最強ベテランの世界チャンピオンのバルベルデ!「これで心置きなく引退できる」としながらも東京五輪での金メダル獲得に意欲!
最強のベテランの活躍は、世のお父さん世代サイクリストに絶大な夢と希望を与えている。アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、38歳のシーズンでついに念願だった世界チャンピオンにまで上り詰めた男は、「これで心置きなくいつでも引退できるよ。」としながらも、「東京五輪でメダルを狙うよ」と持ち前のハングリーさをのぞかせた。
世界チャンピオンの座に挑むこと12回目、ついに世界チャンピオンとなったこともすごいのだが、その12回でなんと7回の表彰台(金1、銀2、銅4)という記録もすごいのだ。コースは毎年変わり、スプリンター向けもあればパンチャー向けもあり、さらにはクライマー向けもと一定ではない。そんな中で出場半数以上のレースで表彰台と言うのは、以下にバルベルデが究極の「オールラウンダー」であるかを物語っている。
もちろんそれは誰もが知っていたことでもある。ジロ・デ・イタリア。ツール・ドフランスでこそ総合優勝はないが、ブエルタ・ア・エスパーニャでは2009年に総合優勝を果たし、通算では24回のグランツール出場で17回のトップ10フィニッシュ、表彰台はそのうち8回もあるのだ。さらには総合だけではなく、ポイント賞も4回(ポイント賞争いトップ10入りは14回)獲得している。さらには山岳賞争いでも1位こそないものの、トップ10入りは11回もあるのだ。ステージ優勝も何度となくしており、山岳ステージのみならず、なんと平たんスプリントステージで生粋のスプリンターたちを撃破しての勝利も数多くある。
ワンデイクラシックレースではリエージュ・バストーニュ・リエージュで通算4勝、フレッシュ・ワロンヌで5勝、クラシカ・サン・セバスチャンを2勝とパンチャー系向けのコースで抜群の安定感を示している。さらには1週間程度のステージレースの総合優勝も多く、山岳系、平地系問わず総合優勝を果たしている。
この世界選手権の勝利でプロ通算122勝目、勝利を量産しやすい純粋なスプリンターであれば通算勝利数100勝と言うのは可能性が高いが、オールラウンダーとしてこの勝利数は規格外と言えるだろう。今シーズンはこの世界選手権の勝利で14勝目、自己最多の年間15勝に並びそうな勢いだ。この安定感で毎年勝利を積み重ねた結果、年間総合ランキングでも通算5度目(2008、2009、2014,2015が年間1位)の1位を狙っている。実はこの年間順位でも、2003年度以降ではトップ10圏外だったのは2015年のわずか1度だけ、後は7度のトップ3入りという凄さだ。この世界選手権優勝で、現段階での世界ランクでも1位となっており、まさに最強大ベテランは手の付けようがない暴れっぷりだ。
バルベルデの特徴として、ベテランになればなるほどに磨きがかかるその老練な勝負勘は目を見張るものがある。時には積極的に動くこともあるが、ほとんどの場合で、その存在感を消して集団に潜んでいることが多く、とにかく無駄が少ないのだ。勝負所までぐっと堪えておいて、そこからの一撃で勝負を決めてしまうことが多いのだ。だからこそ時折積極的に動くことがより効果的となるのだ。勝利の中にはかなりの長距離を独走しての逃げ切り勝利などもあり、多彩な勝利パターンがバルベルデの強さの秘訣とも言えるだろう。
これで狙うのはオリンピックの金メダルのみ、2020年のコース的にはバルベルデにも十二分にチャンスのあるハードなコースだけに、有終の美を40代ゴールドメダリストで飾るのかにいまから楽しみになってきた。
H.Moulinette