2019年度のツール・ド・フランスルート発表!それと同時に主催者ASOの代表がレースでのパワーメーターの使用禁止を訴える

今シーズンも終わり、早くも来シーズンのことが気になるのが気の早い自転車ファンだが、来年度のツール・ド・フランスのルートが公表された。今シーズンから人数が8人となり、レースがより面白くなったという声が多い中で、レース主催者のASOはかねてから議論となってきたレース中のパワーメーター使用に関して、明確にレースでの使用禁止を訴える声明を発表した。機材メーカーがパワーメーター開発に資金と時間を割く中で、それに逆行する形で禁止を訴える背景には、「人間対人間」のレースのほうが面白い、という多くのファンのがある。

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まずは2019年度のコースだが、ベルギーで開幕を迎え、そして前21ステージ中山頂フィニッシュが5ステージ、そのうち3ステージでが標高2000mを超えるというクライマーバトルが用意された。しかし代わりにそれらステージは距離が短縮され、第14ステージのトゥールマレー峠はわずか117kmというショートステージとなっている。また第19ステージは123km、第20ステージは131kmとこちらも短く、最後の勝負所できつい山岳のショートステージというバトルを誘発しやすいような設定となっているのだ。このステージは33.4kmの上りでの頂上ゴールという地獄のような設定、ここまで僅差で来た場合にはこの一撃で総合が大シャッフル、大逆転される可能性すらある設定となっている。実はこのショートステージという考え方は、先日の世界チャンピオンピーター・サガン(ボーラ・ハンスグロエ)の「レースは見るには退屈」発言を踏襲したものであり、「短い中で濃密な駆け引き」を求めているASOの思惑が感じられる。

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「我々はレースを難しくしようとは思っていない。実際に超級を減らして2級山岳を増やすことにしたのは、レース中盤でのコントロールがより難しくなり、活発な駆け引きが行われるように仕向けたいからなんだ。さらにはステージ中盤でのボーナスタイムでも活発な仕掛けが行われると思うよ。」主催者ASO代表のクリスチャン・プルドムはそう語った。
そして何よりも今現在ASOはUCIに対してツール・ド・フランスでのパワーメーターの使用禁止を求めていることを公の場で公言した。パワーメーターとはクランクなどに取り付けられている機器で、回転数やワット数など様々なデータが手元のサイクルコンピューターで表示されるシステムだ。有名なところではクリス・フルーム(チームスカイ)がパワーメーターに視野を置いた状態で山岳を上るなど、一定リズムで上ることを数値化した指針で見る使い方が一般的になっていた。

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しかしここ数年選手たちの間からも、「機械と勝負しているのではないはずだ」とパワーメーターのレースでの使用に関しては批判的な声が上がってきていた。選手間での駆け引きよりも、数値で動く動かないを判断するやり方がレースを面白くないものにしているという声は、ここ数年ずっと聞かれてきたことだ。
そしてついにASOという大物が声を上げてきたことで、まことしやかに囁かれてきたパワーメーターのレースシーンでの使用禁止は現実味を帯びてきた。
「パワーメーターのレースでの使用に終止符を打ちたいと思う。レースというのは”読めない展開”があるから面白いのであり、データで正確無比な走りをして醍醐味である駆け引きをしないのは”つまらない”。」とするASOはUCIに早急な禁止を求めている。

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「パワーメーターはトレーニングで使うものであり、レースの準備のために使うものだ。それによって戦略を作るものではない。それは人間味にかけた面白みに欠けたものとなるだろ。スポーツとして観衆が求めるのは、選手が主役のレースだ。機材や主催者が主役なのではないんだよ。」ASOはそう語るが、ハンマーシリーズを主宰するVELONにとってはデータはビジネスの一部であり、切り離せないものとなっている。
それを踏まえたうえで、ASOは「我々が言わずとも選手やUCIやほかの主催者などももう気付いているはずだ。これは今向き合って解決策を模索しなければならない問題の一つなんだよ。」と締めくくっている。
果たして2019年度のツールではパワーメーターは許容されるのだろうか、それとも禁止されるのだろうか?
H.Moulinette