変わる世界選手権シリーズ、2020年度からUCIが導入を目指すワールドツアーワンデイシリーズはレース界を根底から変えるのか?F1のようなシリーズ戦で20~25戦の年間開催を目指す

UCIの改革はいったいどのように自転車界を変えることとなるのだろう。2020年度シーズンは、もしかしたら大幅にUCI世界選手権シリーズ、つまりワールドツアーが大きく変貌を遂げるかもしれない。
現在レースは、年3度のグランツール(ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ)の3戦に加え、1週間程度のステージレース、そしてワンデイクラシックで構成されている。しかしUCIは2020年度シーズンから年間20戦から25戦程度のシリーズ戦としてワンデイクラシックを行う予定のようだ。ちょうどモータースポーツのF1のような形のシリーズ戦で、総合チャンピオンを争う予定のようだ。これによりクラシックに出場する選手は、グランツールやステージレースに出場するのは困難になりそうだ。
ではこのシリーズ戦を行うことにどんなメリットがあるのだろうか?UCIはこれらレースの放映権や収益を主催者のみならず、各チームにも振り分けたいという思惑があるようだ。主催者側がそれに納得をするかどうかは今の段階でまだまだ未知数だと言わざるを得ないが、少なくともUCIは何とかして自転車レースをよりエンターテイメント性が高く収益性が高いものへと変えていきたいようだ。
「まだまだ賛同は得られていないが、我々のビジョンとしては、UCIがシリーズ戦の主導権を握ることで、放映権やその他の収益を一度我々がプールし、それを分配する方式を考えている。これにより長らく続いてきた主催者とチームとの争いを終わらせることができると思うんだ。」ラパルシャン会長はそう語る。
予定で1月から4月、そして8月中盤からシーズン終了までに振り分けられる。ミラノ・サンレモ、ツアー・オブ・フランダース、パリ~ルーベ、リエージュ・バストーニュ・リエージュ、イル・ロンバルディアの5つのレースはモニュメントとして特別枠となる。現在19戦行われているワールドツアーワンデイをさらに最大で6戦ほど追加し、より多くの選手たちが参加できるようにするとともに、より収益を上げることを目標としている。
グランツール、ツール・ド・ロマンディ、クリテリウム・ド・ドーフィネ、ツール・ド・スイスらステージレースはシーズン中盤に集約される形となる。しかしこれら以外のレースはスケジュール的にシリーズ戦と重なることが予測され、それらレースは廃止、または開催時期の変更などが求められることとなりそうだ。実際にいくつかのレースはすでに資金繰りが苦しくなっており、それらは間違いなく廃止へと追い込まれるだろう。またはステージレースを廃止し、新ワンデイレースとして生まれ変わることも選択肢としてはありそうだ。
「我々はスポーツのグローバル化を図りたいと思っている。できる限り多くの大陸でレースを行いたいと思っている。巨大なマーケットであるアメリカ大陸とアジアではメジャーなレースは行われていない。もし行うことができれば、それらマーケットから各チームがスポンサーを獲得することも可能となるだろうね。」ヨーロッパだけでは立ち行かなくなったレース界の立て直しには、アジアとアメリカの資金が不可欠だとUCIは感じているようだ。
各チームの選手は原則現在行われるワンデイには出場の義務が生じる。しかしスケジュールの関係から移動距離などを考慮して、レースをスキップする権利も与えられるということだ。そして年間を通しての総合で競い合うのだ。またこれらレースにはプロコンチネンタル及び主催者推薦のワイルドカード枠も用意される予定だ。
放映権の問題はデジタル配信網を積極的に利用することを考えているようだ。現状ばらばらの放映権を統一化し、その収益を主催者とチームへと分配するシステムづくりを目指しているとのことだ。
「改革はリスクを伴うものだ。でもリスクを背負わねば変えられないこともあるんだ。問題は山積みなのはわかっているけど、僕らは必ず解決策はあるよ。」ラパルシャン会長は改革に前向きだ。
さて、2020年度レース界はどのように変わるのか、改革までの残された時間はあまりにも短い。
H.Moulinette