(任意も可能)、滑らかにギア比通りのシフトアップ、シフトダウンが実現しており、より滑らかにすべてのギア比を使うことが可能となった。
ユーザーの嗜好が大きく分かれる昨今、コンポーネント選びで苦労させられることが多いが、スラムのAXSはプロレーサー、アマチュアレーサー、グラベルロード、ツーリングバイク、シクロクロス、MTBに至るまですべてで共通のプラットフォームとすることで、とても魅力的なものとなっている。シマノとカンパニョーロに次いで、第3のコンポーネントと呼ばれることが多かったスラムだが、それは大きな間違いかもしれない。まったく違う独自の視点からの開発で、個性的かつ最先端を体感できるという観点から言えば、スラムはシマノとカンパニョーロと並ぶ有力な選択肢の一つと言えるだろう。
H.Moulinette