ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ:最後の山岳で総合決着!サイモン・イェーツが念願のグランツール初制覇!ステージ優勝のマスが驚きの総合2位!ロペスが逆転で総合3位!

最後の最後まで分からないのがレース、そしてその総合をめぐるバトルは最後の上り勝負まで持ち越された。仕掛けた総合リーダージャージのサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)に対し、あきらめない姿勢を見せていた総合2位のアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)だったが、総合6位のナイロ・キンターナ(モビスター)と連携しての作戦もこの日も空回り、最後はアシストに回ったキンターナが共倒れとなり、バルベルデが総合5位、キンターナが総合8位まで順位を落とす結果となった。
そんなステージを制したのは、総合5位からのジャンプアップを狙ったミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)とともに逃げたエンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ、総合系がいない個性派集団に突如彗星のごとく現れた新星が、ステージ優勝でチームに今シーズン64勝目をもたらすとともに、総合でも一気に2位までジャンプアップを果たした。またロペスもこれで総合3位、表彰台を手にした。

©Tim D.Waele/Getty Images
バトルは最後の山岳に入る前に始まった。僅か100km弱のステージの残り37km、まず動いたのはアスタナとロペスだった。しかしこの動きは封じられてしまうが、今度は下りでキンターナが飛び出していく。これに焦ったかS.イェーツはコーナーであわやの瞬間を耐え何とか踏ん張り切る。そしてこの動きにもロペスが反応すると、」二人で先行して残り20kmを切る。そして一度はキンターナは遅れるも再びロペスに合流を果たすと、今度はS.イェーツがそこに合流をする。

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この動きがバルベルデ、そして多くの総合上位選手にとっては致命的な動きとなった。このS.イェーツの動きに対応したのはマス、そしてロペスとキンターナが加わり、この4人は駆け引きを続けたまま後続との差を開いていく。バルベルデ、そして昨日までの総合3位スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ)らが完全に遅れを取り、もはや総合表彰台争いは逃げのメンバーに委ねられた。

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残り7kmでキンターナが脱落、そして残り6.6kmでS.イェーツが脱落し、優勝争いと総合表彰台の2位と3位の座を巡ってロペスとマスの直接バトルが始まる。追走では残り3.9kmでついにバルベルデが脱落、総合優勝はこの時点でほぼS.イェーツに確定となる。

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そして直接対決はマスが渾身のスパートでロペスを抑え嬉しいステージ初勝利、ゴールで吠え喜びを爆発させた。「実はこの最終週は2012年にバルベルデがここで勝利したビデオを何度も見返していたんだよ。それで最終コーナー前にスプリントを開始して、最後の50mに突入すべきだと思ったんだ。その通りにやったら、こうして勝利できたんだよ!え?次世代のコンタドール?いや、僕はエンリック・マスだよ。生涯で彼の勝利数の半分も勝てたらいいなと思うけど、それでも僕はエンリック・マスだよ。(笑)」マスはこの総合2位で一気にスターダムへとのし上がった。

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これで総合優勝を確定的としたS.イェーツは、「これでようやく誇りをもって自分とチームが成し遂げた、と言い切れるね。チームの働きなしにはこの勝利はあり得なかったからね。チームにとっても初のグランツール勝利だし、ただただ信じられないよ。感無量だよ。」と喜びの表情を見せた。
「双子のアダムが今日は調子が良くなかったんで、結構今日はピンチだったんだよ。ロペスとキンターナが仕掛けたときに、かなり危機感を感じたんだ。特にロペスは明確に順位アップを狙ってきていたからね。だから彼なら同じ目的で協調できるかと思ったから僕も追走アタックをしたんだよ。むかしからいうだろ、攻撃は最大の防御って。でも正直最後の上りはいっぱいいっぱいだったんだ。ロペスとマスの最後の走りはすごかったね。もうついていけなかったんで、自分のペースで走ることに切り替えたんだよ。ベストを尽くして、それでようやく結果が伴ったよ。」S.イェーツの言葉からは安堵感が漂っていた。

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「全力を尽くしたんだから後悔はないよ。この結果は受け入れなきゃならないよ。負けは負け、ライバルたちのほうが強かったんだとね。それでも僕は選手である以上は、そこで心折れるのではなく次を見据えているよ。世界選手権を狙いに行くよ。」バルベルデは何とか気持ちを切り替えようとしていた。「今日はもうステージ中盤できつかったんだ。ただただ我慢して、結果的に表彰台を失ってしまった。でも結果がすべてなんだよ。キンターナのことはいろいろ言われているみたいだけど、彼はキッチリと僕のそばでアシストしてくれた立派なチームメイトだよ。」
先日マスに、「ロペスは僕の金魚の糞だった。」と批判されたロペスだったが、この日は積極的な走りを見せ続けた。「今日はイチかバチかだったんだよ。とにかく狙っていたのは表彰台、それには仕掛けるしか選択肢がなかったんだ。表彰台以外は総合4位も10位も変わらないんだよ。あの表彰台に上ることに価値があるんだよ。今日はチームがその為に全力を尽くしてくれたんだ。感謝感謝だね。最後の上りではステージ勝利は二の次だったんだ。とにかく追走に差を詰められたら表彰台に届かない可能性があるんで必死だったよ。」ロペスもマス同様にこの走りでその評価を一気に高めた。
これで総合は決着、後は最終日のパレードステージのみとなった。最後の最後まで誰が勝つかわからないような超激戦が繰り広げられた今年最後のグランツールは、間違いなく今シーズン一番面白かったといえるだろう。

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ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ
1位 エンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ) 2h59’30”
2位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ)
3位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) +23”
4位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +54”
5位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +57”
6位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +1’11”
7位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +1’15”
8位 ダビ・デ・ラ・クルス(チームスカイ) +2’17”
9位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +3’09”
10位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット) 79h44’30”
2位 エンリック・マス(クイックステップ・フロアーズ) +1’46”
3位 ミゲル・アンヘル・ロペス(アスタナ) +2’04”
4位 スティーブン・クライズワイク(ロットNLジャンボ) +2’54”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター) +4’28”
6位 ティボー・ピノー(グルーパマFDJ) +5’57”
7位 リゴベルト・ウラン(EFエデュケーションファースト・ドラパック) +6’07”
8位 ナイロ・キンターナ(モビスター) +6’51”
9位 ヨン・イザギーレ(バーレーン・メリダ) +11’09”
10位 ウィルコ・ケルデルマン(チームサンウェブ) +11’11”
H.Moulinette