世界選手権2018ロードレース:絶好調の最強大ベテラン、バルベルデがついに念願の世界チャンピオン獲得!女子は ファン・デル・ブレッゲンがTTの銀に続き金メダル獲得!


©Tim D.Waele/Getty Images
長かった・・・何度となくあと一歩まで来ていた世界チャンピオン、しかしそれは近くも遠かった。そしてここ数年はスプリンター有利のコース設定だったが、それでも結果は残してきた。ただ金メダルは遠かった。だが今年の激坂を有するクライマー向けのコースは、まさにアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)のために用意されたようなコースだった。過去に銀2個(2003、2005)銀4個(2006、2012、2013、2014)を獲得してきた男は、グランツール制覇、モニュメント制覇、に次いで、手にしていなかった最後の冠、念願だった世界選手権のアルカンシエルをついに手にして見せた。

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258.5kmと言う長丁場は、残り60kmを切ると激しい駆け引きが始まった。先行しているのは逃げの4人、だが逃げ切りなどと言う甘い夢はあっという間にかき消されていく。だが残り60km、落車が発生しブエルタで大活躍を見せたアメリカのエース、ベン・キングと今シーズン大飛躍を遂げたプリモズ・ログリッチ(スロヴェニア)の二人の優勝候補が落車に巻き込まれてしまう。二人は集団復帰は果たすが、この後の上りで脱落していってしまう。

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各チームエースを勝たせるべく積極的に動くが、とくにイギリス、スペイン、イタリア、フランスの大国はより鮮明な動きを見せる。イギリスはアダム・イェーツ、スペインはバルベルデ、イタリアはヴィンチェンツォ・ニーバリ、そしてフランスはジュリアン・アラフィリップを核として明確に意思を示す。
残り30kmを切り、イタリアはニーバリに加えジャンニ・モスコンを加え4人が残っている。そして残り24kmでスティーブン・クライズワイク(オランダ)がアタックを仕掛けると、バトルはさらにギアをあげたサバイバルへと突入していく。これでニーバリが脱落、エースの姿を探すモスコンだったが、これで実質モスコンがイタリアの最後の砦となる。

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そして先行していた逃げ4人が全て吸収された残り21km、飛び出したピーター・ケノー(イギリス)を負い飛び出したミカエル・ヴァルグレン(デンマーク)が飛び出し、そのまま主導権を握る。他の選手も一時合流はしたが、結局ヴァルグレンは独走態勢のまま残り残り10kmで迎える3kmにわたる平均勾配11.5%、最大勾配28.5%という魔の上りへと突入していく。

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フランスはグランツールでも活躍したティボー・ピノー、ロメイン・バルデ、そして今シーズン勝利量産のアラフィリップと言う3枚看板が、マイケル・ウッズ(カナダ)、モスコン、バルベルデを引き連れ優位に進める。しかしヴァルグレンを捉えると、すぐさま動いたのはバルデだった。アラフィリップのための陽動だったが、これにウッズが反応、そのままペースを上げていってしまう。これでなんとアラフィリップが脱落、反応できたのはバルデに加え、バルベルデとモスコンだけだった。

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このまま勝負は4人に絞られたかに思われたが、なんとその背後からトム・デュムラン(オランダ)がTTでの雪辱を晴らすべく黙々と差を詰めてくる。残り2km、なんとデュムランは合流に成功、そしてモスコンが代わりに脱落をする。スプリントとなれば不利になるデュムランは残り1kmで仕掛けるが、あっさりと抑え込まれると、バルデ、ウッズは無駄な仕掛けよりも直接対決のスプリントを選択、それによりバルベルデは自ら動かざるを得ない状況となる。

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先行してスプリントを開始したバルベルデ、それにバルデとウッズが食い下がるが、ピュアスプリンター相手でも勝ってしまうことがある大ベテランの切れ味鋭い加速、そして誰よりも世界チャンピオンジャージを欲してきたそのハングリーさがライバルたちを上回った。12回目の世界選手権挑戦にして初の金メダル獲得、ついにバルベルデが名実ともに世界最強の座を手に入れた。

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「この勝利を待ちわびていたんだよ。世界チャンピオンこそが僕がずっと追い求めてきた称号なんだよ。ツール・ド・フランスも長年狙ってきたけど難しかった、でも最大の目標だった世界王者の座をこれで手に入れることができたんだ!過去同胞が世界チャンピオンになったレースで一緒に走ってきたことはあったけど、自分が勝利できる日が来るとはね!過去何度もあと一歩で敗北して涙してきたけど、やっぱり世界チャンピオンになっても涙したよ。過去6個のメダル、でも金メダルは遠かった。それがようやく手にできたよ!今日は本当にチームに感謝だよ。チームワークあってこそのこの金メダルだよ。」バルベルデは冗舌に語り続けた。
「デュムランが追いついた時に、これで誰かがメダルを失ったな、と思ったんだ。彼は独走力もあるので早めに仕掛けることもできるからね。僕もバルデやウッズの後ろでのんびりと様子見ができたらよかったんだけど、もうあの状況だとそんなことも言ってられなかったね。だから前に出て積極的にライバルたちに目を光らせながら、少しだけペースを抑えて脚に力を貯めていたんだ。でも皆が動かなかったから、残り300m、少し早いかなとも思ったけどそのままスプリントを開始したんだ。」

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「正直去年のツール・ド・フランスでの落車で大怪我をして、これで選手生活が終わるかもしれないと思ったんだ。でも今シーズン昨シーズン序盤を超えるようないい結果が残せて、そのままの勢いでここまでこれたよ。これ以上望むことはもうないね。」38歳の最強ベテランは史上2位の高齢世界チャンピオンとなった。
「そりゃ悔しいよ。2位に満足したら終わりだろ。でもこのレース後悔はないよ。バルベルデに真っ向勝負を挑んで負けたんだからね。」~バルデ
「正直勝てると思ったんだ・でも残り150mで足がつってしまい万事休す、何とか3位は確保できたけど、すごく悔しいよ。でもバルデとバルベルデと3人で走れたのはすごくいい経験だった。彼らは強者でありながら、それに奢ることなく常に全力だからね。」~ウッズ
世界選手権2018エリートロード
金メダル アレハンドロ・バルベルデ(スペイン) 6h46’41”
銀メダル ロメイン・バルデ(フランス)
銅メダル マイケル・ウッズ(カナダ)
4位 トム・デュムラン(オランダ)
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ) +13”
6位 ジャンニ・モスコン(イタリア) +43”
7位 ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク)
8位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
9位 ティボー・ピノー(フランス)
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル)

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女子エリートは、またしてもオランダの圧倒的強さだけが際立った。オリンピックゴールドメダリストでもあり今大会個人TTで銀メダルを獲得したアンナ・ファン・デル・ブレッゲン(オランダ)がなんと驚きの40kmアタックを見せたのだ。そしてそのまま逃げに単独で追いつくと、そこからさらにギアを上げ独走態勢へと持ち込み、なんと2位に4分近い大差をつけての圧勝となった。
「あまりレース中は自分の状況と言うのを把握していなかったのよ。ただひたすらゴールラインまでペダルを踏み続けたのよ。今シーズン何度となくゴール手前で捕まって勝利を逃してきたから、必死だったわ。正直仕掛けたのは早すぎるかなとは思ったわ。でもやってみなければわからないし、実際動いたら一気に後続と差が開いたんで驚いたわ。世界チャンピオンは誰にとっても目標だと思う。そう簡単に手にすることができないのだから価値があるのよ。」 ファン・デル・ブレッゲンは得意の大逃げをなんとこの大舞台で決めて見せた。

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世界選手権2018女子エリート
金メダル アンナ・ファン・デル・ブレッゲン(オランダ) 4h11’04”
銀メダル アマンダ・スプラット(オーストラリア) +3’42”
銅メダル タチアナ・グデルツォ(イタリア) +5’26”
4位 エミリア・ファーリン(スウェーデン) +6’13”
5位 マルゴルザタ・ヤシンスカ(ポーランド)
H.Moulinette